もしも目の前の光景がホントかウソかまるっきりわからなくなってしまったら――
予め用意した「過去」の映像を「現実」と差し替えて・・・・
何が現実かをカンペキにわからなくする装置がついに開発された
その「代替現実」システムを発明した藤井直敬!!
【この企画はWebナショジオ_【研究室】「研究室」に行ってみた】 を基調に編纂
(文=川端裕人/写真=藤谷清美 & イラスト・史料編纂=涯 如水)
◇◆藤井直敬(08) / 第三回 客観的な現実などそもそも存在しない?=2/2= ◆◇
ぼくたちが信じ切っている現実を揺さぶる効果を代替現実たるSRシステムは持っており、それを小説や映画の世界ではなく「リアル」(というのも変な言葉の使い方に思えるが)に体験させてくれるのである。つきつめると、ちょっと怖い。
「まあ怖いといえば怖いんですけどね。自分はどこにいっちゃうんだろうっていうふうになりますから。僕らが現実の中で唯一信じられるものは何かというと、体だと思うんです。自分の体。動そうとすれば手が動くという、この状態が現実の拠りどころです。他人の体ってコントロールできないですから。自分が動かしたときに動いてくれれば、それは自分の体だと。そこには「今」がある、「現実」があるというふうに唯一頼れる柱みたいですね」
これについては、SRシステムの構築を藤井さんに提案した脇坂さんにも、ひと言意見があるようだった。
「結局、人間の認知の仕組みとは、起きてることのつじつまが合ってるかどうかというのでしか、判断できないわけです。ヒトの認知機能は本当に底が浅いといいますか。自分が体験している現実には全幅の信頼を置いてるから、それをいちいち疑ってはいない。で、疑ってない状態だと、変なことが起きても別に変だと思わなかったりします。究極は夢を見てるときだと思うんです。夢ってでたらめなことが散々起きますけど、おかしいとは感じないですよね。夢と気づかない限りは。それと似たような状態が、SRの中で実現しているわけです」
なお、編集者によると、SRの装置を身につけていたぼくが、過去の映像に対して話しかけている状態は(つまり、観察者には見えない対象に話している)、夢をみて寝言を言っているようでもあったという。
現実とはなにか、何をもってわれわれは現実とするのか。現実とはやはり単なる主観なのか。代替現実を提供して易々と「現実」を操作できるSRシステムは、様々な哲学的な問いを投げかける。ここは本当に哲学者が登場すべきところかもしれないし、藤井さんのような脳科学者ほか、認知についての研究者がかかわる部分かもしれない。
ただ、実際に日常を生きる者としては、SRが明らかにするような現実の曖昧さを目の当たりにして、いたずらに混乱するのも楽しくない。
藤井さんは言う。
「見て、感じるものがすべて本当であるかなんて、元々わからないですからね。例えば、映画の『マトリックス』で、俺はこれは幻だってわかってるが、このステーキを食うのはすばらしい。だから、俺はこれを楽しむぜみたいな人が出てきます。それはそれで僕は十分ありだと思うんですよ。マトリックスの中で十分人生を楽しんでも、何が悪いんだっていう」
次回は“第4回 代替現実で、ちょっと悟りの境地まで”に続く
■□参考資料:もう1つの現実を体験する「代替現実システム」を開発 (1/4) □■
-全く新しいインタラクティブメディア体験システムの登場-
要旨 : 理化学研究所(野依良治理事長)は、バーチャルリアリティー(VR)/詳細解説:右クリック https://www.riken.jp/press/2012/20120621_2/#note1に用いられてきた技術を応用し、予め用意された「過去」の世界を「現実」と差し替え、被験者に過去を現実と区別無く体験させる実験装置「代替現実システム(Substitutional Reality System=SRシステム)」を開発しました。これは理研脳科学総合研究センター(利根川進センター長)適応知性研究チームの藤井直敬チームリーダーと、脇坂崇平研究員、鈴木啓介研究員(現イギリス サセックス大学研究員)の研究成果です。
私たちの脳は、目の前に広がる“現実”は確かなものであると強く信じています。つじつまの合わないことが起きると、「気のせい」や「思い違いのせい」にして、つじつまが合うように強引に解釈します。夢の中では、まったくつじつまが合っていないことでも、現実だと思い続けます。こうした自分の体験を「実際に起きていること」と信じる仕組みや、それに疑いを持つ時に生じる、メタ認知/<上記詳細解説参照>と呼ばれるヒトの高次認知機能はさまざまな技術的限界のため、その詳細を理解することが困難でした。
研究チームは、被験者に気づかれずに、予め用意した過去の映像を“現実”に差し替える「代替現実(Substitutional Reality; SR)システム」を開発しました。SRシステムでは、被験者はヘッドマウントディスプレー(HMD)/<上記詳細解説参照>とヘッドフォンを装着し、2種類のシーンを体験します。1つは、HMD上に取り付けられたカメラからリアルタイムで送られたライブ映像、もう1つは被験者がいる場所で予め撮影され、編集された過去映像です。これらの映像の切り替えに工夫を凝らすことで、被験者に、過去映像を、まるで目の前で起きている“現実”だと体験させることに成功しました。
SRシステムは、予め記録し編集しておいた過去の出来事を、今まさに目の前で起きている現実であると被験者に信じさせることも、それに疑いをもたせることも可能にします。本装置を用いることにより、これまで困難だったメタ認知に関わるさまざまな認知・心理実験が可能になります。また、新しいアプローチの心理療法としての応用や、VRや拡張現実(AR)/<上記詳細解説参照>などとは異なる体験を提供するヒューマンインターフェースとしての展開も期待できます。
本研究成果は、ネイチャー・パブリッシング・グループのオンラインジャーナル『Scientific Reports』(6月21日号)に掲載されます。
なお、8月24~26日の間に日本科学未来館において、SRシステムを用いた”MIRAGE”というパフォーマンスアートの公演を予定しています。
・・・・・・明日に続く
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◆ SR system: How it works ◆
動画のURL: https://youtu.be/zratzFg89QE
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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
森のなかえ
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