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Channel: 【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》
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現代の探検家《田邊優貴子》 =39=

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○ 南極の凍った湖に潜って、原始地球の生態系を追う =田邊優貴子= ○

◇◆ 第15回 「不本意ながら、極ガール??」 =1/2= ◇◆

 秋晴れの今日この頃、みなさまいかがお過ごしでしょうか。

 少しずつ冬の匂いがして、いつもなら私はワクワクし始める頃ですが、今年はそんな大好きな季節を日本で過ごすことができません。 この原稿が掲載される11月28日には、私はオーストラリアのフリーマントルという港町にいるはずです。 パースから車で南に約30分で到着する小さな町です。

 なぜそんな所に?

 と言うと、実はそこで南極観測船しらせに乗り込み、南極大陸へ向けて出発するからです。 私は生物学者として第53次日本南極地域観測隊に参加しており、南極へ行くのは今回で3度目。

 女性が3度も南極へ?!
 なんて驚かれることもしばしばですが、当の本人はそんなことを全くもって意識などしていないものです。 誰もが想像するように、日本で暮らしているときと比べて、南極での生活はとても不便なものになります。

 昭和基地に滞在するならばまた話は別ですが、私は南極大陸上に滞在するほとんどの期間を、昭和基地から約60km離れた調査地をベースにして、しかも3~4人という少人数で野外生活を送ります。

 そこではインターネットやEメールの環境はおろか、電話、風呂、トイレもありません。はっきり言って、このご時世に逆行した生活と言えるでしょう。

 便利でないことは確かですが、それでもやはり私はまったくそんなことが気にならないのです。 それどころか、毎回結構な幸せを感じながら南極での野外生活を楽しんでいます。

 もしかしたら、「めちゃくちゃキレイ好き」ではないことも功を奏しているのかもしれません(汚いのが好きというわけではないです。それなりにごく一般的なキレイ好きレベルです、あくまでも)。

 Eメールもつながらず、世間の情報から隔離された生活は、一見不安なように思うかもしれませんが、そのおかげで無駄なこと、雑多なことに邪魔されることなく、目の前の壮大な自然とじっくり向き合うことができます。 私はこの純粋な時間が、本当に大好きです。

 そして何よりも、南極で目の当たりにする世界は、普段想像もつかないようなワクワクすることばかりで、生活の不便さを圧倒的に上回る魅力があるのです。 逆に、Eメール・風呂・トイレ・二人部屋が完備されていても、往復のしらせ船上での生活の方が、ずっと窮屈かつ退屈でなりません。

 まあ、あくまでもこれらは誰にでも当てはまることとは言えないでしょうから、私にとって、と付け加えておきたいと思います。

 

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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽  憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・

森のなかえ

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新春挨拶=平成29年元旦= 1/3

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⁂ 迎春 ⁂

本年は、世界各地が平穏な日々を感受できます様に・・・・


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森のなかえ

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新春挨拶=平成29年元旦= 2/3

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⁂ 迎春 ⁂

 本年は、憂いなく充足感で日々 過ごせますように・・・・・


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森のなかえ

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新春挨拶=平成29年元旦= 3/3

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⁂ 迎春 ⁂ 

酉年(とり年)は、西暦年を12で割って1が余る年が酉の年となり、

経験則から“酉年の世は鳥乱れる”と言われる。 

「酉」は(緧{糸酋/シュウ})「ちぢむ」の意味で、果実が成熟の極限に達した状態を表す。 

後に、覚え易くするために動物の鶏が割り当てられた。 

前年の「申」は(呻{申/シン})「うめく」の意味で、果実が成熟して固まって行く状態を表し、申年で成熟を果たした世界が酉年で次なる世相を模索し始めると言う。

したがって、酉年は混迷のとば口であり、鶏が夜明けとともに世に警告を発する。 

因みに、唐の玄宗は酉年生まれであり、玄宗は唐の絶頂期を迎えたが、闘鶏を好奨励した。 

皇族や貴族には財産をつぶす者が続発し世相は混迷した。

政経に倦んだ玄宗が楊貴妃を寵愛したことで、唐王朝に幕を下ろしたのが酉年  


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現代の探検家《田邊優貴子》 =40=

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○ 南極の凍った湖に潜って、原始地球の生態系を追う =田邊優貴子= ○

◇◆ 第15回 「不本意ながら、極ガール??」 =2/2= ◇◆

 本人がまったく気にしていないとは言え、そんなふうに女性が3度も南極で、風呂・トイレもない場所に数カ月滞在して研究調査をしていることもあってか、以前、「極ガール」というタイトルで連載をしないか? と出版社から話を持ちかけられたことがあります。

 しかし、そんなあまりにもポップでキャッチー過ぎるタイトルと、何よりも「ガール」と名乗るには図々しいであろう自分の年齢にひどくたじろぎ、私はそのタイトルを涙ながらに(?)かつ丁重にお断りしたのでした。

 さてさて、南極で生き物と言えば、ペンギン? アザラシ? なんて聞かれたりしますが(もちろん南極にホッキョクグマはいませんよ)、私の研究は南極の湖の中に棲息する植物が対象です。

  南極と言えば、真っ白で寒くて暗い、雪と氷に閉ざされた世界、こんなイメージを持つかもしれません。 でも、全く氷に覆われていない地面が剥き出しになった場所が南極大陸上にはわずかながら存在するのです。 そしてそこには、昭和基地周辺だけでもなんと100個以上もの湖が。

  これだけでもなかなか想像がつかないですよね。 けれど、驚くのはそれだけではないのです。

  湖の中をのぞいてみると、まるで森林か草原のように湖底一面が植物で覆われた、不思議不思議な世界が広がっています。 水は驚くほど透明で清澄。 水深20mの湖底がはっきりと見えるほどです。

  1年のほとんどを氷に閉ざされた南極の湖で、どうしてこんなにも豊かな生態系が出来上がったのだろう?


 彼らはどうやって生きているのだろう?

