宇宙にも天気予報があることを知っている人は少ないのでは
天気予報を知る人でも、宇宙天気予報がないと困る人たちが、たくさんいる
日々予報を発表し、「太陽嵐」によるさまざまなキケンから人類の安全と安心を守る
華やかな宇宙開発の影で宇宙気象の研究にいそしむ長妻努
【この企画はWebナショジオ_“日本のエキスプローラ”/研究室にいって来た”を基調に編纂】
(文=川端裕人/写真=藤谷清美 & イラスト・史料編纂=涯 如水)
◇◆ 長妻 努(03) / 情報通信研究機構 宇宙天気予報 ◆◇
◆ 第2回 太陽嵐でパソコンのデータが消失する? =01/02= ◆
「宇宙天気予報」をめぐる各種用語というか概念は、初学者には込み入っていて、どれとどれがどういう関係なのか分かりにくい。たぶん、地上の天気予報も本当はそうなのだろうが、子どもの頃から慣れ親しんでいるので違和感がない。ふだん耳慣れないというだけで、「宇宙天気予報」は多くの人にとって「SF的」に響くだろう。
前回、予報の文言の中にあった、プロトン現象、CME現象、デリンジャー現象、といった各種「現象」を理解しようとすると、太陽活動についての知識が必要だ。すると、自動的に、黒点、コロナ、太陽風、等々、新たなキーワードまで登場する。
長妻さんは、NASAの太陽観測衛星(SDO)が極端紫外線で撮影した太陽の画像の前で、宇宙天気で重要な太陽の活動を、かいつまんで説明してくれた。
まずは、太陽の観測で、よく耳にする黒点について。
「太陽の活動では、黒点はとても重要な指標なんです。まわりに比べて温度が低くて、可視光では暗く見えるから黒点と呼んでいるんですが、極端紫外線では逆に明るく見えます。黒点の上層の大気が非常に活発に活動しているからです。ここがまさにフレアなどが起きやすいところなんですね。黒点が多いと太陽の活動が活発だというのはフレアがたくさん起きやすいということです」
太陽黒点というのは、太陽の表面にできる暗点だ。これは400年前、はじめて太陽を望遠鏡で観測したガリレオ・ガリレイの昔から知られており、長妻さんの説明通り、黒点が多いほど太陽の活動が活発で、少ないと静穏、という相関が経験的に知られてきた。また、ほぼ11年周期で、黒点が多い活発な時期と静穏な時期が入れ替わることも分かっている。
「フレアは太陽の表面で起きる爆発現象ですが、そのときに強いX線や紫外線が放射されます。特に大きなフレアが起きると、放射されたX線の影響で地球の周りの電離層が乱れてしまうんです。それで、太陽に照らされている側の電離層では短波が吸収されて、遠距離の短波通信ができなくなるんですね。デリンジャー現象といいます。」
アマチュア無線をする人なら、短波と呼ばれる周波数帯はお馴染みのはず。短波は、上空の電離層でうまく反射してくれるため、地球の裏側とでも通信することができる。しかし、フレアから放出されるX線などで、この電離層が乱されると(デリンジャー現象)、短波が反射しなくなり長距離の通信ができなくなる。
かつて、短波通信は今よりずっと重要な役割を世界的に担っていた。とにかく「遠く」と通信するための一番効率的な方法だったのだから。しかし、現在では海底ケーブルや、通信衛星のおかげで、相対的に重要性は減じている。
「遠洋漁業の漁師さんが今も、一部使っていたりするようです。あとは、飛行機の通信。極回り航路ですと、静止衛星との角度の関係で衛星通信もなかなか厳しいし、どうしても短波でないと通信が維持できない領域があります」
聞くかぎり、現在の短波通信の用途は限定的だ。とすると、フレアの予報も、以前に比べて実用的な意味合いは減ってきているのかもしれない……というのは誤解だとすぐに分かった。フレアの予報には別の重要な意味があるという。
