世界に800頭ほどしかいないマウンテンゴリラ、ルワンダ共和国には約500頭が生息
1967年にダイアン・フォッシーが設立した「カリソケ研究所」はゴリラ研究で世界的中心のひとつ
映画「愛は霧のかなたに」や、自著『霧のなかのゴリラ』で世界中で認知される
設立から約半世紀がたつ今なお、D.フォッシーの情熱が受け継がれる
【この企画はWebナショジオ_“日本のエキスプローラ”/研究室にいって来た”を基調に編纂】
(文=川端裕人/写真=川端裕人 & イラスト・史料編纂=涯 如水)
◇◆ カリソケ研究所(05) / マウンテンゴリラ ダイアン・フォッシーの後継者たち ◆◇
◆ 第2回 「母親の気持ちとか、すごく通じる」 =2/3= ◆
森さんは続ける。
「これは3週間とか3カ月単位ではなく、腰を落ち着けてやりたいな、と思ったんですね。もう頭の中を白紙にして、ゴリラのことを何でも知りたいと。何をこの人たちは大事にして、何を目的に、何が楽しくてどんなふうに幸せを感じて生きてるのかっていう、一番基本的なことから知りたくなってしまいました」
森さんは、ゴリラを「あの人たち」と言うように、擬人的に語る。それがとても自然に感じられた。たぶん相手が類人猿だから。それと、ここがカリソケ研究所であり、森さんが日本人だから、でもある。
1頭1頭を個体識別して名前までつけて、「個々人」として追いかける「擬人的」なアプローチは、元々、日本の霊長類研究のお家芸だった。ところがこの手法は、欧米の研究者にとっては非科学的だとも感じられたようで、長らく人気がなかった。それを打ち破り、日本的なやりかたを取り入れたのが、チンパンジーのジェーン・グドールや、マウンテンゴリラのダイアン・フォッシーだった。今より情報の流通が遅く、科学の世界にも文化性が色濃かった20世紀の半ば、霊長類学で洋の東西が混交した場所のひとつがカリソケだとぼくは感じている。
森さんは、ぼくが最初に会ったスサ・グループについて、目を輝かせて語ってくれた。
「スサはね、すごく面白くて、一番最初に見つかったマルチメール(複オス)グループなんですよ。それまでは1頭のオスがいて、あとメスと子どもたちだけという典型的なハーレムだったのに。ダイアン・フォッシーが来た時はそうだったんですね。なのに、オスが3頭もいるのが見つかった。それが他のグループにも波及して、その後、他のグループまでどんどん複オスになっていっちゃうんですよ」
フォッシーが最初に目にしたのは、優位のオス1頭がメスと子どもたちを率いる「典型的ハーレム」のゴリラの群れだった。それがスサ・グループの登場以来、複数のオスが所属するグループが増えていったという不思議。歴史を作った群れなのだった。
「スサからは2009年に、別グループが分かれて出ていったんですが、その前はシルバーバックが6頭もいたんです。すごい規模でした。オスが何頭もいる場合は、メスも多いんですよね。メスも好みがありますから、オスが1頭よりも何頭もいたほうが、あのオスが好き、このオスが好きって入ってくるじゃないですか。でも、実際に交尾の権利があるのは、優位なオスだとされてきたんですね。とはいえ、それ以外のオスが交尾するのも観察されますし、それをどうやって仕切ってるのか。他のオスが交尾をしようとすると、ナンバー1とすごいけんかになるんです。ナンバー2は、肩に噛まれた跡つけてます。別グループが分かれる時にも、どのメスがついていくとかいかないとか、それは興味深い闘争があったはずなんですね」
・・・・・・明日に続く・・・・
■□参考資料: 人間に最も近いヒト科の仲間「マウンテンゴリラ」 (1/2) □■
熱帯雨林に暮らす絶滅危惧種の巨大類人猿
火山の中腹に広がる、樹木や草が鬱蒼と生い茂るジャングルをかき分けて行く。アフリカの赤道直下に位置し、互いに国境を接するルワンダ、ウガンダ、コンゴ民主共和国に広がるヴィルンガ火山群の熱帯雨林は、マウンテンゴリラに残された貴重な聖域だ。我々人間と97%以上も共通する遺伝子を持つ彼らが、この地でどのように生きているのか、その暮らしぶりに接近してみた。
類人猿の中で最も大きなゴリラは、ニシゴリラとヒガシゴリラの2種に分かれ、ニシゴリラはニシローランドゴリラとクロスリバーゴリラの2亜種、ヒガシゴリラはヒガシローランドゴリラとマウンテンゴリラの2亜種に分類されている。マウンテンゴリラの体高は1・2〜1・8メートル、体重は80〜230キロ、寿命は40年ほどと見られ、生息数は約800頭と絶滅危惧種に指定されている。四肢を使い、手を軽く握って指の背を地面につける特徴的な歩き方は、ナックルウォーキングと呼ばれている。ポコポコと乾いた音をさせて胸をたたくドラミングはゴリラの最も印象的な行動で、敵を威嚇する意味合いもあるが、自分の存在を周囲にアピールするためのものというとらえ方が、より濃厚である。
基本的に植物食のマウンテンゴリラはジャイアントセロリやヤエムグラ、ヒレアザミ、雨季のタケノコなどを好む。時には動物性タンパク質となるグンタイアリなども食べるようだ。ジャングル内の植物は棘のあるものも多く、それらの茎を食べる時は、いったん手でしごいて棘を払ってから口に入れている。
国立公園内のゴリラの生息地へ行くにはレンジャーの同行が義務付けられており、観察できる時間もゴリラにストレスを与えないため、出会ってからきっかり1時間と決められている。ゴリラは採食のために日々移動をしており、群れに遭遇できるまでの所要時間がまちまちで、生息地の入り口から30〜40分で出会えることもあれば、傾斜のきついジャングルを6〜7時間歩かなければならない時もある。棘だらけの植物が生い茂るジャングルで彼らを追うのは困難ではあるが、間近で接する彼らの存在感は感動的である。
謎の多いゴリラの生態争い好まず、遊び好きの面も
ゴリラは粗雑で凶暴な生き物というイメージを多くの人が抱いているかもしれない。だが私は、それとは異なる温和で繊細な印象を受けた。群れを司るシルバーバックは筋骨隆々で巨大なうえに想像を絶する怪力の持ち主だが、思慮深そうな穏やかさを瞳にたたえ、子煩悩で仲間の面倒見がとても良い。研究対象とされ長い間、人を見慣れてきたせいもあるが、我々が近づいてもいきなり襲いかかってくるようなことはない。とはいえ、安全な動物だと断定はできないが、少なくとも刺激しないよう静かに接している限りでは、ゴリラが日常のペースを乱すことはない。争いを好まず、遊び好きでファミリーの絆も固い、平和な生き物といった印象を強く感じた。・・・・・・明日に続く
◆ Mountain Gorillas in Rwanda ◆
動画のURL: https://youtu.be/_xNt_I5LUOk
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