  この謎を知りたくて、研究を進めています。 そして、時にはそんな冷たい南極の湖に潜って調査をします(前回、私が潜って撮影してきた湖の中の映像をご覧ください)。

  フリーマントルで最後の旅支度を終えれば、来たる11月30日に出港します。 荒れ狂う南極海を越え、南極大陸までは3週間ほどの航海になるでしょう。
 今回はどんな面白いことが待っているのでしょうか。

  帰国は約4カ月後。 それまで、数回にわたって航海中の状況や、現地での調査や野外生活、南極の自然を写真とともにお伝えしていく予定です。

 では、 行ってきます。


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現代の探検家《田邊優貴子》 =41=

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○ 南極の凍った湖に潜って、原始地球の生態系を追う =田邊優貴子= ○

◇◆ 第16回 「牛乳と南極と私」 =1/2= ◇◆

  「まもなく、南緯55度を通過する。」
  「よーい、てい。 南極圏に入った。」

  14時57分、船内に放送が響き渡りました。

  フリーマントルを11月30日に出航して、今日で6日目。
 しらせは順調に南への航海を続けています。
 今朝の気温は3.6℃。 ここ数日、南緯45度から55度にかけて、急激に外気温が下がってきました。

 南緯45度と50度では、気温が驚くほど違うだけでなく、空の色も全く違います。 これまで私が見ていた空は、何か灰色か黄色のフィルターがかかっていたのではないかと思うくらいです。 このたった5度の緯度の違いが、こんなにも大きいものかと、いつもこのラインで驚きます。

 南緯55度。 ここにきて、ついに私は南極へ向かっているという実感が徐々に湧いてきています。 成田空港から飛行機に乗って降り立ったオーストラリアは、まさに初夏。 これから盛夏を迎えるという季節でした。

 ポカポカ陽気の中、半袖と麦わら帽子で白い砂浜を歩き、入道雲と水平線に沈む夕陽を見ていると、ちょっと前まで、日本で寒い寒いと言いながら過ごしていたのが本当に嘘のようで、その上、これから南極へ向かうことがなんだか信じられない、そんな気持ちになりました。

 日本を旅立つ前はしばらくの間、南極での調査のための準備でとても忙しく過ごしていました。 それは出発直前まで変わることなく続き、おかげでその慌ただしい気持ちと疲労感をかかえたまま、息をつく間もなく出発。

  気づけば、いつの間にかオーストラリアに来ていたのです。 初夏のオーストラリアにいるというだけでも、そう感じてしまうのでしょうが、まぁ、そんなわけで、私はまだ南極へ行くという実感が驚くほどに湧いていない状態だったわけです。

  オーストラリアで、私は何を置いても完遂させなければならない最重要ミッションがありました。 ミッションコードは、「50-MAM2011」(50 Milk to Antarctica for Me 2011の略。 ちなみに、私の南極観測隊としてのミッションコードは「AP13-53」です)

 「牛乳を50本調達する」というかなり困難なミッションでした。

 南極圏(Antarctic Region)とは、南極点を中心とした高緯度地域。一般に南緯66度33分以南の、白夜になることがある地域を指す。 南極圏の限界線となる南緯66度33分線を南極線( Antarctic Circle)という。

 単に南極大陸とその周辺をおおまかに指すこともある。海洋学などでは、南極大陸を取り巻くように流れる南極海流の北限である南極収束線以南を指す場合もある。 また、南極条約では「南極地域」を南緯60度以南としている。

 ここで南極圏の限界緯度を「南緯(90°-赤道傾斜角)度」と定義した場合、地球では南緯66度33分39秒(2000年時点)より高緯度の地域となる。 その場合、南極圏では12月頃に白夜、6月頃に極夜となる。 その限界線(南緯66度33分線)は南極半島を横切り、南極大陸のインド洋沿岸を横切る緯線となる。

 南極収束線は、冷たい南極の海水のうち偏西風によって北向きに輸送される海水と亜南極の比較的暖かい海水が出会って混ざる所(潮境)である。 また、気象学的には寒帯前線と一致する。  この前線を境に水温が2~3℃変わり、また塩分濃度も変わる。

南極収束線は経度のような人工的な線ではなく、Arctic tree lineのような自然に存在する境目である。二つの水文学的領域を分けるだけでなく、南極特有の、海の生き物がつながっている区域や異なる気候区域も分ける。

南極収束線の実際の幅はおよそ32キロメートルから48キロメートルほどで、大西洋太平洋インド洋のおよそ南緯48度と南緯61度の間にある。 緯度は季節と経度によって多少変わるが、普通はもともとの位置から30分以上それることはない。 南極の海水の殆どは亜南極の海水の下に沈む一方で、混合と湧昇が同時に起こっている領域では海の生産力(特にナンキョクオキアミ)が高い。

 南極収束線より北の区域は極前線域と呼ばれ、極前線域の北側の境目は亜南極前線などと呼ばれる。南極収束線と亜南極前線は両方とも南極環流の一部で、東へ向かう強い海流である。

 


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◇◆ 第16回 「牛乳と南極と私」 =2/2= ◇◆

  幼い頃から私は乳製品中心の食生活を送ってきました。 自宅の冷蔵庫には水よりも、基本的に牛乳や飲むヨーグルト。 水分は牛乳で補う、という習性がいつの間にか身に付いているようです。

   高校生の頃まではバニラヨーグルト(ルナ?)、大学に入ると健康ヨーグルト(グリコ)。 途中、ヨーグルトにマシュマロを入れて一晩寝かせて食べるのが異様に流行った時期もありますが、大学院に入る頃にはソフール(ヤクルト)の美味しさを再確認し、今でも専らソフール派です。 バニラヨーグルトという、少し変化球じみたものを好んでいた自分は今思えばとても青く、さらには、ヨーグルトにマシュマロとは、もう目も当てられません。 少しお洒落で小粋な大人、とでも思っていたのでしょうか。 ヨーグルトはファッションではないのに。

   そういうわけで、牛乳および乳製品を愛して止まない私は、どうしても、この4カ月間牛乳と離別するという決断ができなかったのです。 ただの旅行、もしくは1カ月程度の野外調査ならば何ら問題はないですが、南極での野外調査は長期戦。成功させるためにも、食はとても重要なのです。

   実はこのミッションを実施するのは、今回で2度目。 前回(2年前)は、牛乳大好き隊員3名のパーティーだったので、1リットルのロングライフ牛乳を60本調達しました。 しかし、そのとき大きな障壁として私の前に立ちはだかったのが、スーパーから船までどうやって運ぶか、という点でした。スーパーマーケットからしらせまでは徒歩10分ほど。 ルートの最後には、しらせの舷門へ続く、狭くて安定感のない階段という難関が待ち構えています。

 

   私はそのとき、「80リットルのザックに入れて背負う」という体力でカバーする作戦に出ました。 とは言え、牛乳だけでも60kg、その他にもチーズやヨーグルト、真空パック詰めの豆腐、瓶に入った調味料各種など、様々なものを購入していたので、合計約80kg。2人で手分けしても、約40kgずつ。


