ちょっと間抜けで憎めない、いや、愛すべき容貌をしたクマムシ
低温にも負けず、高圧にも負けず、乾燥にも放射線の照射にも負けず
2700メートルの海底から標高5000メートルくらいの山まで、頑健丈夫な体で生き抜く
華の都パリでそんな“かわいいけど最強”の生物・クマムシを研究する栃本武良
【この企画はWebナショジオ_“日本のエキスプローラ”/研究室にいって来た”を基調に編纂】
(文=川端裕人/写真=川端裕人・堀川大樹 & イラスト・史料編纂=涯 如水)
◇◆ クマムシ/堀川大樹 : 第2回 クマムシに出会ってひと目ぼれ =1/2= ◆◇
クマムシ研究者、パリ第5大学の堀川大樹研究員は、30代前半の若年で、ポスドク(博士後研究員、博士号取得後に任期制のポストについている)の立場にある。
前回述べたように、札幌の豊平川に架かるとある橋で採集したクマムシが、結果として堀川さんをここに導いた。
パリ第5大学のキャンパスは、パリのサンジェルマン・デュプレ、モンパルナスといった観光名所にも近い。また、科学史を勉強すると必ず登場する細菌学の祖、パストゥールの名を冠した地下鉄駅から徒歩2分の距離にある。パリ第1~第4大学までがソルボンヌ大学と呼ばれるように、偉人の名を冠してルネ・デカルト大学と呼ばれることもあるようだ。
近所に宿を取ったぼくを迎えに来てくれた堀川さんは、黒いシックなコートを着込み、知的近代史の匂いがぷんぷんする周辺環境に実にマッチしていた。
ところが、導かれたパリ第5大学の建物は「半端に現代的」なたたずまいだった。なんの変哲もないオフィスビルのようで、その3階にある理科実験室を大きくしたような大部屋が、堀川さんの研究の現場なのだった。
まず、クマムシ、それも、堀川さん自身が系統を確立したヨコヅナクマムシ"YOKOZUNA-1"のシャーレを冷蔵庫から出して、双眼実体顕微鏡で覗かせてもらった。
培地が薄緑なのは、ヨコヅナクマムシが食べる藻類のせい。双眼顕微鏡の視界の中で、たしかに褐色のクマムシがうごめいていた。たまたま顔がこっちを向いているやつがいて、つぶらな目の印象はまさに「かわいい!」ものだった。
堀川さんは、目下、分子生物学的な方法で、クマムシの「耐性」の秘密をさぐる実験をしているわけだが、まずはこのYOKOZUNA-1の系統確立に至る経緯を聞いておこう。
なにはともあれ、クマムシとの出会い。
「学部の指導教官がクマムシの研究をしたことがあったんです。本来は、生物と圧力についての専門家でして、クマムシは圧力にも強いんじゃないかと実験したところ、6000気圧まで耐えられると発見したんです。それが「ネイチャー」に載って話題になったそうで……指導教官がクマムシの話ばっかりするもんですから、面白いなあとは思っていたんですね」
ただ、この時点で、堀川さんはクマムシを研究対象にしようとは思っていなかった。なぜなら、これだけ興味深い生き物なら、とっくに研究されており、今更新参者が入り込んでもやることはないだろうと思ったからだ、という。ところが──
「ある日、研究室のOBが来て、実際にクマムシを見せてくれたんです。一目見て、『あ、すごい、かわいい。これだ』っていう、直感みたいなものがあって。そこから文献をいろいろ検索してみたんですけど、ほとんど研究されてないって分かって、これはいける、と。私は性格上、誰もやってないマニアックなもののほうが、モチベーションが上がるんで。もう、これは理屈じゃなくて」
当時、クマムシの研究者は日本でもせいぜい4人ほどで、それも分類学方面の研究者だったという。そこで、堀川さんは修士課程で北海道大学の大学院に入った際、腰を入れてクマムシ研究をスタートさせる。
「生態学の研究室だったので、クマムシの耐性と生態学をリンクさせようと考えました。オニクマムシという種類がありまして、世界中にいるんです。それを使って乾燥への耐性と、低温への耐性との関係を調べようと──」
・・・・・明日に続く・・・
■□参考資料: 「クマムシ」/ウィキペディア(Wikipedia) (3/3) □■
