宇宙にも天気予報があることを知っている人は少ないのでは
天気予報を知る人でも、宇宙天気予報がないと困る人たちが、たくさんいる
日々予報を発表し、「太陽嵐」によるさまざまなキケンから人類の安全と安心を守る
華やかな宇宙開発の影で宇宙気象の研究にいそしむ長妻 努
【この企画はWebナショジオ_“日本のエキスプローラ”/研究室にいって来た”を基調に編纂】
(文=川端裕人/写真=藤谷清美 & イラスト・史料編纂=涯 如水)
◇◆ 長妻 努(04) / 情報通信研究機構 宇宙天気予報 ◆◇
◆ 第2回 太陽嵐でパソコンのデータが消失する? =02/02= ◆
・・・・大きなプロトン現象が発生したら、ISS(国際宇宙ステーション)で働いている宇宙飛行士が、ステーション内で遮蔽された区画へと退避したりといったことも必要になります。さらに、CMEが地球に到来することで、単純に電離層が乱れるデリンジャー現象とは違い、もっと大きな範囲にわたる磁気圏の乱れが起こることがありますから、地上への影響もある地磁気嵐を予報しなければなりません。なので、フレアが観測されたら、プロトン現象の到来やCMEのガスが地球にどれぐらいの時間で到来するかも予測しなければなりません。・・・・・・
長妻さんの説明によると、プロトン現象と地磁気嵐のいずれも、太陽から発せられる、強烈な太陽風、つまり、CME(コロナ質量放出)などを起源とするプラズマ(気体が陽イオンと電子に電離している状態。プラズマテレビも、プラズマを使っている)が原因だ。
コロナとは、太陽のまわりに見えるぼんやりした光の部分で100万度以上の高温のプラズマで出来ている。皆既日食の時などには、肉眼でも見ることができる。そのプラズマの一部が、なんらかの理由で外に向かって吹き出すのがCME、コロナ質量放出だ。
これと密接に関係しているプロトン現象を、まずは見ておこう。
プロトン現象を担っている高エネルギーのプロトンがどのようにして作られるのかは実はまだ良くわかっていないらしい。太陽フレアによってプロトンが加速されて放出される成分がある一方で、CMEが高速で移動することによって生じる衝撃波で新たにプロトンが加速されて作られる成分などもあり、複雑なのである。いずれにせよ、高エネルギーのプロトンは、CMEよりも更に速度が速いため、プロトン現象はCMEに先駆けて地球に到来する。太陽フレアの後、30分程度で地球に到来する場合もあるそうだ。
するとどんなことが起きるか。
「例えば人工衛星に影響があります。高エネルギーのプロトンがあたることで太陽電池の劣化が進みます。あとは、プロトンがコンピュータの回路の中に入り込むと、誤動作につながるんですね」
コンピュータのメモリなどは電荷で記憶を保持している。そこにプラスの電気を持つプロトン(陽子)が突っ込んでくるわけだから、たまったものではない。電荷のプラス・マイナスがひっくり返り、つまりはコンピュータにとっての基本言語要素といえる0と1が逆になってしまう。そうなれば、コンピュータは正常に働かない。
「実はこういった影響は、それほど大きくないプロトン現象でも、わりとよくあるんですね。シングルイベント・アップセット(単発の反転)といいまして、ひっくりかえる部分が1カ所くらいでしたら、例えばCPU3台ぐらい使って、多数決で正しい判断下すようにするとか、いろいろ対策は立てられているようです。ただ、そういう仕組みが十分でない衛星などの場合に、例えばプロトン現象が起きているときに、姿勢変更のコマンドをうっかり打ってしまって、それが正しく動作しなくて、衛星が変な方を向いたり、回転してしまったりとかということが起きます」
では、もっと大きなプロトン現象ならどうなるか。
「太陽からのプロトンが非常に増えると、アップセット(反転)の回数も増えてきます。ひどい場合には、もう本当に回路がとまってしまうだとか、壊れてしまうことも起こり得ます」
では、極大のプロトン現象が起きると、今、地上でキーボードを打っている、ぼくなどの前でいきなり、バチンとパソコンが誤動作を起こし、停止したりすることはありえるのだろうか。
「さすがにそこまでは。プロトンは地上までは届かないので──」と長妻さんは言った。「むしろ、地上に影響を与えるのは地磁気嵐の方です」と。
次回は“第3回 太陽嵐で大規模停電が起きるわけ”に続く・・・
■□参考資料: 太陽風から地球を守れ □■
「天気」と言っても雨、雪、台風などの話ではない。太陽から発せられる「太陽風」やそれに伴う「磁気嵐」を観測・予報するのが宇宙天気予報だ。アメリカでは地震や津波と同様に注視すべきリスクとして、「米国戦略的国家危機評価」の1つに追加しようという動きも進んでいる。
情報通信研究機構(NICT)は2015年8月26日、記者説明会を行い「宇宙天気予報」の最新動向について解説した。同会にはNICT 電磁波計測研究所 宇宙環境インフォマティクス研究室の石井守氏が登壇し、宇宙天気予報の重要性を語った。
太陽で爆発が起こると通信が乱れる?