  普段、南極で湖沼調査をするときでさえ、20kg程度を担いでまわるくらいです。  しかしもう、やるしかない。
  根性でなんとかミッションを成功裏におさめたものの、ザックを背負って船内にたどり着いた頃には、私はすっかり後悔していたのでした。

   そんなこともあって、今回の私はクレバーな作戦を思いつきました。 なんと、「60リットルのキャスター付きバッグで運ぶ」という画期的な作戦。 このミッションをあらかじめ想定して、用意しておいたのです。 南極3度目ともなると、人はなかなか学習をするものですね。

   キャスターバッグをガラガラと引きながら、意気揚々と近くのスーパーマーケットCOLESに出かけ、驚くほどあっさりとミッションは成功。 日本から積み込んでいた、大好きなフルーチェ20箱と牛乳を対面させると、これで南極での調査がうまくいくような気がして、私は思わず顔がほころんでしまったのでした。

   しかし、そんなオーストラリアでの日々は今やもう信じられません。 急激な寒さに加えて、今朝8時02分、幅200メートルの大きな氷山が初めて視認されました。

   亜南極~南極に棲息するハイガシラアホウドリやマユグロアホウドリ、ワタリアホウドリ、オオフルマカモメ、マダラフルマカモメ、まっすぐに南下しているおかげで、日々刻々と海の色や生き物が変わっていっています。 夕方から少し船の動揺が大きくなってきています。

  さて、明日はついに南緯60度。

 2011年12月5日 南緯56度、東経110度 しらせにて

 

 

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◇◆ 第17回 「知床ではないのだ」 =1/2= ◇◆

   12月14日、16時58分。

  それはちょうど33歳を迎えた翌日の、もうすぐ夕食というところ。 ついにしらせは流氷域に入りました。  外に出ると、久しぶりに見る青空と明るい太陽が目に飛び込んできて、一気にテンションが上がったのでした。 しかし、目の前の流氷はまだ小さく、冬の知床と区別がつかないくらいです。

  11月30日にフリーマントルを出航してから16日間。 その間に、晴れ空が見えたのはたったの3日でしょうか。 とにかくずっと悪天が続いていたのです。 さらに、12月7日に進路を西へ取り始めてからというもの、南下していたときと違い、飛んでいる海鳥の種もほとんど変わらなければ、さほど景色も変わらない。 暴風が吹き荒れ、どんよりした風景の中、波しぶきを大きく上げながら、しらせは単調な航海を続けていました。

  そんなわけで、流氷域に入っただけでなく、燦々と輝く太陽を見て、わぁっ!とテンションが上がってもそれはしかたのないことなのです。 その日の夜、しらせ船内では女子会なるものが密やかに開かれました。 この53次隊の女性メンバーは、隊員4名に同行者4名の、合計8名。

   みんなどんな人かというと、植物生態(私)、地球物理、超高層大気の研究観測担当がそれぞれ1名ずつ、医者1名、学校教諭1名、博士課程大学院生3名(それぞれ動物行動、海底地形、海氷が各自の研究テーマ)となっています。

  今回は珍しく人数がとても多いのではないでしょうか。 と言っても全観測隊員と同行者をあわせると合計72名なので、全体に占める割合は1割程度です。 そんな少ない女性陣ですが、頑張って盛り上げていこうということで女子会がセッティングされたのです。
 と言っても、私自身、普段から女性が少ない環境にいるため、女子会というものに参加するのは専ら南極に行くときくらいですが・・・。

  女子会の話題?

  まあ、普通の女子の他愛もない話ですよ。 大学院生の子がバイト先の焼肉屋さんから南極に行く餞別に大量のマッコリをもらったとか、普段聞いているラジオ番組を聞けなくなるので録りだめしてiPodの中が全部それになっている(しかも伊集院光の番組)とか、今年の男性隊員で誰が格好いいかランキングの発表とか(これは嘘です)・・・。

 

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◇◆ 第17回 「知床ではないのだ」 =2/2= ◇◆

 女子会の翌日、目が覚めると外はすっかり白い氷の海。 前日までのバラバラッとした小さな流氷ではなく、氷のサイズが大きく分厚くなり、辺り一面密接している景色が広がっていました。

 「右30度、コウテイペンギン!」

 昼下がり、大きな音で艦内に放送が流れました。 船内はにわかにざわつき、私もすぐに防寒着を羽織って外へと急いだのです。

 しかし、コウテイペンギンの姿はどこにも見当たりません。

 「あ!いた!」  誰かが声を上げ、指の示す方向に目を凝らしてみると、遠くのほうになんとなく小さな黒い点が見えます。
 私は首に下げていた双眼鏡でそこを覗いてみると、確かにそれはペンギン。 しかも、首回りが黄色く色づいている。

 まぎれもない、コウテイペンギンでした。

 双眼鏡を外し肉眼で見てみると、ただの黒ゴマのようです。 が、なんと言おうとこれが記念すべき今回のファーストペンギンコンタクト。

 もはやここは知床ではないのだ、ということをはっきりと教えてくれる存在です。 そして、どこまでも続く白と青の世界にほんの小さな点でしかないコウテイペンギンが、この世界の果てしない広がりというものをより一層際立たせてくれるのでした。

  一見すると、まるで生命を寄せつけないような氷の海。

 しかし、氷を割りながら進むしらせの脇には、大増殖したアイスアルジー(藻類です)で茶色くなった氷がひっくり返っています。
 そしてこれを捕食する大量のナンキョクオキアミを狙って、多くのクジラやペンギンたちがここにやって来ます。

 氷海に入って4日間、コウテイペンギンやアデリーペンギン、カニクイアザラシやウェッデルアザラシが近くに現れています。
 空を舞う海鳥もすっかりこれまでと様相が変わり、ナンキョクフルマカモメや、ギンフルマカモメ、ユキドリといった南極に棲息する種に取って代わりました。

 さあ、南極大陸はもう目の前です。

2011年12月17日 南緯68度、東経38度 しらせにて

 

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◇◆ 第18回 「南極で湖に潜ります」  =1/2= ◇◆

  やっとこの時がやって来ました。 もうすぐ南の果ての大陸に上陸です。 まだかまだか??  そろそろ?? なんて思いながら、船の位置情報を確認したり、外の状況を見に行ったり、この1週間は日々ソワソワしていました。

 陸の上を自分の足で自由に歩きたいなぁという気持ちはもちろん、何よりも早く南極大陸に上陸し、1年にわたってずっと準備してきた自分の調査に取りかかりたいと思うのは至極当たり前のことでしょう(ここだけの話、船酔いはまったくしない私ですが、実は海がちょっと苦手で、そのせいか船の上での生活はあまり好きではありません)。