「つまり……フレアというのはほかの大きな太陽活動の先駆けなんですね。大きなフレアに伴って、太陽からCME(コロナ質量放出)と呼ばれるガスが放出されることがあります。このCME現象に伴って、高エネルギーのプロトン(陽子)がたくさん生成されることがあり、地球の周りに宇宙放射線の一種であるプロトンがたくさんやってくる場合があります(プロトン現象)。特に、大きなプロトン現象が発生したら、ISS(国際宇宙ステーション)で働いている宇宙飛行士が、ステーション内で遮蔽された区画へと退避したりといったことも必要になります。
さらに、CMEが地球に到来することで、単純に電離層が乱れるデリンジャー現象とは違い、もっと大きな範囲にわたる磁気圏の乱れが起こることがありますから、地上への影響もある地磁気嵐を予報しなければなりません。なので、フレアが観測されたら、プロトン現象の到来やCMEのガスが地球にどれぐらいの時間で到来するかも予測しなければなりません。」
・・・・・・明日に続く・・・
■□参考資料: 宇宙天気予報の解析因子 □
宇宙天気予報(space weather report, etc.)とは、宇宙天気=太陽フレア、太陽プロトン現象、磁気嵐等の状況=を観測・把握し、それに伴う影響を予測して、地球上の天気予報と同じように予報する(前もって情報提供する)ものである。
太陽フレア(Solar flare)とは、太陽における爆発現象。別名・太陽面爆発。 太陽系で最大の爆発現象で、小規模なものは1日3回ほど起きている。多数の波長域の電磁波の増加によって観測される。特に大きな太陽フレアは白色光でも観測されることがあり、白色光フレアと呼ぶ。太陽の活動が活発なときに太陽黒点の付近で発生する事が多く、こうした領域を太陽活動領域と呼ぶ。太陽フレアの初めての観測は、1859年にイギリスの天文学者リチャード・キャリントンによって行われた。
「フレア」とは火炎(燃え上がり)のことであるが、天文学領域では恒星に発生する巨大な爆発現象を指している。現在では太陽以外の様々な天体でも確認されている。一例として、日本の国立天文台が運用するアルマ望遠鏡がプロキシマ・ケンタウリで観測した。
アメリカ航空宇宙局(NASA)によると、2012年7月には巨大な太陽フレアが地球をかすめた。次の10年間に同程度のフレアが実際に地球を襲う確率は12%であると推定される。
磁気嵐(Magnetic-storm)とは、地磁気が通常の状態から変化し、乱れが生じること。 通常は中緯度・低緯度において全世界的に地磁気が減少する現象のことを指す。 典型的な磁気嵐では地磁気は数時間から1日程度の時間をかけて減少し、その後数日かけて徐々にもとの強さまで回復していくという過程をとる。
プロトン親和力(proton affinity)とは気相中において分子あるいはイオンにプロトン(水素イオン)付加する場合の親和力であり、エンタルピー変化の数値で表す。電子親和力が電子の付加に対するものであるのに対し、プロトン親和力は陽子の付加に対するエネルギー変化にあたる。
トンネル効果(tunnelling effect)は、量子力学において、波動関数がポテンシャル障壁を超えて伝播する現象である。 20世紀初頭に予言され、20世紀半ばには広く認知される物理現象となった。トンネル効果は、ハイゼンベルクの不確定性原理と、物質における粒子と波動の二重性を用いて説明できる。
陽子(proton)とは、原子核を構成する粒子のうち、正の電荷をもつ粒子である。英語名のままプロトンと呼ばれることも多い。陽子は電荷+1、スピン1/2のフェルミ粒子である。記号 p で表される。 陽子とともに中性子によって原子核は構成され、これらは核子と総称される。
◆ 地球磁気圏で最も大規模な変動現象-磁気嵐 ◆
動画のURL: https://youtu.be/_kC8r2vtf-4
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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
森のなかえ
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