アイヌ語、八重山語、与那国語、沖縄語、国頭語、宮古語、奄美語、八丈語
ユネスコの発表によれば、これらは消滅の危機にある日本の「言語」だ
このユネスコの警鐘と連動する形で共同研究プロジェクトを立ち上げ
日本の消滅危機言語を守るリーダーを務める木部暢子
【この企画はWebナショジオ_“日本のエキスプローラ”/研究室にいって来た”を基調に編纂】
(文=川端裕人/写真=藤谷清美 & イラスト・史料編纂=涯 如水)
◇◆ 木部暢子(08) / 消滅危機の日本語を守る_知の学究達 ◆◇
◆ 第4回 「方言」と「言語」の違いとは =2/2= ◆
実はこのプロジェクトは始まったばかりで、2010年に喜界島、2011年に宮古島を調査して、2012年9月に八丈島と12月に与論島を調査する予定だという。
喜界島の調査では、すでに「3点セット」が作られ始められていた。
「これ、語彙はまだ2000にいってないんですけどね。地元の人向けのものと、言語学者が使うインターナショナル・フォネティック・アルファベットで書かれたものと2種類あります。文法書がこちら。まず音韻概説があって、この辺がアクセント──」
と大部な冊子を指さし教えてくださった。辞書の冒頭の語彙は「毛」で発音は「ひー」、「血」は「つぃー」、「帆」は「ふー」。語彙はずいぶんと違う印象だ。
なお、インターナショナル・フォネティック・アルファベットは、訓練を受けた人なら世界中の誰が読んでも同じ音声が復元できるように作られている。世界で使われているほとんどの音声が記述できる言語学仕様の表記法だ。
テキスト、辞書、文法書という3点セットは、むしろ古典的なもので、現在は録音資料の録音と活用も、ひとつの大きなテーマになっている。というか、3点セットにそれぞれ、音声をリンクさせた形で公開することも可能なわけだから、木部さんのプロジェクトでは、印刷媒体だけではなく、ウェブサイトで3点セットを公開した上で音声データをリンクする準備をしているという。
最初に想像した以上に手間がかかりそうな調査研究だ。また、待ったなしの調査でもある。
「このような大々的な調査は、1年に1地点か2地点くらいが限界ですね。喜界島と宮古島には40人ほどが行きました。研究者と学生が半々くらいで、それぞれ1週間くらいの滞在です。調査団をグループに分けて、例えば文法調査する人だとか、音声、発音を調査する人だとか、それぞれ、たくさんの人に方言を聞いたんですね。喜界島の場合は、80人ぐらい話者が来てくれました。年齢的にはかなり高齢。大体70歳以上ですね。そういう方たちは日常会話では方言を使っていて、すらすら出てくる。最近使わなくなった言葉をちょっと思い出せないっていうのは、ありましたが」
ちなみに、出てこない言葉には、おたまじゃくしとか、カエルとか、子ども時代には親しくとも、そのうち話題にしなくなるものが含まれていたそうだ。遊びの名前などもきっとそうだろうと想像した。
また、危機言語の調査・保存をする時、木部さんは新たな問題に突き当たった。喜界島は周囲が100キロ、人口8千人の小さな島なのだが、それでも集落ごとに言葉は違う。調査しようにも、いったいどこの言葉を中心にすればいいのか、という点。
「理想は集落全部やりたいんです。でもそれは無理なので、全域が均等になるようにピックアップしていくわけです。喜界島の中心地は今は湾という地域なんですね。港もあれば、空港もある。でも、湾の言葉で喜界島の方言を残すと他の地域の人は自分たちの言葉が湾の言葉に飲み込まれた気持ちになる。それはどこに行ってもそうで、奄美大島でも、徳之島でも同じです。
だから、私はいつも言っています。例えばテキストの見本、文法書の見本ができたら、これを直して自分たちバージョンをつくってくださいって。それでも、私たちも気をつけなきゃいけないなと思うんです。少数のものを守ると言いながら地方に行って、実は地方を単一化してしまうという過ちを犯してるのでないかと。いつも、そういう心配を持ちながら調査しなきゃいけないと思っています」
グローバルに言語の多様性を守る活動が、ローカルな多様性を犠牲にしてしまう可能性!
言語という人類のあり方の粋ともいえる現象は、本当に「取扱注意」であり、言語学者はそれをわきまえて進まねばならないのだ。
次回は“第5回 消滅危機言語をなぜ守らなければならないのか”に続く・・・
■□参考資料: 「大阪弁は消滅危機言語」という意外な現実 (1/3) □■
--- 方言が消えると、何が困るのか?---
約2500言語が「消滅危機」
「消滅危機言語」ということばを聞いたことがあるだろうか。
「絶滅危惧種」なら聞いたことがあるが、消滅危機言語は聞いたことがないというかたが多いのではないだろうか。
絶滅危惧種とは、絶滅のおそれのある野生生物のことで、IUCN(国際自然保護連合)や学術団体、NGO、日本の環境省、各都道府県などがレッドリストを公表している。
消滅危機言語はその言語版にあたる。すなわち、使用する人が極めて少なくなり、近いうちに消滅のおそれのある言語のことで、2009年にユネスコがそのリストを公表した。
それによると、世界に存在する約6,000ないし7,000の言語のうち、約2,500が消滅の危機にあり、日本では八つの言語――アイヌ語、八丈語、奄美語、国頭語、沖縄語、宮古語、八重山語、与那国語――が消滅の危機にあるという。
野生生物の絶滅と言語の消滅は、どちらも同じくらい深刻な問題のはずだが、人は往々にして野生生物には敏感で、人間の言語には鈍感である。
たとえば、日本の在来種のトキは2003年に絶滅したが、中国からトキを借り受けて人工増殖を行い、産まれたトキを自然界に戻す事業が国や地方自治体の主導で実施されている。
その取り組みは、環境省のホームページやマスコミなどで紹介され、一般市民もまた、結果に一喜一憂する。
大阪弁も危機言語
一方、言語に関しては、文化庁が危機的な状況にある言語・方言の実態調査やアーカイブ化の事業を実施しているものの、極めて小規模な予算であり、言語の消滅を食い止めたり、自然界(地域社会)で言語を復活させたりする活動には、とても結びつかない。
何より、消滅危機言語に対する一般市民の関心度が低いのがいちばんの問題である。
「消滅危機言語というのは、アイヌ語や沖縄のことばのことだろう?」「生物や言語が消滅するのは、自然の流れであって、しかたないんじゃないの」と思っている人が多いのである。
しかし、じつはそうではない。
たとえば、大阪弁も危機言語である。大阪というと、東京に対する西の拠点として独自の言語と文化を堅持しているような印象が強いが、必ずしもそうではない。
一例をあげれば、大阪弁の代表格に「さかい」という語がある。「だから」の意味で、「大阪で生まれた女やさかい」(BORO)の「さかい」であるが、今から30年前、すでに20歳代の若者は8.9%しか「さかい」を使っていないという調査報告がある(真田信治『方言は絶滅するのか』PHP新書)。 ・・・・・・明日に続く
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◆ 「日本の消滅危機言語・方言の記録とドキュメンテーションの作成」木部暢子 ◆
動画のURL: https://youtu.be/QEJgZpfazKk
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