 さて、前章で少し触れましたが、今回は、これからどんな調査をするのかお話ししたいと思います。 南極大陸の縁辺には、氷床に覆われていない、岩(岩盤)がむき出しになったエリアがあります。 露岩域と呼ばれるエリアです。面積にして大陸のわずか2~3%ほどで、そこは大陸の中で生物が生息できる限られた場所になっています。 2~3%と言っても、南極大陸の大きさからすると結構広いかもしれませんね(編者注:南極大陸の2~3%は30万~40万平方km。日本の面積が38万平方kmほど)。

 私たち陸上生物調査パーティーは基本的に3名で、昭和基地から南に約50km離れた「スカルブスネス」という露岩域に滞在します。 昭和基地の南側に広がる宗谷海岸の中では最も広い露岩域です。 3名というのは、私のほかに、島根大学の秋吉英雄さん(妻と大学生の娘2人をもつお茶目な56歳、専門は魚類の内臓進化学)、東京大学の院生である堀誠くん(少し寡黙で食べ盛りの25歳、南極湖沼をテーマに研究中)。 そこに最初の10日間ほどフィールドマネージャの奈良亘さん(永遠の少年のような38歳、普段は北海道で山岳ガイド)が加わります。

  私たちは、そのスカルブスネスにある「きざはし浜小屋」という生物の観測小屋に約1カ月半~2カ月間滞在し、そこをベースにしてボートや調査機材を背負ってさまざまな湖沼や沢に通って調査をするのです。 たまに、小屋から離れた場所でテントを張って寝泊まりしながら調査することもあります。

 一番大きなミッションは、湖に張った氷が解けてなくなってしまう前に、氷に穴をあけ、湖底の堆積物を採取するというもの。 なるべく深く、できれば岩盤の近くまで採取したいと思います。

2011年12月24日 南緯68度、東経38度
南極大陸へ上陸直前のしらせにて

 

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◇◆ 第18回 「南極で湖に潜ります」  =2/2= ◇◆

 現在、露岩域に点在しているいくつもの湖沼は、数万年前に大陸氷床が後退して誕生しました。 氷床から露出して、初めは何もなかったところに、バクテリアや菌類、藍藻、藻類、コケといった生物が侵入し、現在の不思議で豊かな生態系になるまで発達してきたわけです(どんな生態系が広がっているかは、第1回で掲載した映像をご覧ください)。  つまり、広範囲でみると、海岸から氷床の末端に向かって年代の古い順に湖沼が並んでいると言えますし、近接した湖沼群は、同じ気候条件の下で同じ時間をかけて発達してきたと言えます。

  ところが、近接した湖沼とは言え、中を覗いてみるとそれぞれに固有の生態系が出来上がっています。 ほとんどの湖沼はお互いに流域でつながっておらず独立しているので、一つ一つがまるで別の惑星のようなものと捉えることができるでしょう。 堆積物コアを岩盤付近まで採取することで、その湖沼が誕生してから今まで、生態系がどのように遷移してきたかを見ることができると考えています。

  次に大きなミッションは、湖氷が完全に解けてなくなったあとに、水中にエアタンクを背負って潜り、2年間の映像を撮影するビデオカメラ装置や、5個のセンサーが組み込まれた長さ2メートルの温度計を湖底に設置するというもの。 これによって、過去ではなく、現在の湖底の環境や植物群落の成長の様子を捉えようと考えています。

 

  私にとっての大きなミッションとしてはこんなところです。 あとは、私ではなく、同じパーティーの秋吉さんがメインとなったミッションとして、海氷上に出て南極固有の魚類を釣ったり、無脊椎動物を捕獲したりというものもありますし、氷河を掘削して観測しているパーティーの支援のため、氷河上に寝泊まりして作業を手伝うというものもあります。

  陸の上、湖の上、湖の中、海氷の上、氷河の上・・・こうして見ると、我々はなかなかバラエティーに富んだ行動をする調査パーティーではないでしょうか。  この原稿が掲載される頃にはきっと南極大陸に無事上陸し、白夜の眩しい太陽のもと、元気に調査に取りかかっていることでしょう。

  これから約2カ月の間、順調にいけば食糧補給のために1月中旬に一度だけ昭和基地入りする予定です(原稿を送れるのはそのタイミングになりそうです)。  では、それまでみなさんお元気で。
 メリークリスマス、良いお年を、そして、ハッピーニューイヤー。

 2011年12月24日 南緯68度、東経38度
南極大陸へ上陸直前のしらせにて


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◇◆ 第19回 「シーサイドテラス きざはし」  ◇◆

 約10日ぶりに下界に来ています。 下界、というのは日本の南極観測基地である昭和基地のことです。 南極大陸に上陸してからおよそ10日間、私たち生物調査パーティーは4人で野外調査地で過ごしてきましたが、ここ昭和基地にはなんと約100人もの人間がいます(52次越冬隊と我が53次隊とを合わせて)。

 そして、さらに驚くなかれ、この“大都会”ではいわゆるインターネットもできるのです。 おかげで、たまっていた40日分のメールを見ることができてしまい、少しうんざりしています・・・。 ですが、嬉しいこともあるわけで、フリーマントルを出航してから初めて、この「南極なう!」の自分の連載ページに、やっとお目にかかることができました。

 さて、昭和基地についてはまた今度にして、10日間過ごした野外調査地でのことに触れたいと思います。 クリスマスを迎える頃、砕氷船しらせは分厚くて乱れた氷の海に阻まれ、私たちはなかなか野外調査地へ出発できず、ヤキモキしていました。しかし去る12月28日、ついに、ついに南極大陸に上陸することができました。

 南極海の航海中はずっと悪天候が続いていましたが、野外調査出発前日になると空はすっかり晴れ上がり、深夜には氷の海がピンクと紫が混じり合った幻想的な色に染まりました。耳を澄ますと、遠くのほうでアデリーペンギンの群れが鳴く声が聞こえたので、私も鳴き真似をして呼んでみると、彼らはものすごい勢いで近くまで走り寄ってきたのです。

 なんだか心が通じたような瞬間でした。 そして斜めから差す光に照らされたアデリーペンギンたちはとても美しく、私は寒さも忘れてしばらく見とれてしまいました。 あ、しかしこれはもはや昨年の出来事になってしまいましたね。 前節でも触れましたが、私たちが滞在しているのはスカルブスネス露岩域のきざはし浜生物観測小屋。

