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Channel: 【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》
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霊長類学者_D.フォッシーの学究達=180= / カリソケ研究所(06/mn)

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世界に800頭ほどしかいないマウンテンゴリラ、ルワンダ共和国には約500頭が生息

1967年にダイアン・フォッシーが設立した「カリソケ研究所」はゴリラ研究で世界的中心のひとつ

映画「愛は霧のかなたに」や、自著『霧のなかのゴリラ』で世界中で認知される 

設立から約半世紀がたつ今なお、D.フォッシーの情熱が受け継がれる

【この企画はWebナショジオ_“日本のエキスプローラ”/研究室にいって来た”を基調に編纂】

(文=川端裕人/写真=川端裕人 & イラスト・史料編纂=涯 如水)

◇◆ カリソケ研究所(06) / マウンテンゴリラ ダイアン・フォッシーの後継者たち ◆◇

◆ 第2回 「母親の気持ちとか、すごく通じる」 =3/3= ◆ 

 なるほど、そういう背景を知っていれば、もう少し、深い見方が出来たかも知れないなあと思う。まあ初心者としては、赤ちゃんの可愛さに目を奪われるのは仕方ないにしても。

 ちなみに、なぜ、複オスのグループが増えたのかというと、政情が安定したルワンダ側にゴリラが集中し「人口密度」が高まったからとか、ひとつの群れでも複オスになってしまうと、対抗上、他の群れもシルバーバックを複数にせざるを得なかった(オスが複数の方が、群れの戦闘能力は上がる)などの解釈がある。いずれにしても、ゴリラの社会が「優位オスが絶対! のハーレム」と決まっているわけではなく、かなり柔軟なのだとわかる。

 今、森さんが興味を持っているのは、群れと群れとの間の「メスの移籍」の問題だ。

「これまで話に聞いてきたのは、オスはもうメスなら全部好きでえり好みしない。でも、メスには選ぶ権利があって、このオスのところに行くと決めたら行く。でも、初対面のオスに、ついて行くかしらって思うんですよ。どんな人だかわかんないのに(笑)。そんな素朴な疑問があったから、その移籍を見たかったんです。今、注目しているメスがいるんですが、彼女が惚れたヒトリオス(群れを持たず単独行動しているオス)と、彼女を離したくない群れの相互行動がすごいことになっていて、ヒトリオスと一緒に行くかと思ったら群れのオスたちに引き留められ、ヒトリオスも何度も闘争を挑んで、というのを見ています──」

 メスは別の群れのオスに自分の子どもを殺されたら、殺したオスの群れに移籍する傾向があるとか、ショッキングな「事実」はよく聞くのだが、森さんの視点は、メスの好き嫌い、という部分を基本にしている。好きだから移籍する、というのは、ゴリラ社会でどれだけ許容され、どのように実現するのか。その瞬間を見たいという。そして、実際に、凄い瞬間に出会い映像に収めてきた(具体的には内緒にしておく。森さんが将来作るフィルムをお楽しみに)。

 活き活きした語り口から、とにかく森さんが、本当にゴリラを「白紙」で満喫している様がよくわかった。過去の研究で一応確立しているように語られることもいったん棚に上げて、目に見えるものを追いかけ、ビデオカメラに収めていく。そして、研究者でも、従来のテレビ番組ディレクターでもない立場で、物語を拾い上げる。それはなんと豊かなゴリラとの関わりであることか!

 そして、森さんは、彼女が愛してやまないゴリラの群れたちを見いだし、名前を与え、守り抜こうとしたダイアン・フォッシーへの慕情を語ってくれた。

「私は『霧のなかのゴリラ』を読んで、ダイアン・フォッシーやカリソケ研究所に憧れたので、毎日ここのドアを開けるたびに震えるぐらい感動しています。ああ、こんなところに私は出入りできるんだって……。山の方に、元々の研究所跡と、密猟で殺されたゴリラとフォッシーのお墓があるんですね。あの話は小説じゃなかったんだ、このゴリラたちもフォッシーも、みんな殺されたんだ。本当にひどいと思って。そこで私、何か渡された気がするんです。おこがましいですけど。あなたね、ゴリラ好きなんだったらちょっと役に立ってよって言われた気がします。変かもしれませんが、今もここにダイアン・フォッシーがいると感じるんです」

次回は“第3回 マウンテンゴリラのストレス度チェック”に続く・・・・

■□参考資料: 人間に最も近いヒト科の仲間「マウンテンゴリラ」 (2/2) □■

研究対象とされ長い間、人を見慣れてきたせいもあるが、我々が近づいてもいきなり襲いかかってくるようなことはない。とはいえ、安全な動物だと断定はできないが、少なくとも刺激しないよう静かに接している限りでは、ゴリラが日常のペースを乱すことはない。争いを好まず、遊び好きでファミリーの絆も固い、平和な生き物といった印象を強く感じた。

しかし研究者によれば、群れの雌がほかの雄の子を連れているケースで子殺しが行われた報告もあり、私が目にした姿はゴリラの奥深い生態のほんの一面でしかないことは容易に想像できる。ジョージ・シャラーやダイアン・フォッシーらがゴリラ研究の礎を築き、現代も世界各国第一線の研究者が精力的に生態解明に挑んでおり、50年前までは全くの謎だったゴリラの生態が近年詳しく解明されつつある。

子煩悩で面倒見の良い〝シルバーバック〞

マウンテンゴリラは一般的に、背中が鞍状に白くなったシルバーバックと呼ばれる1頭の大人の雄と、複数の雌やその子どもからなる10頭前後の群れを形成している。採食のために移動する時は先頭に立ち、寝場所の決定もシルバーバックが行い、ほかの雄の侵入やヒョウなどの肉食獣の接近から群れ全体を守るリーダーである。異なる群れのリーダーと激しく争うこともあるが、普段は温和に群れをまとめて導く。

 

巨大なゴリラだが、産まれたての赤ちゃんは2キロ弱と、人の赤ちゃんよりかなり小さい。1年ほどは母親が肌身離さず世話に没頭し、母乳で育てる。群れの若いゴリラたちも赤ちゃんには興味津々で、構いたくてしょっちゅう近づいていく。生後1年を過ぎると母親は、赤ちゃんを時々シルバーバックに預けるようになるのだが、シルバーバックは子煩悩で、積極的に赤ちゃんの面倒を見る。徐々にシルバーバックと過ごす時間が長くなり、3歳を過ぎて乳離れをするようになると寝る時もシルバーバックのそばにいることが多くなるようだ。

厳しい生息環境のなか保護活動で頭数は微増

ゴリラの生息環境は深刻な状況である。木材の伐採や鉱物資源採掘のために熱帯雨林が切り開かれ、年々その面積が縮小していくとともに密猟も横行し、ブッシュミートと呼ぶ食用肉として流通されるケースも多い。また、ゴリラの生息する国が政情不安で内戦を起こしたことや、エボラ出血熱の流行によって、大量のゴリラが感染死したことも状況を悪化させている。

そうした一方で、関係国が連携し生息地を厳重に管理し、レンジャーや獣医を常駐させてゴリラを保護する活動も盛んになり、世界中のNGOも積極的にゴリラ保護に努めるようになってきた。そうした努力の甲斐があって、最近ではわずかながらゴリラの数が増えてきている。私たち人間と最も近いヒト科のユニークな仲間であるゴリラ。彼らの未来は私たちの手に委ねられている。

◆  ゴリラを守る ◆

動画のURL: https://youtu.be/DxZZJw75CQU

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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽  憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・

森のなかえ

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