生態がほとんどわかっていなかったオオサンショウウオ
驚くべきは国の特別天然記念物でありながら、その生態は謎だらけ
勤務する水族館でよく聞かれた素朴な疑問に答えようと研究をはじめた
子供たちに答えようと、ついには「日本ハンザキ研究所」を作ってしまった栃本武良
【この企画はWebナショジオ_“日本のエキスプローラ”/研究室にいって来た”を基調に編纂】
(文=川端裕人/写真=的野弘路、堀信行 & イラスト・史料編纂=涯 如水)
◇◆ 第4回 「謎の首切り死体事件」の犯人は? =1/3=
栃本さんは、自分のことをまるで笑い飛ばすように言う。
「サッカーじゃないですけど、ぼくはロスタイムを走ってるとこですから。いつホイッスルが鳴って、コロっといってもおかしくない。でも、こんなすばらしい環境を自分1代で終わらせたらもったいない。子どもたちへの環境教育の場が続いていってほしい。それで、ぼくをバックアップしてくれる人達や、それから地域の人達も──過疎化の激しい地域ですから、村興しに何とかしなきゃいけないってことで、NPO法人として組織化しようということになって、平成20年(2008年)の8月に県から認証をもらったんですね」
オオサンショウウオの研究は4世代、5世代の研究でやっと一通りのことが分かると考える栃本さんにとって、世代交代を意識するのは当然のことだろう。ましてや、「このすばらしい環境」と言われて、素直に納得してしまうだけの本当に素晴らしい自然環境であり、誰もがうらやむ「城」なのだ。さらに、環境教育や村興しになるというなら、「継続」の意味はさらに高まる。
実はハンザキ研究所には、所長である栃本さん以外に、フルタイムの職員はいない。研究員である田口さんも、別に仕事を持ちつつ、休日の夜などに調査を続けている。NPO法人としての理事会には、田口さんよりも上の世代の研究者に副理事長として入ってもらう。世代交代への準備は盤石のようだ。
その上で、話を聞いていると、研究を始めた初代である栃本さんと、田口さんのような年少の研究者との間に、ある種のギャップが感じられておもしろい。
しいていえば、博物学者・栃本さんと、サイエンティスト・田口さん、といったふうか。
栃本さんは、常にひとつひとつの「観察」の重視を口にする(田口さんが、観察を軽視しているわけではない。念のため)。
例えば、オス同士の闘争で、首をちぎられて死んでしまう事例についても、最初は「謎の首切り死体事件」という「一観察」だったそうだ。
「川で調査をしていたら、首を噛みきられて死んでいる死体が転がっていたわけですよ。誰がこんなことするんだ、とまず人間を疑いましたね。そうしたら水族館の水槽でもそういうことが起こった。スパッと切れてるんで、ナイフでやられたんかと思ってガラスの向こう側の水槽に展示替えしたんです。それでもまた同じことが起きて。よくよく考えると、川で死体を拾うのはほとんど9月。要するに繁殖期ですよ。それも、オスばっかり死んでると。これはオス同士のバトルがあるんかなと」
・・・・・・明日に続く・・・
■□参考資料: オオサンショウウオの現在 (2/7) □■
謎多く変わり者の両生類
オオサンショウウオは、両生類としては変わり者である。一般に、両生類はカエルのオタマジャクシのように小さいときは水中で暮らし、大きくなれば変態をして陸上で暮らす生きもので、だから両生類と呼ばれる。ところがオオサンショウウオは、幼生の鰓がなくなり肺呼吸をする幼体へと変態した後も、一生を水中で暮らす極めて変わった両生類なのである。
それだけではなくオオサンショウウオは謎だらけの生きものである。成熟年齢や寿命もよく分からないが、性別も外見からは分からない。総排出口の周辺が繁殖期に膨らんだものは雄であるが、膨らんでないものは雄か雌か分からない。寿命は100 年くらいと言われるが、誰も一匹のオオサンショウウオが誕生し、寿命を終えて死ぬまでを確かめた人がいない。
岡山県で飼育されていたオオサンショウウオが116 歳まで生きたという記述があるが6)、飼育記録をともなわないため、正式な記録にはなっていない。確実な記録としては、シーボルトが持ち帰り、アムステルダム動物園で死亡した、飼育期間50 年10 か月である)。しかし、国内には50 年以上の非公式な飼育記録は多くあり、オオサンショウウオは、多くの専門家が100 歳くらいまでは生きるだろうと思っている。
何歳で大人になるのか、これも全く分からないことであったが、安佐動物公園の研究で、成熟年齢が分かってきた。安佐動物公園生まれの「イガグリ」というおかしな名前のオオサンショウウオが、1998 年に産卵したのだ。17 歳9 か月であった)。
その後、次々と飼育下で産卵に参加する個体が現れ、雄、雌ともに、飼育下では16 歳から17 歳で成熟することが分かった。16 歳から17 歳で大人になり、100 歳くらいまで生きる。なんとオオサンショウウオの一生は人の一生と似ていることか。1 匹1 匹のオオサンショウウオがもつ命の重みに驚かされる。自然の川での成体の成長は1 年間で1 ㎝未満のものが多いという)。川で70 ㎝のオオサンショウウオを見かけたら、おそらく50 年以上は生きてきたのであろう。
オオサンショウウオのくらし / 里山の生きもの
オオサンショウウオは、中国地方では、山中の渓流には少なく、むしろ人里の川に暮らす里山の生きものである。人家のそばを流れる川に生息し、人間が築いた石積み護岸の穴や川岸を強化するために植えた竹林土手の水に洗われてできた深い穴に住み着いている。オオサンショウウオは人間が作ったこれらの環境をうまく利用して、人と共存してきた動物と言える。
一日のくらし
オオサンショウウオは基本的に夜行性である。日没から30 分後には、巣穴を出て川の中へと現れる。川底に四肢を踏ん張り、じっと餌を待ち伏せする。口の横を魚が通り過ぎる時、突然口を開け、水とともに魚を捕えて飲み込む。その俊敏な動きは、普段ののっそりとした動きとは全く違っている。食性調査をすると、時にはノネズミ、モグラ、ヘビなどの陸生動物が食べられていることがある。水面を渡るときに捕食されたもので、オオサンショウウオは動くものは何でも食べる。
しかし、ヒトはメニューには入っていない。オオサンショウウオが近寄ってきても、じっとしていれば決して噛みつくことはない。オオサンショウウオに噛まれるのは、捕まえていじめている時と、子育て中の巣穴に手を入れた時だけである。夜通し狩りをしたオオサンショウウオは夜明け前には巣に帰る。一晩に一匹の魚にありつけたらいい方で、省エネ型の細々とした暮らしである。
・・・・・・明日に続く
.-.-.- 滝つぼのオオサンショウウオ[HD] -.-.-.
: https://youtu.be/YxdO_1APSCY
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