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Channel: 【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》
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めくるめく知のフロンティア・学究達 =148= / 栃本武良(24/24)

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生態がほとんどわかっていなかったオオサンショウウオ

驚くべきは国の特別天然記念物でありながら、その生態は謎だらけ

勤務する水族館でよく聞かれた素朴な疑問に答えようと研究をはじめた

子供たちに答えようと、ついには「日本ハンザキ研究所」を作ってしまった栃本武良

【この企画はWebナショジオ_“日本のエキスプローラ”/研究室にいって来た”を基調に編纂】

(文=川端裕人/写真=的野弘路、堀信行 & イラスト・史料編纂=涯 如水)

◇◆ 番外編4 ヨウスコウカワイルカの二の舞を防げ =2/2= ◆◇

   研究会の参加者たちは、随分な長丁場なのに、集中を途切れさせることなく、さかんに議論した。「夜の打合せ」で、もう正体が分からなくなるほど痛飲していた人たちも、まさに昼間の表情で参加していた。特に、漁政局の人たちは制服着用できりっとしており、格好良かった。

 さて、研究会で語られた様々な背景情報について。本当にこれまで、中国国外ではほとんど知られていなかったことなので、がんばってメモした。

・1950年代には野生のCGSが出荷されていた。その頃は銅仁市から最大で3500キログラムの出荷があった。

・今は、養殖のみ。銅仁市には野生由来の個体が300頭ほどいる。今後、識別用のタグをすべてに入れる。これで少なくとも、野生個体がレストランに卸されるのは防げる。

・野生の個体が捕獲されたと分かったら、基本的には川に返すルール。しかし、1週間後にはまた密漁されている。いたちごっこ。

・現在銅仁市に111の養殖家がいる。

・2013年4月から、新しい法律により、養殖家は持っているCGSの1%を野生復帰用に提供する義務が出来た。しかし、まだ密漁の恐れから執行されていない。保護区ができれば、執行する。

 といった具合だ。

 印象的だったのは、漁政局の管理所長がヨウスコウカワイルカの例を引いて述べたことだ。

「絶滅したハイジー(ヨウスコウカワイルカ)は、『保護のための保護』になってしまった。地元にメリットが感じられずに理解が得られなかった。CGSについては、地元の利益を守りつつ、保護しなければならない。とはいえ、昨年あたりから、オオサンショウウオの肉の価格が半分以下に暴落している。生産者は理由を知っている。出荷のしすぎだ。野生の保護とは別の話だが」

 ヨウスコウカワイルカは、21世紀になってから絶滅が確認された大型哺乳類として、たぶん最初のものだ。かつては長江にごく普通にいるイルカだったが、2004年に1頭目撃されたのを最後に、大規模な調査でもまったく発見されなくなった。2006年に絶滅宣言が出されている。

 一方、CGSは、野生からはほぼいなくなった。時々、見つかると漁政局に報告されて大騒ぎになるほどだ。しかし、養殖場にはふんだんに残っている。今後、保護区を設けて野生復帰を考える段階まで来ている。そこが大きな違いだ。

 また、地域個体群の違いを見いだしたい魏教授も、こんなふうに述べた。

「我々は、漁政局の協力なしには、残された野生個体も見つけられない。非常に感謝している。また、養殖家も、野生由来の個体や養殖個体のストックを維持することで、保護に貢献している。新しい半自然型の繁殖も望ましい。これまでは、ホルモンを使って繁殖させていたので、自然に繁殖できるなら素晴らしい」

  そうだったのか! どうも繁殖行動について無頓着な施設での繁殖を成功させるためには、ホルモンが必要だったのか。と書きつつ、どういうホルモンなのかよくわからなかったのだが。なにしろ、どちらかというと保全側に立つ魏教授が、これまで野生のCGSを減らしてきたと思われる捕獲圧の原因のひとつと目される養殖場を「保護に貢献」と位置づけるのが面白かった。このあたり、オトナの世界である、というのはもちろんなのだが、皮肉なことに野生個体が本当にいなくなった現状では、「保護に貢献」しているのも間違いない。

 要人の発表や発言が一通り終わって、質疑応答の時間になると、聴衆席から次々と質問が飛んだ。主に学生さんたちである。

「研究会を傍聴して、オオサンショウウオに興味を持ちました。でも大学生は、ボランティア活動しようにも、カネがない。もっと学生にサポートを!」

「いや、これからはコンサベーションがキャリアになる時代だ。情熱ある学生が、自然保護の道に入っていくべき」

「こんなふうに先生や、高いレベルの人達に意見できるのは初めて。CGSについては知らなかった。家族や友達に伝えるところから始めたい。しかし、学生はお金がないんですよお。何とかしてください」

 なにか、具体的な事情は知らないが、学生さんたちの熱意と、苦境が同時に伝わってくるコメントが相次いだ。

 なにはともあれ、日程を終えた田口さんは言った。

「JGS(日本のオオサンショウウオ)で培った、野生の繁殖生態や、飼育・繁殖のノウハウなどこれからも、多くの伝えるべきことがありますね。日本での保全活動や調査研究、飼育下繁殖の技術が世界でも十分に通じるという可能性を感じました。それと、ベッキーたち、ロンドン動物園のスタッフは、技術面だけでなくて、オオサンショウウオを文化にする、というのも大事な点だと思っているみたいです。キャラクター化してみたり、日本的なことをやっていますね」

 オオサンショウウオという巨大な両生類をめぐって、少し情報を深く掘ってみると、すぐに話題は世界レベル・世界史レベルになる。CGS、チュウゴクオオサンショウウオは、現在進行形の大きなトピックであり、田口さんらハンザキ研の関係者はこれからも、なにかとあてにされていくに違いない。

=おわり=

次回は新企画“パリ第5大学・フランス国立衛生医学研究所 堀川大樹”に続く・・・

◆  オオサンショウウオ  ◆

動画のURL: https://youtu.be/h-93zUrvML4 

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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽  憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・

森のなかえ

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