 通称「Sea Side Terrace きざはし」です。 海(と言っても氷の白い海)がすぐ目の前に広がり、切り立った岩壁の山と大陸氷床が見渡せる素晴らしい場所に建っています。

 小屋のドアを見ると、それはまるで巨大な冷蔵庫のようで、扉を開けると前室には食糧やカセットガスなどが置かれています。さらに前室の奥、もう一つの冷蔵庫扉を開けるとメインルーム。 そこには2段ベッドが二組、テーブル、暖房、冷凍庫があり、とても快適。みんなこの中で毎日、自分たちで食事を作り、衣食住をともにしているのです。 風呂・水道はもちろんないですが、トイレはきわめて開放感溢れる作りになっており、小屋のすぐ目の前にあります。

 この10日間、小屋をベースに毎日のように様々な形・大きさ・水質・立地の湖沼を巡って歩き回りました。 1日に10時間歩くこともしばしばです(もちろん、途中で昼ご飯を食べたりもしている)。

 私はいつも南極での野外調査は、「南極合宿」という部活の一種だと思って臨んでいます。 何せ、これを2カ月近く続けると、望んでいても望んでいなくても、まぁとにかく強制的に肉体改造がなされてしまうからです。 一旦、昭和基地に入りましたが、またすぐに野外調査へ戻ります。 そうすれば、次に野外から昭和基地に戻ってくるのは35日後。 これからどんどん、ワクワクドキドキの湖沼調査を進めて行く日々です。

2012年1月8日 昭和基地にて

 

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◇◆ 第20回 「氷の海で魚釣り」  ◇◆

1月上旬、昭和基地に2泊しました。 例年ならば、南極滞在中は野外調査に出ずっぱりで、途中で昭和基地に入ることなどない私ですが、今回こうやって2泊したのには理由があります。

 それは・・・魚釣りをするためです。
 あ、でも勘違いしないでくださいね。  釣り=遊びではありません。

 前回で紹介した同じパーティーのメンバーである秋吉英雄さんは、魚類など海洋生物の内臓の形態から進化を研究している人です。 そのため、昭和基地がある東オングル島周辺の海から魚類および無脊椎動物を採集することを目的に、短期間ですが昭和基地に滞在したわけです。

 南極での釣りは、単に海に出て釣り糸を垂らせばよいという簡単なものではありません。

 何よりも大変なのは、まず海氷に穴をあけなければならないこと。さらに釣りだけならまだしも、無脊椎動物を採集するためにはトラップを仕掛ける必要があります。

 ワカサギ釣りのように簡単に氷に穴をあけられると思ったら大間違い。この夏の時期、東オングル島周辺の海氷の厚さは約3m。 場所によっては4m以上もあり、さらにその上に厚さ1mほどの雪が積もっている状況です。

 一般住宅の2階以上の高さを想像してみてください。そこで、アイスドリルという機械を使って、この分厚い氷に直径25cmの穴をあける作業がかなり大変になってきます。

 4年前にも同じように分厚い海氷に穴をあけて、依頼されていた魚類サンプリングの作業をしたことがあります(湖沼調査の際にももちろん同じ方法で湖氷に穴をあけますが、氷厚が海氷ほどではありません)。
 何人かで釣りをしようと思えば、人数の1.5倍以上の穴をあけなければなりません。さらには直径35cmの網かご型トラップを仕掛けようと思えば、穴を4個以上連結させてくり抜かねばなりません。

 それはそれは、とても骨の折れる作業です。

 今回の釣りポイントは東オングル島の西側にある「西の浦」という湾。半日かけてアイスドリルでの穴あけ作業をし、無脊椎動物を採集するためのトラップを仕掛け、魚釣り大作戦が始まりました。

 初日の釣り大会に私は参加できませんでしたが、6人がかりで収穫は3匹だったとのことでした。

 翌日、満を持して私も釣り大会に参加。気温はマイナス5℃、しかも南極大陸氷床から吹き下ろすカタバ風(斜面を滑降してくる風)が強く、寒い中での釣りとなりました。

 この寒い中で魚を釣り上げてそのままにすると、エラが凍ってすぐに死んでしまい、試料として使えなくなってしまいますので、かなり注意が必要です。

 1日目は3匹しか釣れなかったのですが、この日、そんな寒さも忘れるほどに豊漁となりました!
 5~6人がかりで、なんと16匹もの魚を釣り上げることができたのです。

ん?私の戦績?
 聞いて驚くなかれ、ドドーンと小さめの魚が1匹ほど・・・。

 ええ、ホントに驚きのたったの1匹でした・・・が、少し寂しいものの、なんとか面目は保たれたような気がしました。みな最低1匹は釣り上げている中、もしも収穫ゼロだったら私はしばらく落ち込んで、南極で引きこもりになっていたに違いありません。

 この周辺の魚はほとんどがノトセニア亜目の仲間。
 今回2日間で釣れたのは、ショウワギス、ボウズハゲギス、ウロコギス、キバゴチ、謎のショウワギスもどきの魚でした。
 仕掛けたトラップには、ヒモムシとクモヒトデが引っかかっていました。

 それにしても南極海の水温は年間とおして、なんとマイナス1.8℃。
 いやはや、彼らがそんな氷点下の冷たい水温でも生きていけるなんて、本当に驚きですよね。

 

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◇◆ 第21回 「岩から謎の鳴き声が!」   =前節=  ◇◆

 2012年1月9日~13日にかけて、ラングホブデというエリアに行ってきました。 私たちがいつもベースにしているスカルブスネスよりも、昭和基地の近くに位置しています(地図参照)。

 ラングホブデでは、「雪鳥沢」と「ラングホブデ氷河」という2つの地点に滞在しました。 雪鳥沢では沢の陸上植生から湖沼を含む生態系の調査を、ラングホブデ氷河では氷河を掘削している調査チームの手伝いをすることが目的。

 渡辺佑基隊員たちペンギン調査チームが滞在しているのも同じラングホブデですが、それは「袋浦」という場所。 雪鳥沢とは直線距離で約5km離れています。

 直線距離で5kmほどとは言え、複雑な地形のため、歩いて行くとなると山越え谷越えで15~20kmの道のり。さらに途中、氷河で分断されているので、海氷が安定しないこの夏の時期に雪鳥沢と袋浦を自由に行き来するのは、ほぼ無理に等しいのです。

 というわけで、ペンギンチームと感動?の再会ができるのはまだまだ先になりそうです。

 南極大陸を歩いていると、自分はまるで火星に降り立ったのではないかと錯覚するほどです(もちろん火星に行ったことなどないですよ。 あくまでも、よくSF映画で見るようなイメージです。 あしからず)