強力な耐性ながら寿命は半年だが、クマムシは乾眠の状態で長期間生存することができるとする記述がある。例えば、「博物館の苔の標本の中にいたクマムシの乾眠個体が、120年後に水を与えられて蘇生したという記録もある」など、教科書や専門書でもそのように書いているものもある。ただし、この現象は実験的に実証されているわけではなく、学術論文にも相当するものはない。
類似の記録で、120年を経た標本にて12日後(これは異常に長い)に1匹だけ肢が震えるように伸び縮みしたことを観察されたものはあるものの、サンプルがこの後に完全に生き返ったのかどうかの情報はない。通常の条件で樽の状態から蘇生して動き回った記録としては、現在のところ10年を超えるものはない。
常温だと酸化により樽がダメージを受けるためで、極低温や無酸素状態で保管するのであれば、理論上は半永久的に生存が可能であろうと、クマムシ研究者の堀川大樹は主張している。
2007年、クマムシの耐性を実証するため、ロシアの科学衛星フォトンM3でクマムシを宇宙空間に10日間直接さらすという実験が行われた。回収されたクマムシを調べたところ、太陽光を遮り宇宙線と真空にさらした場合、クマムシは蘇生し、生殖能力も失われないことが確認された。太陽光を直接受けたクマムシも一部は蘇生したが、遮った場合と比べ生存率は低かった。
耐性は乾眠によって強化されている可能性がある。2015年の米国科学アカデミー紀要(PNAS, Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)掲載論文によれば、クマムシの一種の遺伝子は水平伝播による外来遺伝子が全体の17.5%にも及ぶという。大部分は細菌のDNAで、その他菌類、植物、古細菌、ウイルスのDNAが含まれ、ストレス耐性にかかわるものもあったとされる。
その仕組みについては、乾燥した細胞膜が物質を透過しやすい状態になり、そこで混入した外来遺伝子がDNA修復の際に組み込まれると推定されると主張している。ただし、異種の動植物の遺伝子の割合が高かったのはサンプルが汚染されていたからではないかとの指摘がなされている。
2019年、イスラエルの月探査機ベレシートが着陸に失敗して墜落。ベレシートには、クマムシを入れた装置が搭載されており、クマムシが事故を生き延びている可能性がある。
分類
緩歩動物は以前は節足動物に含まれていたこともあり[9]、また、舌形動物 (Pentastomida) 、有爪動物 (Onychophora) とともに側節足動物 (Pararthropoda) と呼ばれていたこともあったが、21世紀現在では3綱5目15科からなる独立した動物門となり、有爪動物門・節足動物門と共に汎節足動物(Panarthropoda)を構成する。
かつて、これらの動物は環形動物の近縁と考えられ、体節動物(Articulata)としてまとめられてきたが、後に鰓曳動物や線形動物などとの類縁関係が有力視され、脱皮動物(Ecdysozoa)を構成し、また舌形動物は独立の動物門ではなく、著しく特殊化した節足動物であることも後に分かった。
汎節足動物の中で、緩歩動物は有爪動物と節足動物より早期に分岐した、もしくは節足動物の姉妹群、などの説がある。また、これらの動物門と同様、緩歩動物も葉足動物から派生したものと考えられる。
◆ 國枝武和「極限状態に耐える動物クマムシの秘密を探る」 ◆
動画のURL: https://youtu.be/Rg3n7_fvMp0?list=RDCMUCGkctuF55veBi7xDGCgcYkw
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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
森のなかえ
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