2050年までに、サッカー世界チャンピオンチームに勝てる人型ロボットチームを作ろう!
小説『銀河のワールドカップ』のモチーフにもなったそのシミュレーションリーグ
1997年にスタートした「ロボカップ」大会、「チーム・ヘリオス」が完全優勝を果たした
ロボカップ サッカーシミュレーションリーグ 秋山英久・中島智晴
【この企画はWebナショジオ_【研究室】「研究室」に行ってみた】 を基調に編纂
(文・写真・動画=川端裕人 & イラスト・史料編纂=涯 如水)
◇◆ 秋山英久&中島智晴(09) /第4回 本当の賢さとは「自ら賢くなれる」こと =2/3= ◆◇
秋山さんの説明を受けて、中島さんがさらに解説してくれた。
「中国チームが人工知能を使っていないというわけではないんです。でも、古い人工知能で、たとえばA*(エースター)というアルゴリズムがあるんですが、最適経路を探してくれるんですね。サッカーだとパスしてゴールに至る一番コストがかからない経路。でも、それって、ちょっと人間の賢さとは違って、誰かがつくった賢さなんです。神の視点が入ってるような。僕が目指しているのは、自分で賢くなるやつ。僕が動かし方を知らなくても、自分で動き方をつくり出せるのがほんとの賢さだと思っているので、それがサッカーに生かせるようにと思っているわけです。もっとも、研究として取り組んでいる内容が違うだけで、中国チームも別のところで最新の人工知能技術を使っている、または使おうとしているのも間違いないんですが」
ちょっと単純化しすぎかもしれないが、チーム・ヘリオスが「自分で考えるチーム」を1年のうちに熟成させて、「決めごとに忠実なチーム」に勝ったのだとしたら、個人的には大変喜ばしい。実は、かつてぼくが書いたサッカー小説『銀河のワールドカップ』は、「自分で考える」ことの大切さをひたすらストーリーの中に織り込んだものだった。また、作中で、サッカーシミュレーションを登場させたので(もちろん、モデルはシミュレーションリーグ)、感慨もひとしおだ。
そこで「今年の勝因は結局なんだったでしょうか」と問うた。
動画: ロボカップジュニア世界大会決勝前半e^πi 1 vs Cenatex https://youtu.be/NV2gm-1vGs4
秋山さんはきらりと眼鏡の縁を光らせ、「センターフォワードのポジショニング。フォーメーションの調整です」と述べた。まるで勝負師のような表情であった。
ちなみに、ここでいうセンターフォワードは、ぼくが南アワールドカップの時の本田圭佑になぞらえた選手(エージェント)だった。 「中国のチームはサイドからの崩しにはうまく対応するので、むしろ真ん中からせめてやった方がよいだろうという判断でした。結局、勝ったとはいえ、エージェント自身が賢かったというよりも、わたしの観察に基づいた修正が、うまくはまった、ということなんですね」
秋山さんは、研究者の冷静な表情へと戻っていた。
ああ、なるほど、と感じた。
もちろん、チーム・ヘリオスの選手たちは、この1年間でより賢くなっただろう。
でも、それだけではなく、現状では、人間の判断が最終的な勝敗を左右する部分が大きい、ということではないか。
「ロッカールーム・アグリーメント」という言葉を秋山さんは使った。いわば、試合前の約束事。エージェントが自分で考えるのではなく、各状況に応じた対応法の大枠を決めておくやり方だという。ちなみに、中国チームのこの「約束事」を作り込んでいるということだったが、「自分で考える」ことを前面に出すチーム・ヘリオスにしても、ガチガチではない範囲内で相手に合わせて調整したのだという。
・・・・・・明日に続く・・・
■□参考資料: 「ロボカップ」を通して見える「人間とロボットの協働社会」 (3/5) □■
=ロボカップの発案者の一人、産業技術総合研究所の野田五十樹氏へのインタビュー=
――どのような意味で転換点となったのでしょうか?
野田 研究成果を論文で発表する場合、研究室や工場の中など「研究のためにつくり上げられた環境の中」で実験し、ベストな結果をもとに論文を書くというケースが中心でした。ところが、ロボカップの会場は体育館やアリーナなどのオープンスペースです。ロボット用につくられていない場所で、どう動かせるかが問われてきます。これは、研究を進めるうえで転換点となり、大きな意義もあります。
ロボットの動きは「記号処理」と「学習」のコンビネーション
――昨年の大会をYouTubeで観ました。小型、中型のロボットはとても素早い動きをしていますね。
野田 小型と中型のロボットは、オムニドライブという360度動けるタイヤを装着しています。チームワークを研究している小型リーグでは、天井にカメラが設置されていて、どのロボットもそのカメラからの情報を受け、敵味方やボールの位置を認識しています。つまり、「全員がお互いの位置を把握した状態で、チームワークを発揮してプレーしてください」という狙いです。一方、中型のロボットはそれぞれに360度を見渡せるカメラが装着されていて、自らボールと敵味方を選別しています。
――いわゆる「キラーパス」を通すシーンをたびたび見かけました。
野田 キラーパスはまさにチームワークがあってこそなせる技ですが、最近はチームごとに上達しています。相手の位置、こちらがこう動けば相手はこう動く、だから味方の誰がここに動いてパスを出す、という計算された動きです。
――これは人工知能が、プレーを学習して「進化」しているということなのでしょうか?
野田 ディープラーニング(深層学習)が注目されているので勘違いされがちですが、人工知能を達成するアプローチ法には、ディープラーニングを含めた「学習」と、「こういう場合はこうしなさい」というルールを細かく書き込む「記号処理」の二つの方法があります。ロボットの動きは、この「学習」と「記号処理」のコンビネーションで成り立っています。ボールを追いかけたり蹴ったりする力を調整するのは、ディープラーニングが得意ですが、戦術的な動きを生み出すのは記号処理の方が得意なのです。
――実際に戦術面で進化したチームはありましたか?
野田 実際のサッカーの試合で、試合中にフォワードを1人から2人に増やすなど、フォーメーションを変えることがあります。ロボカップでも、昨年の大会に出場したシドニー大学のチームは、アルゴリズムを駆使し、対戦相手が戦術を変更するのを予測して、自分たちのフォーメーションを変化させながら試合を進めていました。 ・・・・・・明日に続く
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◆ RoboCup 2017 Soccer Simulation 2D Final ◆
動画のURL: https://youtu.be/nsgkYG7iOrM
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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
森のなかえ
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