仮面ライダー? 月光仮面? なまはげ? それともプリキュア?
連想ゲイムで並んだ語彙の共通点は、顔面に装着する仮面であろう……
アフリカの仮面に魅せられて、ザンビアの秘密結社に参加したレアでディープな体験から、
アフリカの仮面の魂と真実にたどりついた吉田憲司
【この企画はWebナショジオ_“日本のエキスプローラ”/研究室にいって来た”を基調に編纂】
(文=川端裕人/写真=藤谷清美 & イラスト・史料編纂=涯 如水)
◇◆ 吉田憲司(11) / 性交や出産などの“生”は女たちの秘密 =3/3= ◆◇
「私がラッキーだったのは、かみさんが一緒にいて、女性の成人儀礼を受けてくれたことです。やはり仮面の研究者というのは、仮面ばかり見ますから、仮面結社が男性の成人儀礼と関わっていても、女性の成人儀礼は全く別の現象としてしか扱われてこなかったんです」
結論からいうと、女性は男性から、生殖、誕生など一連の過程を秘密にしている。たとえば、子どもがどこから産まれるのか明らかにせず、「木の股から生まれてくる」などと説明されるそうだ。
「女性の成人儀礼では、性交の時の体位ですとか、出産のときの呼吸の方法、あるいは夫が長い間旅に出て帰ってきたときに夫に尽くす方法などが教えられます。成人儀礼にあたっては、小さな素焼きの土器を少女のためにわざわざ焼いて、ビーズでデコレーションをほどこします。それは少女にとって終生夫以外の男性には見せてはいけない宝物になるんです。うちの家内も1つ持ってます。この儀礼の最終段階では、もともと動物の粘土像をつくって、その周りで踊ったと言います。その慣習は40年ほど途絶えていたのですが、私たちは、長老の女性にお願いしてそれを久々に再現してもらいました」
ぼくが非常に興味深く感じたのは、仮面を使わない女性の成人儀礼が、実は「憑依」とつながっていることだ。
「女性の成人儀礼は、もともとニシキヘビの霊に憑依された霊媒が祭司をつとめていたといいます。仮面はどこに行ってもあるわけではないけれど、憑依という現象はどの社会にもあります。チェワの社会では、生殖とか繁殖とか出産が女性の霊媒による憑依に司られ、仮面の方は葬送の文脈で機能している。『女たちが出産を秘密にするから、おれたちは死を秘密にするんだ』とはっきり述べた、ニャウのメンバーがいました。彼らが女性の成人儀礼とニャウによる葬送儀礼を1つのシステムとして認識していることが分かったのは、やはり妻が一緒にいてくれたおかげです」
吉田さんが調査したチェワでは、仮面と憑依、誕生と死、男と女、といったものがきれいに対置され、全体として「システム」をなす。そのようなことがはっきり見て取れた。
そして、吉田さんは、男性があたかも女性に対抗するかのように仮面結社を作った理由についてこんな考えを述べてくれた。
「チェワの社会は、アフリカのなかでも『母系ベルト』と呼ばれる、母系社会が集中して分布する地域の一角にあって、非常に母系原理が強いんです。生まれてきた子供は、母とその兄弟の親族集団に属します。極端な言い方をすれば、子供は母親とその兄弟のものであって、父親のものではない。しかも、結婚後の居住規制が妻方居住のため、男たちは、日常は妻の親族と暮らすことになる。ですから、男たちは一般的にたいへん不安定な立場に置かれます。チェワの人びとに限らず、もともと、女性は出産という確固とした役割を担っているわけですが、男性の場合は、生まれてきた子供が自分の子供かどうか、そう信じる以外ないという宿命を背負っている。そして、その生殖の上だけでなく、社会生活の上でも、女性に比べてたいへん曖昧な位置に置かれてきたチェワの男たちは、ニャウの仮面をつくりだすことによって、初めて自分たちを生と死のサイクルの中に位置づけることができたのではないか思います」
次回は“「異界」の力を形にした「仮面」”に続く・・・・
■□参考資料: アフリカの仮面概論 □■
アフリカの仮面は、私たちの概念を超えるユニークな造形、力強さを持っています。今回のかんかんプレスでは、プリミティブアートの代表といえるアフリカの仮面を取り上げます。仮面がどういうときに使われ、どのような意味を持っているのか見ていきましょう。
仮面ダンス
アフリカの仮面は主に西アフリカから中央アフリカの農耕民族のあいだで見られます。一つの場所に定住し農耕を行うことによって、自然を畏れ、祖先を敬う気持ちが生まれ、さまざまな儀礼や祭が行われるようになったと考えられています。その儀礼や祭りの中で行われるのが仮面ダンスです。
仮面は農耕祭では豊作を祈り、大地や祖先に感謝の念を捧げます。葬送儀礼では死者の霊を慰めて祖先の国へ送り届ける役割を担い、成人式では祖先の霊や森の精霊を体現し少年たちの教育や世話にあたります。この他、寸劇や余興などの場面にも仮面が登場します。
仮面結社
一般に仮面を管理し仮面ダンスを演じる集団は成人男子による秘密結社であり、仮面に関わることはすべて女性や子供から隔てられたところで行われます。結社のメンバーそのものが秘密にされたり、結社のメンバーはよく知られていても、誰が仮面を着用しているかが秘密にされている場合もあります。仮面のかぶり手は顔を仮面で覆うだけでなく、仮面と一体化した衣装で全身を包み、精霊となって人々の前に現れるため、誰が仮面を着用しているかは決して明かされてはいけないのです。
造形・色
仮面文化を持つ数百の民族がそれぞれ独自の神話にまつわる仮面を数多く持っています。仮面ダンスの中には神話を再現するものがあり、神話に登場する人物や動物が仮面のモチーフとなります。それらは思いつきや創作で作られたものではなく、それぞれの仮面にはすべて様式があり、名前と役割があります。
仮面の多くは一木彫りで、形や大きさは実にさまざまです。大きなものでは2メートルを超えるものもあります。その造形には民族固有の美意識や世界観が表現されています。美しいとされる顔かたち、髪型、化粧などの特徴が誇張されることが多く、色や模様にもそれぞれの意味があります。ビーズや布製の仮面も作られます。
仮面ダンスでは通常楽器を演奏する人たちが仮面を取り巻きます。人々の熱気に包まれ、音楽と一体となり、仮面は命を吹き込まれます。そのような情景を想像しながら仮面を見てみるのも楽しみ方の一つではないでしょうか。
◆ イメージの力 ―国立民族学博物館コレクション ◆
動画のURL: https://youtu.be/gEX6lyTcu7Y
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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
森のなかえ
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