2050年までに、サッカー世界チャンピオンチームに勝てる人型ロボットチームを作ろう!
小説『銀河のワールドカップ』のモチーフにもなったそのシミュレーションリーグ
1997年にスタートした「ロボカップ」大会、「チーム・ヘリオス」が完全優勝を果たした
ロボカップ サッカーシミュレーションリーグ 秋山英久・中島智晴
【この企画はWebナショジオ_【研究室】「研究室」に行ってみた】 を基調に編纂
(文・写真・動画=川端裕人 & イラスト・史料編纂=涯 如水)
◇◆ 秋山英久&中島智晴(10) /第4回 本当の賢さとは「自ら賢くなれる」こと =3/3= ◆◇
「シミュレーションリーグの世界では、たぶん本物のサッカーとは違う意味でフォーメーションという言葉を使っています。ここでチームフォーメーションと言うと、その時の状況、特にボールの位置に応じた各選手の配置のことを意味するんですね。状況に応じた選手の配置を試合開始前に共有しておくことで、チーム全体として一貫性のある戦略的な配置を維持する、ということです。もともと、Situation Based Strategic Positioning、状況に応じた戦略的ポジショニングと呼ばれていたんですが、今ではそれを進化させたモデルが使われています」
進化したモデルというのは、「ドローネ三角形分割を用いたフォーメーション表現モデル」という。秋山さん自身が2007年に開発した。直観的に操作できるGUIエディタでプレイヤの配置をデザインすることが可能になり、より柔軟な配置調整も可能になったそうだ。ぼくが決勝戦の前夜、秋山さんと中島さんを訪ねたところ、2人ともノートパソコンで、GUIを使い、選手の位置の調整を行っているように見えた。おそらくそれがその作業にあたるのだろう。
「こういった手法で、競技レベルはどんどん進歩しているんですが、個々のエージェントは他者との関係を必ずしも考慮していないので、チームワークができているように見えているだけ、とも言えます。他者との関係を考慮してどうポジションニングしていくかというのは、動的ポジショニングと呼ばれていて、これからの研究テーマなんです」
動画: RoboCup 2017 Final ER-Force vs. SRC https://youtu.be/5_8HpaHlzyE
ここから先のチーム・ヘリオスは、中島さんが興味を持っている強化学習なども用いて、「動的ポジショニング」にも挑戦していくことになるのだろう。ただ、この分野は、本当にこれからの開拓分野だという。今の所、守備についてはある程度の成果があるものの、攻撃については暗中模索だ。強化学習の研究はあるものの実用レベルには達していない。今の所、作りこみ以外に有望な手法が明らかになっていないという。
というわけで、秋山さんの総括はどちらかと辛口のものになった。 「結局、中国のチームに勝てたのは、わたしが観察したことをもとにフォーメーションの設定ファイルをいじって調整したことが大きいんですね。ロボカップの目標としては、この調整作業自体が自動化されるべきものです。選手とは別に存在するコーチエージェントが試合を分析し、フォーメーションの調整を指示できるのが理想的なのですが、まだそこまでの技術レベルには到達できていません」
これだけ完成しているように見えて、まだまだ到達する頂は遠い。
しかし、着実に進歩している。
画面に浮かび上がる瞬間的なチームワークの美には相変わらず驚嘆をおぼえつつ、それが、本当に「賢い」ものになるのは、この先のことなのだと理解した。
次回は“第5回 ロボットが人間とサッカーをする日は近い”に続く
■□参考資料: 「ロボカップ」を通して見える「人間とロボットの協働社会」 (4/5) □■
=ロボカップの発案者の一人、産業技術総合研究所の野田五十樹氏へのインタビュー=
――失点しそうな窮地で、後ろからぶつかって転倒させる「プッシング」のようなプレーもありました。人間ならレッドカードかもしれませんが、失点が確実視される場合には現実にこうした反則プレーが起きます。かなり高い判断力が必要だと思うのですが、このプレーは人工知能が何をどう判断しているのですか?
野田 残念ながら、そのプレーは、各ロボットが単にボールやゴールに向かっていってしまった結果ぶつかっているだけで、高度な判断の結果ではありませんね(笑)。その辺りの動きが今後の大きな課題になっています。
――具体的に、どのような課題ですか?
野田 いまのロボットは「意思疎通」ができない、ということです。人間がサッカーをやれば、もちろん接触シーンはありますが、ラグビーのような肉弾戦にはなりません。それは、無意識のうちに人間同士が避け合い、暗黙の了解で相手の動きを予想しているからです。それを利用して、相手にフェイントをかけて一瞬で出し抜くプレーが生まれたりするわけです。
――現時点で人間とロボットがサッカーで対戦すると大変なことになりそうです。
野田 ロボカップ世界大会の最後に、中型リーグの優勝チームと研究者代表の人間チームで対戦することになっていて、私も学生時代にサッカーをやっていたので出場するのですが、すぐにロボットとぶつかってしまいます。人間はロボットがどこにどう動くか予想できない。逆も同じです。
もし、いま二足歩行で素早く動けるロボットと人間が試合をしたら、ぶつかって人間にけがをさせてしまうでしょう。それを避けるために、ロボットに「人間とぶつかったらダメ」と設定すると、今度はロボットがボールを追わなくなります。人間と一定の距離を取ろうとするからです。これでは、サッカーが成立しません。
――意思疎通させるための処方箋はあるのですか?
野田 正直、どこから研究に手をつけたらいいのか、まったくわかっていません。でも、人間と意思疎通ができるロボットの開発というのは、サッカーだけの問題ではありません。意思疎通ができなければ、人間との協働作業はできないということになるからです。それをどう解決するかが今後の大きな課題であり、研究者としては魅力的なテーマです。
「AIが人間を支配する」は映画の中の話
――ロボカップを通じた技術発展で、実際に社会に貢献したものはありますか?
野田 よく知られる事例として、大手ECサイトの物流を支える仕組みがあります。倉庫の中にたくさん商品棚がありますが、商品を作業員が取りに行くのではなく、作業員の前に倉庫が動いてきてくれる技術です。あれはロボカップの小型リーグに参加していた人が開発したものです。・・・・・・明日に続く
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◆ Digest of Team ODENS+JK in SSL Humanoid, RoboCup Japan Open 2017 ◆
動画のURL: https://youtu.be/lRzr_x7tyHA
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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
森のなかえ
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