 大陸岩盤が剥き出しで液体状態の水も乏しく、どこまでも荒涼とした光景が広がっています。 氷河に削られてツルツルになった岩盤や氷河擦痕がいたるところに見られ、地球はつい最近まで氷河期だったことを思い知らされます。

 そんな中、少しでも水が流れる場所であれば、そこにはコケや藻類、地衣類が小さく息づいています。

 南極大陸の陸上では、こうしたコケや藻類、地衣類が生態系のトップに君臨(?)しています。 クマムシ・ダニ・トビムシ・ワムシ・線虫などがわずかながら存在しますが、捕食者としてはほぼ無きに等しいようなものでしょう。

 温帯や熱帯だけでなく北極圏を見てみても、動物や虫などがいるのが普通。 コケや藻類といった基礎生産者がトップに立つ特殊な生態系が成立しているのは南極大陸くらいのものです。


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◇◆ 第21回 「岩から謎の鳴き声が!」 =後節=  ◇◆

 そのように陸上生態系がきわめて乏しい南極大陸にあって、ここ雪鳥沢は他のエリアと比べると豊かな植生が広がっています。 その豊かさから南極特別保護区に指定されているほどです。

 なぜでしょう?

 雪鳥沢と名付けられているだけあって、ここにはユキドリが数多く営巣しています。 雪のように真っ白な体に、つぶらな黒い瞳、黒いくちばしをした海鳥です。

 ユキドリやペンギンは食べ物を海に依存して暮らしている、海洋生態系の構成要員ですが、夏の時期になると子育てのために大陸上にやってきて営巣します。 おかげで、この雪鳥沢には短い夏の時期にユキドリによって海からの栄養が持ち込まれ、豊かな植生が育まれているのだろうと考えられます。

 今回の調査では、この沢の最上流に位置する氷床末端で最初の水が流れ出してから、湖を通って、海へと流出するまで、その間の水や雪や氷、陸上・湖底の植物、土壌、ユキドリのフンなどを採集しました。 これらを分析することで、貴重な栄養源がどこから持ち込まれ、どのようにして生態系の中で循環しているのかを明らかにしたいと思います。

 恐ろしいほど音の少ないなか、雪鳥沢のガレ場を歩いていたときのことです。  突然、足元の岩から大きな鳴き声が!
 私は本当にギョッとして、その場で飛び上がってしまいました。 それはきっと、陸上部の走り幅跳び選手だった私の現役時代から見ても、驚異の跳躍力だったはずです。

 よく見ると、私が踏んでいた直径70cmほどの岩には、直径15cmの穴が2つあいています。 顔を近づけて穴の中を覗いてみると・・・真っ白な雪見だいふくか鏡餅のような物体が。 さらにグイッと覗き込むと、真っ黒でウルウルとしたつぶらな瞳と目が合いました。不安げな表情でこちらを見ています。

 スッと顔を隠し、その岩のそばで息をひそめて数分間待った後、こっそりとコンパクトデジカメを穴の中に入れると、岩の洞窟で静かに暮らすユキドリの姿が写っていました。彼らの日常を垣間見たような気分でした。

 

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◇◆ 第22回  「落ちたのは、きっと好き過ぎたから」 ◇◆

スカルブスネスに入った日からちょうど1カ月が経過しました。 本当に1カ月??と、信じがたい気持ちです。

 ここ数年、雪が大量だったせいか、まだまだ氷が張っている湖が数多くあり、ボートでの調査がすんなりとは進んでいません。とにかく早く氷がなくなってほしいものです。 しかし数日前、ついに白夜が終わり、地平線の向こうにゆっくりと滑るように太陽が沈んでいきました。と言ってもその後すぐに、太陽はまた姿を現したのですが。

 そんなわけで、これから徐々に気温が下がっていく時期になってしまったのです。 調査期間は残すところあと2週間ちょっと。晴天が続き、あとは風の力で湖の氷が急速に融けることをひたすら祈るしかありません。 なかなか氷がなくならないとは言え、ボートを漕ぎ出すことが可能な湖から順々に調査をして回っています。 風が吹く日は大変ですが、天気がよくて無風の日は本当に気持ちがよいものです。

 聞こえるのはオールで水を漕ぐ音だけ。 湖によって水の色は様々で、水質計を水中にゆっくりと下ろしていくと吸い込まれそうな気持ちになります。 少し暗くなった時間帯に、赤く染まった山々に囲まれながらする調査も格別です。 そんな南極の湖があまりにも好き過ぎたせいでしょうか。
 いや、湖の神から呼ばれたのでしょうか。

 「長池」という名がつけられた湖の氷の上を颯爽と歩いていたときのことです。 突然、地球の重力を感じなくなりました。

   ん?! なんだ??  あれ? 体が冷たいぞ。

 なんと私は薄氷を突き破って、湖の中に落ちたのでした。 幸い歩いていたところが湖岸に近かったおかげで、水に浸かったのはみぞおちまで。 おお、そういうことか・・・ 私は冷静に状況を把握しました。 ここは先達の手法を踏襲してここを脱出するしかない。

 先達とは、この水と氷の世界の住人であるウェッデルアザラシのこと。 私は迷わず彼らの真似をし、スルリと氷の穴から氷上に這い出て、ことなきを得たのでした。

 それにしても冗談抜きに、アザラシの真似はきわめて重要なのです。 なぜなら、薄くシャーベット状になっている氷は、もがくとただ割れるばかりで、なかなか水中から上がることができないからです。 しかも、そんなことをバタバタとやっているうちに、0℃近くの水によって急激に体が冷えてくるので、もしかすると焦ってパニックを起こしかねません。

 そこで、体全体を使って腹這いをすることによって、氷に加わる力を分散させる「アザラシ式」が有効となるわけです。

 長池は今後、潜水調査をする湖。 期せずして少し早めの水中偵察をすることができたのでした。

 もしかすると、懐の深い長池の神が、野外生活で汚れつつある私をちょうどいい頃合いで入浴させてくれたのかもしれません。 まあ、なんというか、少し体がすっきりしたのは事実です。

 

 

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◇◆ 第23回 「南極の湖に、いざ潜入!」 =1/2= ◇◆

  2月、ついに湖の中に潜って調査をするというビッグイベントを行いました。 潜水調査1回目は2012年2月4日に「長池」という湖(この前、水中偵察のために落ちちゃったところ)で、2回目はほんの2日前、2月14日に「なまず池」という湖での実施となりました。 長池となまず池、どちらもスカルブスネス露岩域にある淡水湖です。

