生態がほとんどわかっていなかったオオサンショウウオ
驚くべきは国の特別天然記念物でありながら、その生態は謎だらけ
勤務する水族館でよく聞かれた素朴な疑問に答えようと研究をはじめた
子供たちに答えようと、ついには「日本ハンザキ研究所」を作ってしまった栃本武良
【この企画はWebナショジオ_“日本のエキスプローラ”/研究室にいって来た”を基調に編纂】
(文=川端裕人/写真=的野弘路、堀信行 & イラスト・史料編纂=涯 如水)
◇◆ 番外編3 チュウゴクオオサンショウウオの保護に日本の技術を活かす =1/2= ◆◇
2014年の2月、日本ハンザキ研究所の研究員、田口勇輝さんと一緒に、中国貴州省銅仁市に渡り、チュウゴクオオサンショウウオ(CGS)の調査に加わった。CGSとかJGS(日本のオオサンショウオ)というのは、オオサンショウウオ関係者のあいだで通じる略称だ。
野生のものがほとんど見つからなくなったCGSを見るためには、養殖場を訪ねなければならない。そのためには監督する漁政局の許可を得なければならず、やや面倒があったもののやっと目的の生き物たちにたどり着くことができたのだった。
ターゲットは、養殖場の中でも野生由来と分かっているものだ。動物園で管理されているものなら「創設個体」と呼ぶだろう。養殖場でも、野生から来たものは、出荷してはいけないことになっているので、出荷できる「第三世代」(孫の代)を作り出すための創設個体の扱いを受けている。
最初の養殖場には、対象の個体が3頭いた。最大でも70センチ台くらいで、比較的若いものと思われた。
田口さんがまず前に出て、オオサンショウウオの扱いを実演した。頭から首のあたりに手をあてると不思議と動きを止める。これはなにか絶妙なコツがあるらしい。ほかの人がやるとクネクネと回転してしまうのだ。
そして、まずは観察!
田口さんと一緒に、ぼくははじめてCGSをじっくりとながめることができた。
「JGS、日本のオオサンショウオとの違いって分かります?」と田口さん。
ここは、素直に、分からない、だ。
なんとなく違う雰囲気がするのは事実なのだが、これくらいのサイズなら日本でも野生で普通に見るし、細かい点はやはり言葉にするのが難しいのである。
「まず、日本のと比べて頭が扁平です。でも、頭頂部は膨れていますよね。なので、口がちょっとカモノハシっぽく見えますよね。あと、目ですね。JGSに比べて、CGSの目は、少し出っ張っているかんじしません?」
その通り! 頭部が違うから、体のプロポーションも違って見える。また、目も、小さいので見逃しがちだが、よくよくみるとギョロっとしているのである。指摘されて、はじめて言葉にできる。
さらに、体のあちこちにできている小さなイボイボが、JGSでは単純な半球のような形なのに、CGSではそれが割れて2段になっているという本当に細かい部分も違う。また、腹側に沿って走る、魚類の側線を思わせる模様が、JGSよりもくっきり見えるという、さらに微妙な違いもあった。
オオサンショウウオを見ても、普通はわざわざイボの形や「側線」に注目したりしない。最初にこの違いに気づいた人は、印象の違いをきちんと言語化しようと、とても注意深く観察したのだろう。
「なんか、健康状態、そんなによくないですねぇ」と田口さん。「口の中が充血しているでしょう。これは、なにかの感染症かも。頭の先にカビがついていたり、口の周りが白化しているのもいるし……」
◆ チュウゴクオオサンショウウオ ◆
動画のURL: https://youtu.be/jE8Sh4Z-bBo
日本の飼育状況から言うと、あまりよい環境ではないのかもしれない。だからこそ、田口さんが呼ばれたということでもある。
さて、野生由来のCGSには、たくさんの調査項目がある。
まず、魏教授の大学院生たちは、巻き尺や電子ノギスを使って様々な部位を測定した。魏教授は分類学が専門で、形態的な違いから地域個体群を識別できないかと考えている。
一方、ロンドン動物園から指示を受けているベッキーは、組織採集用の綿棒で口の中や、皮膚を何度か拭き取って、サンプルを採った。
そして、われらが田口さんは、左前肢のすぐ後ろ、肩のあたりに注射器を突き刺して、識別用のタグを体内に打ち込んだ。注射跡には水がつくと固まる医療用の瞬間接着剤を垂らして、傷口をふさぐ。日本のフィールドで新たな野生個体を見つけるたびにしているのと同じ方法だ(日本では、当然、文化庁の許可を得ている。念のため)。
田口さんがやると、一連の作業が流れるように終わる。しかし、魏教授の学生さんや、漁政局の人が試しても、体をくねらせてじっとしていてくれない。押さえる場所や、力加減の按配にコツがあるようで、田口さんは丁寧に教えていた。今後、魏教授たち研究者も、養殖場の人も、漁政局も、同じことをしなければならなくなる可能性がある。
野生の個体がほぼいない以上、飼育されているものを仮想の野生個体群とせざるをえない。野生の遺伝子プールと見立てて、その多様性を保全する発想だ。また、銅仁市では、梵浄山自然保護区に繁殖施設、保護施設を作る計画があるので、将来的に野生由来のものはそちらに移すこともありえる。オオサンショウウオは、それだけ長寿の生き物だ。
この日は、もうひとつ養殖場をまわり、作業をするうちに日が暮れた。2つ目の養殖場は、棚田の中にあり、まわりには菜の花が咲いていた。春が来た! という雰囲気だった。しかし、周囲には雪がまだ積もっており、冬が去っていないことも見てとれた。
夜はかなり冷えた。いや、かなり、どころか、とんでもなく寒かった。宿全体が、である。
この付近の家屋は、今も練炭を使うことが多いせいなのか、一酸化炭素中毒を恐れて家屋の窓を開け放つ習慣があるようだ。ホテルも廊下のすべての窓が開いていた。さすがに部屋の窓は閉めたけれど、とてもシャワーを浴びる体感温度ではなかった。金属ボディのパソコンも冷たくなり、わかしたお湯をコップに入れてパームレストに置いて温めてから使った。
なおシャワーはほとんど水みたいだったそうだ。自分で使っていないのになぜ知っているかというと、田口さんが律儀に浴びて、風邪を引きそうになったからである。
・・・・・・明日に続く・・・
◆ 体長などの計測 ◆
動画のURL: https://youtu.be/pBjGMPbcijA
・・・・・・・・・・☆・・・・・・・・・・・
=上記本文中、変色文字(下線付き)のクリックにてウイキペディア解説表示=
・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・
前節へ移行 : https://blog.goo.ne.jp/bothukemon/e/3ffd6886ccd66ea8c6bb5192a928ee70
後節へ移行 : http://blog.goo.ne.jp/xxxx/147/xx
----------下記の姉妹ブログ 一度 ご訪問下さい--------------
【壺公夢想;如水総覧】 :http://thubokou.wordpress.com
【浪漫孤鴻;時事自講】 :http://plaza.rakuten.co.jp/bogoda5445/
【疑心暗鬼;如水創作】 :http://bogoda.jugem.jp/
下線色違いの文字をクリックにて詳細説明が表示されます=ウィキペディア=に移行
================================================
・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
森のなかえ
================================================