ちょっと間抜けで憎めない、いや、愛すべき容貌をしたクマムシ
低温にも負けず、高圧にも負けず、乾燥にも放射線の照射にも負けず
2700メートルの海底から標高5000メートルくらいの山まで、頑健丈夫な体で生き抜く
華の都パリでそんな“かわいいけど最強”の生物・クマムシを研究する栃本武良
【この企画はWebナショジオ_“日本のエキスプローラ”/研究室にいって来た”を基調に編纂】
(文=川端裕人/写真=川端裕人・堀川大樹 & イラスト・史料編纂=涯 如水)
◇◆ クマムシ/堀川大樹 : 第1回 かわいい。けど、地上最強? =2/2= ◆◇
かなりすごい防御スペックであり、「クマムシ最強!」といいたくなる気持ちも分かっていただけるだろうか。クマムシはこういった耐性を、だいたいの場合、「樽型」になっているときに最大限発揮する(「だいたいの場合」についての注釈は後ほど)。
これだけすごい生き物だと、単に「すごい!」と驚き愛でるだけではなく、当然のごとく知的好奇心として「なぜ?」を問いたくなる。
なぜ、クマムシはほかの動物が到底持ち得ないような耐性を獲得したのか。絶対零度に近い極低温や真空、さらには猛烈な放射線などは、地球上で自然にはほぼあり得ない環境であり、進化の過程で適応によって獲得したとは考えにくい。しかし、奴らはこともなげに耐えてしまう。ひょっとして、宇宙からの来訪者なのか!?
というのは妄想にしても、耐性の機構を解明できれば、実用的な意義もあちこちで見つかるだろう。例えば、クマムシが放射線に耐える仕組みが分かれば、放射線の人体影響を減じる手段も見つかるかもしれない(今すぐ、というわけにはいかないのがつらいところだが)。
さらには……放射線への耐性には、DNAを損傷から守る防護機構と、抗酸化作用の機構が想定されていて、それらが詳しく分かれば、いわゆるアンチエイジングなる方面への活用が可能、という考えもあるらしい。乾眠の仕組みの解明が、生鮮食品や医療用臓器の乾燥保存技術につながるかもしれないと聞いたこともある。
というわけで、クマムシは「最強」+「かわいい」だけではなく、研究対象としてもチャーミングなことこの上ないのだ。
世界のクマムシ研究は、この10年ほどの間に、盛り上がりを見せている。
その背景に、一人の若き日本人研究者が大きな影響を与えていることを知り、話をうかがうことになった。
アメリカのNASA・エイムズ研究センターを経て、現在はパリ第5大学・フランス国立衛生医学研究所を兼務する堀川大樹フェローだ。
目下のところ、彼の最大の業績は、「ヨコヅナクマムシ」と呼ばれる藻類を食べるクマムシの飼育・繁殖の方法を見いだし、実験に使うことができる単一個体由来の系統YOKOZUNA-1を確立したことだ。それまでは、クマムシの飼育は、極端に飼育に手間がかかったり、そもそも何を食べるか分からなかったり、「困難、あるいは不可能」と見なされていた。それを堀川さんが変えた。また、堀川さんは、ヨコヅナクマムシがクマムシの中でも最も強い耐性をもつ種類であることを実験によって証明したため、がぜん注目が集まった。なお、「ヨコヅナ」の命名は堀川さん自身によるもので、「クマムシの中でも最強だから」というのが理由。
モデル生物として「系統を確立」することの重要性は、少しでも実験系の生物学研究に触れたことがある人なら誰でも知っているだろう。飼育できないといちいち野生から採集してこなければならないし、数を集められない。また、遺伝的なばらつきが多いと実験結果に影響を及ぼすかも知れない。ちなみに、ヨコヅナクマムシを使ったゲノム解析プロジェクトでは、数万匹単位のヨコヅナクマムシを使う。系統が確立されていないと不可能な話だ。
堀川さんがヨコヅナクマムシと出会い、飼育系の確立、系統の確立に成功したのは、北海道大学の大学院生時代である。
キャンパスがあった札幌の豊平川のとある橋で偶然採集した新種らしいクマムシが、堀川さんを、NASAでの宇宙生物学研究、そして、現在のパリ第5大学での分子生物学的探求へと誘うことになった。