  長池には2年前にも潜っていて、そのときに撮影した湖底の様子は前回にて紹介しました(次のページにもう一度掲載します)。 湖底には、タケノコのような不思議な形の植物群落が辺り一面に繁茂しています。 私たちは「コケボウズ」と呼んでいますが、大きいものだと高さ70~80cmもあり、その光景はまるで遥か昔に栄えた古代都市が朽ち果てて苔むし、遺跡となったかのようです。 ただ静かに、ひっそりと林立しています。

  このコケボウズは、単に1種の植物によって出来上がっているものではなく、コケと数十種類もの藻類とシアノバクテリアとが共存して形作られているのです。 前回の調査で不思議だったのは、水深7.5mあたりの湖底を境に植物の風景が一変すること。 まるで森林限界が訪れたかのように変化するのです。

  それぞれの湖底の植物はどのように成長しているのか? 水中の様子は年間通してどうなっているのか?

  そんなことを観察するため、今回の潜水調査では風景のちがう2地点の植物群集に焦点を当てて、それぞれビデオカメラシステムを設置しました。 これから2年間を通じて湖底の様子を断続的に撮影し続けてくれるはずです。

  さて、長池調査の10日後はなまず池の潜水調査。 こちらは初体験です。 なんとそこには、長池とは全く違う光景が広がっていました。

  午前10時55分、水面でボート上からサポートしてくれている仲間たちから湖底堆積物内に埋設する地温計を受け取り、  「バイバーイ。 行ってくるねー」 と、少しゆるい感じで手を振って地上の世界に別れを告げ、私は水中の世界にゆっくりと沈んでいきました。 上を向くと、風も無く、恐ろしいほどの透明度で、水中にいるのに太陽の光が眩しく、水上のボートがいつまでたってもくっきりと見えます。

  どんどん潜行し、湖底が近づくにつれて、私の心はザワつき、震えました。 目の前には、まるで針葉樹林のような風景が広がってきたのです。

  ツンツンと尖った高さ30~40cmほどの植物群落が湖底一面に広がるその風景は、タイガの森を遥か上空から見下ろしているような、そんなジオラマを見ているような、不可思議な世界に迷い込んだかのような気分にさせるのでした。

  さっきまで自分がいた、地上の世界が嘘だったのではないかと上を見ると、くっきり見えていた仲間たちのボートまで、まるで飛行船のようにゆらゆらと漂っています。 ますます現実感が失われていきました。

 


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◇◆ 第23回 「南極の湖に、いざ潜入!」 =2/2= ◇◆

 わずか水深10m。 ひとたび水中に入れば、こんなにも近い距離に、こんなにも信じられない世界が存在していることに私は心から感動を覚えたのでした。 なまず池には、湖底堆積物内に長さ2mの地温計(5個の温度ロガーが組み込まれている)を埋設しました。 長池の水中ビデオシステムと同様、2年後に回収する計画です。 また、アクリル製のチューブを用いて、湖底植物群集もいくつか採取しました。これらの試料は帰国後にさまざまな分析・測定をする予定です。

 長池となまず池の潜水調査を実施した日、昼間でも気温はそれぞれマイナス4℃とマイナス6℃でしたが、水温はどちらの湖も約3℃。 水中のほうが温かい世界というわけです。と言ってもまぁ、3℃ですが・・・。

 気温が氷点下になると、さまざまな問題が出てくるもので、今回は潜水しながら映像をおさめるべく持ち込んだ水中ビデオカメラが作動しなくなってしまいました。 2年前と全く同じものを使用したのですが、前回の潜水調査日は気温がプラスだったので、何の問題もなく作動していたのです。

 おかげで今回、作業風景や水中の様子の映像は撮影できず、一眼レフでの写真撮影だけとなってしまいました。 もちろん動かなくなるのは機械だけではありません。 寒さに強いことでおなじみの私ですが(え?!知らない?)、さすがに1時間も潜っていると指先はかじかんで動かなくなってきます。 陸に上がってからも、手袋を自力で脱げないほど手に力が入らない状態になってしまいます。

 さらに、これはたいしたことではありませんが、湖から上がって潜水用のフードを脱いだ瞬間に髪の毛はパリッパリに凍ります。
 これはきっと、世に言うところの「南極あるある」ですね。 もし私が湖から上がった直後に、髪の毛が束になって四方八方を向いていたとしても、それは寝癖でもお洒落を気取ったヘアスタイルでもなんでもなく、ただ凍っているだけなので、そっとしておいてあげてください。

 さて、これで今回の南極での野外調査はすべて終了。 早いもので、野外入りしてから52日間が過ぎていました。 このところ、日々急激に気温が低下し、1週間前に降り積もった雪ももはや融けなくなってしまいました。 小屋の周りは白い風景が広がっています。

 今日が、このSea Side Terraceきざはし最後の夜。 名残惜しいですが、明日にはここを撤収して昭和基地へ戻ります。

 

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◇◆ 第24回 「ただいま! そして、さようなら」 ◇◆

すっかり春ですね。

 2012年3月19日の夕刻、ついに日本に帰ってきました。 草の薫り、春の匂い、街行く人々、行き交う自動車、ペンギン・アザラシではない動物(ネコやイヌ)・・・・周りのものすべてに対して不思議な感覚を抱きます。 空の色も、空気の匂いも、聞こえる音も何もかも南極とは違い過ぎて、どちらかの世界が夢や幻なのではないかと感じてしまうほどです。

 通りを歩いても、咄嗟に人をよけるのが下手になっていてぶつかりそうになります。  見知らぬ人なのに、目の前からやってくる人になら誰だって、ついつい挨拶をしてしまいそうになります。 ふと気づくと、公園のベンチでハトを見ながらボーッとしていることがしばしばです。

 ハタから見ればただの腑抜けかもしれませんが、そう、これが紛れもない、「南極病」です。

 いわゆる普通の人間社会・文明とはあまりに違う南極という世界に長くいたせいで、街の生活に適応できないことや、俄然やる気が出てこないことを、私たちは南極病と勝手に呼んでいます。 帰国から1カ月~半年くらい、ほとんどの隊員がこの“病”にかかるんですよ、本当に。 人によっては1年経っても治らないという話もよく聞きます。

