○◎ Great and Grand Japanese_Explorer ◎○
○ 世界中を飛び回り、恐竜の姿を求める / 小林快次 ○
◇◆ 美しい頭蓋骨を掘りたがらない理由=1/2= ◇◆
2015年の発掘シーズンが終了しました。 今回は、第6回・第7回で紹介していた、カナダ・恐竜州立公園での発掘調査の続きです。当初ケラトプス科と考えられた恐竜の全身骨格化石ですが、発掘を進めると、ハドロサウルス科であることが判明。 ニックネーム“ハドロケラトプシア(ハドロサウルス科とケラトプス科を合わせた造語)”の発掘は続きます。
「まあ・・・それでも全身骨格は全身骨格だからね」
カナダ、アルバータ大学のフィリップ(フィル)・カリー教授は、地面に座り込み、周りの石を取り除きながらつぶやく。 「取りあえず、明日以降もこの骨格の発掘は続けよう。 アロン、この“ハドロケラトプシア”の発掘をお願いしていいかな。 何かわからないことがあったら相談して」
この公園には、まだ発掘されるのを待っている恐竜骨格がたくさん眠っている。 実はこの時点で、キャンプ地周辺には、セントロサウルス(ケラトプス科の仲間)のボーンベッド(不完全な骨が1カ所に集まった状態。 第6回参照)と、幼体が含まれるケラトプシア科のボーンベッドがあった。少し離れたところでは、セントロサウルスと思われる美しい頭骨も発見されていた。 これらすべてを発掘するには、限られたメンバーで協力し、効率よく作業しなければならない。
≪:http://blog.goo.ne.jp/bothukemon/e/3fe63a4a7783cb9d0e023995527785ce≫
比較的多く発見されているハドロサウルス科であることが確認されたので、私たちは次の発掘地を確認しに行くことにした。 この“ハドロケラトプシア”の露頭(地層や岩石が、土壌や植生に覆われず、直接地表に現れている場所)は、発見者であるアロンが担当となって、この夏が終わるまでに、ある程度目処を付けなければいけない。 その重要な役目を、フィルはアロンにお願いしたのだ。
長い発掘で、みんな疲れがたまっている。 毎日の重労働。手作業で崖を崩し、大量の土砂を運んでいるのだから、無理もない。 フィルはみんなに意見を聞いた。 「明日の予定ですが、気分転換に、キャンプ地から離れた調査や発掘をしましょう。キャンプ地から車で30分くらいのところへ行きます。 プロスペクト(新しい化石を探す作業)か、セントロサウルスの頭骨を掘るか、どちらがよいか聞くので挙手してください。 それでは、プロスペクトに行きたい人・・・」
すると、みんなうれしそうな顔をして手を挙げる。聞いた話によると、セントロサウルスの頭骨の化石はかなり良いものらしい。 にもかかわらず、みんなそちらよりも、プロスペクトがしたいという。 新しいものを探し、見つける楽しみはよくわかるが・・・。
「それではみんな、明日はここから少し離れたところに行って、プロスペクトをしよう。ただ、セントロサウルスの頭骨も掘らなければいけないので、発見者のスコットは私たちと一緒に来てくれ。ヨシも来てくれるか?」
私は「もちろん」という気持ちを込めてうなずく。 しかし、スコットはちゃんと聞こえているはずなのに、「僕が行くのですか?」と聞き直す。 よっぽど、みんなと一緒にプロスペクトに行くのが楽しみだったのだろう。
いざ、セントロサウルスの頭骨の発掘へ
次の日、私たちは何台かの車に分かれてキャンプを離れた。私は助手席に乗り込む。フィルが運転し、フィルの妻のエバとスコットは後部座席に座った。
「今から掘り出す頭骨は・・・」
スコットは後部座席から身を乗り出して、話しはじめた。「僕の彼女とプロスペクトをしている時に見つけんたんだ。 斜面にオレンジ色の三角錐のものが突き出ていて。 遠くから見ても、一目でケラトプシア類の角だってわかった。ちょうど日が差していて、オレンジ色に光ってすごくキレイだった。 近づいてみると、角の表面に地衣類がびっしりとついていた。オレンジ色はその地衣類の色だったんだ。 2人で角の周りを掘ってみると、頭骨が丸ごと埋まっているってわかった」
「すごいね。そんなにすごい頭骨が見つかるところなのに、なぜみんな来たがらないの?」
「このあたりはきれいな地層が露出している。 でも、斜面がきつくて歩きづらい。 それに、なかなか化石が見つからない。だからみんな来たがらないみたい。 他のみんなが今日行くところは、骨がたくさん落ちていて、プロスペクトしていても楽しいしね」
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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
森のなかえ
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