太陽は爆発の際、「太陽風』と呼ばれる電気を帯びたガスを発生させる。地球は磁気圏でその太陽風を防いでいるが、まれに防ぎきれないことがあり、その際には磁場や電離圏が乱れて「磁気嵐」が発生する。
この磁気嵐は宇宙ステーションや人工衛星の制御に影響を及ぼす他、地上でのGPS利用や電力網の障害につながる可能性すらある。「これらを回避するべく、太陽の動きを観測し、太陽風の動向を予測するのが宇宙天気予報の役割」(石井氏)。
記録上、最も大きな宇宙天気現象として知られているのは1859年に発生した「キャリントン・イベント」だ。電信線の帯電によるオフィス発火や、夜でもオーロラの光で新聞が読めたなどの記録が残っているという。現在でもキャリントン級の爆発が起こる可能性はあり、発生すると東日本大震災を大きく上回る経済損失が世界規模で発生する恐れがある。
NICTでは1988年より宇宙天気予報を発信しており、衛星運用機関や航空関係機関、電力事業者などが情報を利用している。予報は、NICT本部(東京都・小金井市)にある「太陽風観測データ受信システム」と2014年7月に新設した山川電波観測施設(鹿児島県指宿市)にある「太陽電波望遠鏡」からの情報を元に行われている。また、2015年2月に次期太陽風観測探査機「DSCOVR(ディスカバー)」の打ち上げが完了しており、現在運用している探査機「ACE(エース)」からの移行が2015年度中に完了する予定だという。
宇宙天気予報は近年、その重要性が広まっており、例として航空機運用への利用義務化が検討されていると石井氏は解説する。北極航路を利用する航空機は短波通信を利用しているが、その際に宇宙天気現象が発生してしまうと短波通信が途切れ、外界との通信ができなくなる可能性がある。
宇宙天気予報は近年、その重要性が広まっており、例として航空機運用への利用義務化が検討されていると石井氏は解説する。北極航路を利用する航空機は短波通信を利用しているが、その際に宇宙天気現象が発生してしまうと短波通信が途切れ、外界との通信ができなくなる可能性がある。それを回避すべく、影響の激しい地域を避けて通るなどの運用が検討されているという。その他にも、衛星運用機関が宇宙天気を参照して運用スケジュールを検討する、通信機関が宇宙天気を参照して周波数を切り替えるなど、宇宙天気は欠かせない情報となりつつあると現状を説明した。
宇宙天気の観測は広い範囲を扱うため、国際協力が欠かせない。最も古くからある組織は、国際科学会議(ICSU)内にある国際宇宙環境サービス(ISES)で、アメリカ、ロシア、イギリスなど17カ国が参加しており、連携して予報を進めているという。また、国内でもNICTが中心となり、宇宙天気予報システム向上への新しい取り組みの研究が全国的にはじまっている。
石井氏は「宇宙天気予報を活用する機関はまだ少なく、原因不明の通信切断が実は太陽風の影響だった、と後から分かることも多い。これから大学や専門家などとも情報を交えながら普及、研究を進めていきたい」と今後の目標を話した。
◆ ~バーチャルラボ紹介~ 宇宙天気予報 ◆
動画のURL: https://youtu.be/HfeMN8qrQjE
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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
森のなかえ
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