○◎ Great and Grand Japanese_Explorer ◎○
○ 世界中を飛び回り、恐竜の姿を求める / 小林快次 ○
◇◆ 美しい頭蓋骨を掘りたがらない理由 =2/2= ◇◆
しばらくすると、フィルは車を止めた。 「着いたよ。みんな、スコップかツルハシを1本ずつ持って」
私が2本持って行こうとすると、フィルが私の手を止めた。 「エネルギーがあるのはわかるけど、1人1本ずつだよ。 セントロサウルスの頭骨を掘るのに必要だから持っていくだけでなく、違う目的があるんだ。 ガラガラヘビが結構いるから、草むらがあったらそれで突いて、いないのを確認してから進むんだよ」
「了解」
ガラガラヘビには、私もある意味「慣れている」。 私が通ったワイオミング大学のある米国ワイオミング州でも、ガラガラヘビを頻繁に見た。 フィールドを歩いていると、「シャー」という音がする。 立ち止まって周りを見渡すと、地面と色が同化したガラガラヘビがこちらを威嚇している、ということがよくあった。
「ガラガラ」という音よりも、「シャー」という乾いた音だ。 威嚇というよりは、警告してくることが多いので、音が鳴ったら立ち止まって、そのヘビの位置を確認すれば、襲われることはほぼない(と私は思う)。
良い標本でも喜ばない
第1発見者のスコットは私たちよりも先に歩き出し、GPSユニットを片手に、頭骨が見つかった現場に向かう。 「そんなに遠くないよ。700メートルくらいだね」
スコットはさっそうと緩やかな斜面をしばらく下り、手に持ったスコップを地面に突き刺して、足を止めた。足元に広がる急な崖が、彼の行く手を遮っていた。「おかしいな、簡単に見つかると思ったんだけど・・・。みんなはここで待ってて」
そう言い残して、スコットは早歩きで崖を下りだした。そんなに焦らなくてもいいのにと思って見ていると、スコットはあっという間に崖の下にたどり着き、まるで早送りを見ているかのように、頭骨の見つかった場所に一目散に向かって行った。
「フィル、あれがそうなの? 遠くから見ると全然わからないね」
「ああ、発見した頭骨にジャケット(化石を取り囲む母岩から露出した骨化石を、壊さずに運び出すために作るもの)をかけたんだけど、そのままにしておくと目立ってしまう。盗掘に遭わないように、崖とほぼ同じ色の麻袋をかぶせて、土砂をかけたんだ。GPSユニットがないとわからないよ」
スコットを追うように、私たちもゆっくりと崖を降りていった。
「これがそうだよ」。私たちがたどり着くと、スコットは自慢げに言った。
かぶせてある土砂をみんなで注意深くどかし、麻袋をめくる。すると、白い岩の固まりのようなものが見えた。ジャケットだ。ジャケットの形から、セントロサウルスの角の形がよくわかる。
「良い標本だね! こんなにすごい頭骨なのに、みんな発掘したくないなんて」
「セントロサウルスはたくさん見つかっているから。どんなに良い標本でも、たくさん見つかっていると重要性が落ちるんだ。セントロサウルスの頭骨だと、みんな喜ばないんだよね」
さっきまで自慢げな様子だったスコットは、フィルの方をチラッと見ながら言った。
・・・・・・・・新節につづく
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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
森のなかえ
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