生態がほとんどわかっていなかったオオサンショウウオ
驚くべきは国の特別天然記念物でありながら、その生態は謎だらけ
勤務する水族館でよく聞かれた素朴な疑問に答えようと研究をはじめた
子供たちに答えようと、ついには「日本ハンザキ研究所」を作ってしまった栃本武良
【この企画はWebナショジオ_“日本のエキスプローラ”/研究室にいって来た”を基調に編纂】
(文=川端裕人/写真=的野弘路、堀信行 & イラスト・史料編纂=涯 如水)
◇◆ 第5回 オオサンショウウオの未来を守れ =3/3=
日本のオオサンショウウオで130センチというと、100年を超える年齢を想像するわけだが……。つまり、雑種の成長が異様に速いのか、もっと前から中国産が輸入され何かの拍子に川に放流されていたのか、どちらかというわけだ。 謎は多い。
様々な謎や懸念がありつつも、最後にオオサンショウウオの魅力について。
「清流のある山奥に棲んでいて、非常に長寿で……」と人に説明したところ、「指輪物語のエルフ?」と言われたことがある。
これはちょっと特殊な反応だが、ぼくが自分で撮ったオオサンショウウオの写真を見せると、身の回りの反応はすこぶるよい。
3000万年前の化石でもほとんど変わっていない太古からのサバイバーとして格好良い! と言う人もいれば、女性の中には、かわいい! とのたまう人もいる。
ぼく自身の感覚としても、格好良いも、かわいい! も理解できる。
特にかわいい! については、小さな目はとぼけていて味があるし(マクロレンズで撮っても、ライトを当てた時点で虹彩がきゅっと閉まってしまうので、雰囲気が失せてしまうのが残念!)、前脚4本、後脚5本の指の裏は、肉球のごときものがあり、これが人間の赤ちゃんかと思うほど、プニプニとしていて、まさにかわいい!
栃本さんはこんな昔話を聞かせてくれた。
「朝日新聞の夕刊一面に動物の写真を見せるコーナーがあって、東京本社から水中撮影隊が来たんです。それで、オオサンショウウオが真冬に餌を食べてる写真を撮って、大喜びで帰ったんですよ。そうしたらデスクがね、晩飯食う時間帯に見る夕刊にそんな写真は駄目だって。気持ち悪い動物だって思われていたんだね」
それが20年か30年前のことだそうだが、最近になって変わってきたかもしれないという。
栃本さんが、ハンザキ研究所で行っている観察会は毎回、満員状態だ。面白いのはカップルでは女性主導の場合が多く、親子連れだとまず大人が夢中になる。地元の人たちも、町おこしの一貫としてオオサンショウウオグッズを作り、巨大な「ハンザキ抱き枕」がヒット作になった。
というわけで、オオサンショウウオの魅力は徐々に浸透し、多くの人に認識されつつあり、この連載もひょっとするとそれに寄与することになると思う。
実際、日本の川の最大の生き物であり、かくも魅力的であり、法律上も守るべし、ということになっているわけで、そのまま、生態系の頂点にいる「傘の種」(アンブレラ・スピーシー)=「川の守り神」として手厚く保護されればいいと素朴に思う。
オオサンショウウオが繁殖し、次々と新しい世代が育ってくる川は、健全な川だ。
次回は“番外編1 中国でオオサンショウウオは「高級魚」”に続く・・・・
■□参考資料: オオサンショウウオの現在 (7/7) □■
豊栄生息地の特徴
当生息地の河川環境は、コンクリート護岸率が高く、多数の堰堤による河川の分断化が進み、また河床に泥の堆積が見られるなど、オオサンショウウオの生息環境としては良い状態ではない。また、上流部の向谷では、当歳幼生が多く発見されてはいるが、その下流の調査区では幼生、幼体、亜成体が見られず、個体群も全長の大きいものが多く、老齢化が進んでいる。
椋梨川中流部の豊栄町乃美や安宿地域では現在も個体の生息が確認できるが、沼田川水系の福富町や高屋町や河内町の川では、過去に生息していたとの情報があるが、現在は確かな生息情報はない。また、隣接する東広島市内の黒瀬川水系においても同様であり、豊栄のオオサンショウウオは、東広島市地域で消滅していったオオサンショウウオの最後に残った個体群と言える。
豊栄地域に生息するオオサンショウウオ個体群の研究は、オオサンショウウオの消滅の原因に関する知見をもたらすことが期待され、また、これから取り組む生息地の回復の実践は全国の里山地域のオオサンショウウオの保全モデルになるであろう。
豊栄生息地の個体群調査の詳細については後章に譲る。
保全の考え方 / 知ることと譲ること
オオサンショウウオは里山で人と共存してきた生きものであり、これからも共存していくべき生きものである。現在オオサンショウウオが減少、消滅している原因を知ることにより、原因を取り除き修復にあたることにより保全が進む。まずは、調査により現状を把握することから始めよう。減少の原因や修復の方法を「知ること」が重要である。
次に必要なのは、「譲ること」である。すべての生きものは、人間と利害が対立することが多い。そのような時に、すべて人間の都合の良いようにすれば、多くの生きものは消滅するし、少し譲ると共存できることも多い。
広島市安佐動物公園は、40 年間にわたるオオサンショウウオの保全研究を通じて、「共存の道は、知ることと譲ること」という言葉を見つけ出した。
アンブレラ効果
生態的に上位にある種を保全することによって、生態的に下位にある種も保全されることをアンブレラ(傘)効果という。安佐動物公園は、広島県の絶滅危惧種ダルマガエルの域内域外保全に取り組んでいる。飼育下で繁殖させたオタマジャクシを世羅町の水田に放し、地域の人と共に定着を見守っている。
2005 年から放流を始めて、2008 年に放したカエルが繁殖をはじめ、2012 年には放流田のダルマガエルが1500 匹を超えた31)。この事業のリーダーである地域住民の井藤文男氏は、「ダルマガエルを保護したら、トノサマガエルやらコオイムシやらトンボが多くなって、農薬がなくてもイネが育つようになった」と言っている。ダルマガエルを保護することにより環境が良くなって、他の生きものも豊かになったというのである。
なんという示唆に富んだ言葉であろうか。同様に、オオサンショウウオを保護することによって、共に暮らす生物も豊かにしたいものである。
.-.-.- オオサンショウウオのあくび -.-.-.
動画のURL: https://youtu.be/uUpH7I4uxl0
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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
森のなかえ
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