 私など、道端で見つけたネコを触るために、自然と地面に寝転んでしまったりするのですが、道ゆく人々の奇妙な視線を感じてハッと我に返ることも何度かありました。

さて、話を昭和基地最後の夜に戻しましょう。 2012年2月18日に私は野外生活を終えて昭和基地に入り、3日間過ごしたのち、2月21日に昭和基地をあとにしました。

 昭和基地を去る最後の夜には、越冬隊の仲間たちとの別れを惜しみ、基地のバーでは夜通しにぎやかな話し声が響いていました。 昭和基地最後の夜は通算3度目になりましたが、毎回、寂しいけれどとても楽しい夜になります。

 え?! 昭和基地にはバーがあるの?! と驚く方もいるかもしれません。

 そうなんです、なんと昭和基地にはバーがあるんですよ。 と言っても、もちろんバーテンダー業務は隊員たち自らでやるわけですが。 さらに、毎日開店するわけではありません。 52日間にわたる野外調査を終えて昭和基地入りした私は、すっかり達成感と疲労感と安堵感と燃え尽き症候群を抱えた状態で気が抜けてしまっていたものの、最後の夜は、仲間の隊員が持ってきてくれた我が故郷・青森の酒を飲んで楽しく過ごしました。

 これから1年間、越冬隊はほんの30名だけであの昭和基地で過ごすのかと思うと、なんとも言えない気持ちになります。 楽しんでね、頑張れよ、元気でね、という気持ちと、あの南極という世界のすべての季節を見て、そこで時間を過ごすことができることへの羨ましさが入り交じった気持ちです。 きっと1年後、みなたくましくなって、元気に帰ってくるのでしょう。

 さて、昨年の11月末から約4カ月間にわたってこの「南極なう!」を連載してきましたが、そろそろ筆を置くときがやってきました。 これにて、南極なう!は終わりますが、私の南極研究はまだまだこれから。 ずっとずっと続いてゆくのです。採取してきたばかりの湖の中の植物や水のサンプルを使って、南極湖沼の生態系の遷移過程や進化史を追求することになります。 湖の底に設置してきたカメラから、また知られざる世界が見えてきたり、新しい発見があるかもしれません。

限られた人生の時間の中で、これから私は何度、あの大陸に立つことができるのでしょう。 また数年後、きっと降り立てる日が来ることを願って。

2012年4月1日 桜が開花し始めた東京・三鷹にて

 

 

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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽  憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・

森のなかえ

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現代の探検家《田邊優貴子》 =55=

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○◎ Great and Grand Japanese_Explorer  ◎○

○ 南極の凍った湖に潜って、原始地球の生態系を追う =田邊優貴子= ○

◇◆ 第25節 特別編「北緯79度なう!」 =1/4= ◇◆

  みなさん、とてもお久しぶりです。 南極から戻って早1年半。 今年の夏はもはや異次元のような暑さでしたね~。 なんて言いたいところですが、実は私、酷暑にあまり身を委ねることなくこの夏を過ごしてしまいました。 というのも、2013年7月1日~8月1日にかけて、北極へ調査に出かけていたからです。 さらに帰国後すぐにイギリスへ出張し、帰ってきたときにはもう8月末・・・・・・

 ここ6年間の私は、夏は北極、冬は南極(向こうは夏)、春と秋は東京、なんていうちょっと常軌を逸脱した生活を送っています。 いや、もしかしたらこれが私の生活のスタンダードになってしまいつつあるのかもしれません。

 「いい大人なんだから、もっと地に足をつけろ」なんて声が聞こえてきそうですが、すっかり開き直っている私には、もはやそんな言葉はただのそよ風。 スルリスルリと通り抜けていくだけです。

 実は今年の冬も、南極・スペイン基地へ調査に行く予定でした。 が、スペイン人の研究者から「国の財政状況悪化により、スペイン隊の南極行きが中止になってしまった・・・」という連絡をもらったのが、ちょうど7月真っ只中の北極にいる時でした。

 そんなわけで、ここにきてついに私の連続隔年南極行は頓挫してしまったようです(これまでも単なる偶然や必然の仕業でこうなっていただけですけれど)。 それにしても、もろもろの研究計画を立てていた&心の準備をしていたので正直とても残念ですが、スペイン基地へは次のシーズンに期待したいと思います。

 ということで、久々の「南極なう!」、 本日は「北極なう!」的特別番外編をお送りします。 北極と言ってもイロイロ。 人によって思い浮かべる場所は違うでしょう。

 北極圏に領土を持つ国は全部で8カ国。 アメリカ、カナダ、ロシア、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、アイスランド、デンマーク(もちろん本土じゃなくグリーンランド)です。 陸地ではなく、北極海や北極点を思い浮かべる人もいるかもしれません。
 私の調査地はどこかと言うと、ノルウェー北端の町トロムソからさらに北へ1000kmほど、北緯80度あたりに浮かぶスヴァールバル諸島のスピッツベルゲン島にあるニーオルスンという国際研究村です。

 成田空港からデンマーク・コペンハーゲンに飛び、ノルウェー・オスロ、トロムソを経由してスピッツベルゲン島のロングイヤービンという町までは定期便の飛行機で行くことができます。 そして、ロングイヤービンからは10人乗り程度の小型飛行機をチャーターして30分ほどでニーオルスンに到着。 マトリョーシカのごとく乗り継ぐごとに飛行機が小さくなり、気づけば合計5つもの飛行機に乗ったことになります。

 とは言え、南極・昭和基地へは日本を出発してから1カ月もかけて辿り着くのに、なんと北極・ニーオルスンには3~4日間で着いてしまいます。 わーい!と思う半面、なんだか世界が狭くなってしまったような気がしてちょっと寂しくもあるのです。

 しかも、南緯69度の昭和基地に比べて、ニーオルスンは北緯79度。 年間の平均気温は昭和基地がマイナス10.4℃で、ニーオルスンがマイナス6.2℃。 10度も高緯度に位置するのに、ニーオルスンのほうが4℃も暖かい。
 ニーオルスンに降り立った瞬間、 「あ!ここなら生きていける!」 と感じてしまうのも無理はありません。

 7月4日、小型飛行機で降り立ったスヴァールバルのツンドラの原野には、足首ほどの背丈しかない色とりどりの小さな花々が一斉に咲き乱れていました。 真夏の太陽で融け出した雪と氷河からできた無数の濁流がうねる大地、小さな虫が花の近くをひどく鈍い動きで飛び交い、トナカイやグースたちがコケや草花をムシャムシャと食み、ホッキョクギツネがウロウロ、空にはキョクアジサシがヒラヒラ。生き物たちの熱気で溢れ返っていました。

 

 

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