・・・・・明日, “2回 クマムシに出会ってひと目ぼれ”に続く・・・
■□参考資料: 「クマムシ」/ウィキペディア(Wikipedia) (2/3) □■
クリプトビオシス
※ クリプトビオシス(cryptobiosis、「隠された生命活動」の意)は、クマムシなどの動物が乾燥などの厳しい環境に対して、活動を停止する無代謝状態のこと。水分などが供給されると復活して活動を開始する。
クリプトビオシスを行なう生物として、クマムシ(緩歩動物門)、ワムシ(輪形動物門)、ネムリユスリカ(節足動物門)が挙げられる。いずれも乾燥状態になるにつれて、体内にトレハロースという糖を蓄積している。そのトレハロースの作用は、分子の運動を制限する状態を維持するガラス化して組織を保持する説と水の代わりに入り込む水置換説やそれらの作用が複合的に関与しているとも考えられている。
一部の緩歩動物は、乾眠(かんみん)によって環境に対する絶大な抵抗力を持つ。乾眠(anhydrobiosis)はクリプトビオシスの一例で、無代謝の休眠状態である。この現象が「一旦死んだものが蘇生している」のか、それとも「死んでいるように見える」だけなのかについて、長い論争があった。現在ではこのような状態を、クリプトビオシス(cryptobiosis '隠された生命活動'の意)と呼ぶようになり、「死んでいるように見える」だけであることが分かっている。他にも線虫、ワムシ、アルテミア(シーモンキー)、ネムリユスリカなどがクリプトビオシスを示すことが知られている。
乾眠の過程
緩歩動物は周囲が乾燥してくると体を縮める。これを「樽(tun)」と呼び、代謝をほぼ止めて乾眠の状態に入る。乾眠個体は、後述する過酷な条件にさらされた後も、水を与えれば再び動き回ることができる。ただしこれは乾眠できる種が乾眠している時に限ることであって、全てのクマムシ類が常にこうした能力を持つわけではない。さらに動き回ることができるというだけであって、その後通常の生活に戻れるかどうかは考慮されていないことに注意が必要である。
乾眠状態には瞬間的になれるわけではなく、ゆっくりと乾燥させなければあっけなく死んでしまう。乾眠状態になるために必要な時間はクマムシの種類によって異なる。乾燥状態になると、体内のグルコースをトレハロースに作り変えて極限状態に備える。水分がトレハロースに置き換わっていくと、体液のマクロな粘度は大きくなるがミクロな流動性は失われず、生物の体組織を構成する炭水化合物が構造を破壊されること無く組織の縮退を行い、細胞内の結合水だけを残して水和水や遊離水が全て取り除かれると酸素の代謝も止まり、完全な休眠状態になる。ただし、クマムシではトレハロースの蓄積があまり見られないため、この物質の乾眠への寄与はあまり大きくないと考えられている。
耐性
クマムシは非常に大きな耐性強度を持つことで知られている。ただしそれは他の多細胞生物と比較した場合の話であり、単細胞生物では芽胞を作ることにより、さらに過酷な環境に耐えることができるものもいる。
乾燥 : 通常は体重の85%をしめる水分を3%以下まで減らし、極度の乾燥状態にも耐える。 温度 : 100 °Cの高温から、ほぼ絶対零度(0.0075ケルビン)の極低温まで耐える。 圧力 : 真空から7万5000気圧の高圧まで耐える。 放射線 : 高線量の紫外線、X線、ガンマ線等の放射線に耐える。X線の半致死線量は3000-5000グレイ(ヒトの半致死線量は4グレイ)。・・・・・・明日に続く
◆ たるに変身 クマムシ Water Bear ◆
動画のURL: https://youtu.be/gwn2WwH97ps
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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
森のなかえ
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