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Channel: 【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》
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王妃メアリーとエリザベス1世 =25=

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○◎ 同時代に、同じ国に、華麗なる二人の女王の闘い/王妃メアリーの挫折と苦悩 ◎○

◇◆ メアリーの処刑 ◆◇

 1586年10月15日、フォザリンゲイ城で、スコットランド女王であったメアリー・スチュアートをイングランド女王にたいする反逆罪で裁く裁判がはじまった。 メアリーは、尋問にたいして命乞いをすることもなく、「わたしに責任はない」と毅然として答えたという。 10月25日、枢密院の裁判所――スター・チェンバー裁判所――に、枢密顧問官たちが緊急に招集された。 会議は、メアリーへの判決を下すためのものだった。

 会議の結果は、枢密院の全会一致で、メアリーを反逆罪で死刑にするというものだった。 そのときのメンバーのひとりは、メアリーを「反乱の娘、謀反の母、不信の乳母、邪悪な小間使い」と、あらんかぎりの言葉で非難したという。 あとは、エリザベスが死刑執行の令状にサインするだけだった。 しかし、彼女それに躊躇し、なかなかサインをしなかった。 一方メアリーは、「いつでもカトリックに殉教する覚悟ができている」という手紙をエリザベスに書き送ったという。
 
 1587年1月、バビントン事件から半年がたったころ、またしてもメアリーのかかわったエリザベス暗殺の陰謀が噂された。 巷では、「メアリーが脱獄し、スペイン軍がウェールズに上陸したらしい」というような、まことしやかな流言まで飛びかっていた。 枢密顧問官たちは、もうこれ以上待てなかった。 彼等は、エリザベスにサインをするように迫った。  1587年2月1日、エリザベスはついに処刑命令書にサインする。 ついにエリザベスはメアリーの死刑執行令状にサインをしたのである。 それでも彼女は、「死刑執行はしばらく待つように」と言いそえたという。

  罪人の処刑は、公開が原則だった。 しかしエリザベスは、「従兄の娘を公衆の面前で処刑した」という避難が自分に向けられるのではないかと恐れた。 死刑執行令状にサインをした自責の念もないわけではなかった。

  そこでエリザベスは、メアリーを非公開でひそかに処刑することも考えた。 しかし、メアリーの監視役で厳格なプロテスタントだったサー・エイミアス・ポーレットは、その考えをはねつけた。 それでは、カトリックと反エリザベス勢力への見せしめにはならないし、違法である、と主張したのである。 枢密院が待つのも限界に達していた。 メアリーが生きている以上、次に何がくわだてられるか、分からなかったからである。  死刑執行令状には女王のサインがある。 それで十分である。 ほかに何が必要なのか。 エリザベス女王の令状は、女王が署名したその一週間後 裁判がはじまって以来メアリーが囚われていたフォザリンゲイ城へと送られた。
 
 令状をもった使者が城に着いたのは、2月7日の夕方だった。 19年のおよぶ歳月が、メアリーからかつての美貌を奪っていた。 中年太りで崩れた体を深紅のドレスで包み、白髪を金髪のカツラで隠していた。 しかし、稀に見る往年の気品ある美しさがにじみ出ている。 そして、メアリーの処刑は翌朝8時、場所は城の大広間ときまり、すぐにその準備がはじまった。  大広間の中央には、黒い布でおおわれた処刑台がしつらえられた。 その上には、木の台が置かれた。 首をのせる断頭台だった。 そのそばには、斧も用意された。

2月8日の朝は、真冬にしてはめずらしく日が射していた。 フォザリンゲイ城の大広間には、大勢の見物人がつめかけていた。 その数は、3百人にのぼったという。 8時になったとき、役人に連れられて、黒のサテンのコートを羽織り、白の髪飾りとヴェールをつけたメアリーが現われた。 はじめて見るスコットランドの女王に、見物人たちは息をのんだという。 メアリーは、噂どおりに背がたかく、気品にみちていた。 髪の毛は、燃えるような赤毛で美しかった。

ざわめきのあと、静けさと真冬の冷たい空気が、大広間を支配した。 役人がメアリーの死刑執行令状を読みあげた。 彼女は黙ったままだった。 ピーターバラ大聖堂の首席司祭が、メアリーに彼とともに祈るようにといった。  しかしメアリーは、よくとおる声で、「古代ローマの教えカトリックに身を置いてきたわたしの血は、その教えを守るために流される」といい、プロテスタントの司祭を無視した。 それでも司祭は、彼女を説き伏せようとした。 しかし、それも無駄だった。 メアリーは、ひとり静かに祈りはじめた。

ひとしきり祈ったあと、メアリーはコートを脱ぎはじめた。 侍女たちがそれを手伝った。 下は、真っ赤なペチコートだった。 彼等の前で、メアリーは舞台に立つ女優のように軽やかに足を進めた。 メアリーは、白い布で目隠しをされた。 そこには、金糸の刺繍模様がついていた。  彼女は膝まづくと、断頭台に首をのせ、それから静かに目を閉じた。

 

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