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Channel: 【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》
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めくるめく知のフロンティア・学究達 =135= / 栃本武良(11/mn)

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生態がほとんどわかっていなかったオオサンショウウオ

驚くべきは国の特別天然記念物でありながら、その生態は謎だらけ

勤務する水族館でよく聞かれた素朴な疑問に答えようと研究をはじめた

  子供たちに答えようと、ついには「日本ハンザキ研究所」を作ってしまった栃本武良

【この企画はWebナショジオ_“日本のエキスプローラ”/研究室にいって来た”を基調に編纂】

(文=川端裕人/写真=的野弘路、堀信行 & イラスト・史料編纂=涯 如水)

◇◆ 第4回 「謎の首切り死体事件」の犯人は? =2/3=

 よくよく考えると、川で死体を拾うのはほとんど9月。要するに繁殖期ですよ。それも、オスばっかり死んでると。これはオス同士のバトルがあるんかなと・・・・・・・

 実際にオス同士の闘争は観察されるようになり、今では「謎の首切り死体」は巣穴をめぐるオス同士の闘争ということで決着がついている。

 もっとも、「観察」を続けると、それとはまた別のストーリーが見えてくるから油断ならない。

「実は、メスの首切り死体も何個体か出まして、こりゃ、どうしたことかって。よほど間が悪くてやられちゃったのかな、とか思ってるけど、まあ、今は分かんない。こういうのは、次の世代にバトンタッチして、これからいろんな場面を見ながら、こういう理由なんじゃないかと分かってくればいいわけですよ。うん」

 一方、田口さんのアプローチは、少々違う部分がある。たとえば、栃本さんが紹介してくれた、田口さんの研究。

「彼が、大学院生のときに、1週間徹夜で調査をしたわけですよ。夕方の6時から朝の6時まで、2時間ごとに区間を切って同じ場所を歩いて観察。時間と体力とあるわけで、そんなことできるんだよ。ぼくがやったら、死んじゃう」

 時間と体力があったのはまぎれもなく事実なのだが、ぼくはむしろ、オオサンショウウオの研究が、博物学的な記述の段階から、今風の「フィールドの生物学」へと移りつつあると感じた。というのも、田口さんの研究は、条件を揃えて、数を揃えて、ある程度、統計性がでるところに落とし込まれているからだ。

 田口さんに語ってもらうと、こんなふう。

「昨晩のように1頭1頭捕獲して計測して、というのとは違うタイプの調査です。みつけた個体を捕まえずに(つまり個体の行動に影響を与えないようにして)、棒の先についたセンサーでマイクロチップをひとつひとつ読んでいったんです。春と秋に1週間ずつ、14日観察したんですね。それでわかった面白いことっていうのは、オオサンショウウオが毎日毎日勤勉に狩りをしているわけでもないということなんですね。平均すると3日に1度くらいしか出てこない。かなり省エネでやってるみたいなんです。あと、個体にも個性があって──」

・・・・・・明日に続く・・・

■□参考資料: オオサンショウウオの現在 (3/7) □■

冬も活動
 意外なのは冬のオオサンショウウオである。変温動物であるカエルやイモリが冬眠するのに、同じ両生類であるオオサンショウウオは冬眠しないことが分かってきた。オオサンショウウオは冬でも餌を食べるし、夜の川で活動している。もっとも凍りつくような寒い日は、深みや落ち葉だまりに潜り込み、身を縮めてじっとしている。ある時、こちこちになったオオサンショウウオを捕まえて計測のために雪の上に置くと、次第に動き始め、数分後にはその力強い動きを止めることができなかった。

生息巣穴と産卵巣穴
 一般に、両生類は巣穴に定住することがない生きものであるが、オオサンショウウオは例外である。普段から川岸の石垣の穴や川土手の草木の根元にできる穴に住み着き、緩やかな定住性をもっている。普段住み着き過ごす穴を安佐動物公園では生息巣穴と呼んでいる。基本的に1 頭ずつ単独で生息しているが、生息巣穴の周りにその個体のなわばりがあるという報告はなく、時には、特に冬季には同じ巣穴で複数の個体が一緒に住んでいることがある。生息巣穴は、身を隠すことさえできればよく、他に特別な条件はない。

 一方、産卵巣穴は、繁殖のためだけに使われる特別な巣穴で、ここで、産卵、孵化、初期幼生の生育が行われる。産卵巣穴の形状は特殊で、水深20 ㎝くらいの浅瀬の川岸にあることが多く、入口が一つで小さく、1mくらいの長さのトンネルが続き、その奥が広間になっていて、奥からわずかな湧水が浸み出している。岩穴のこともあるが、土穴の方が多い。

 産卵巣穴は、地域に固有の特別な巣穴で、毎年、その付近に住むオオサンショウウオが産卵のために集まってくる。この集まってくる行動を産卵期移動と言い、8 月中下旬に、数百mの下流から上流の産卵場へと移動するのが一般的である。昭和初期の大両生類学者である田子勝弥が産卵期移動について述べているが、だれも学術的に確認したものがなく、安佐動物公園が北広島町志路原の大口川で1985 年8 月に調査し、1 日平均50mもの遡上を報告したのが最初である。その後、上田や田口が産卵期移動を報告している。

不思議な繁殖行動
 産卵巣穴には、特別大きな雄が住み着き、巣穴を守ることが知られており、安佐動物公園は、これを「ヌシ」と呼んでいる。ヌシは7 月下旬から8 月上旬に産卵巣穴に現れ、巣穴を占有し始める。8 月下旬になると十数頭からなる繁殖群が巣穴の周りに集合し、9 月1 日を中心とした1 週間で産卵する。1986 年、安佐動物公園は志路原の松歳川の産卵巣穴「ヒミツのイヤ」で連続観察を行い、ヌシが占有しているにもかかわらず、産卵時にメスの他に複数の雄が巣穴に出入りするのを観察し、オオサンショウウオの産卵が群れ産卵であることを報告した。

   しかし、この説は、「遺伝子は利己的である」という生物学の大原則と矛盾するため、当初は受け入れられなかったが、現在は、オオサンショウウオは群れで産卵する動物であるという認識が一般的になってきている。

 著者らは、ヌシが産卵巣穴を占有しているのに、産卵の時だけ他の雄が入巣できるという不思議な現象を解明するために、2005 年に、松歳川の人工巣穴において産卵行動を連続撮影し解析した。予測通り、ヌシは産卵雌の後を追い侵入してくる雄に対して攻撃することはなく、ヌシと雌とその他の雄たちが一体となって回りながら産卵するのを確認することができた。また、産卵した雌が出ていくと、ヌシの攻撃性が徐々に復活し、最後には激しい追い出し行動となることも観察した。これらのことから、産卵雌は、ヌシの攻撃性を抑制する化学物質を放出しながら入巣すると考察した。

・・・・・・明日に続く

.-.-.- オオサンショウウオ25年ぶり里帰り/日光 -.-.-.

動画のURL: https://youtu.be/Xve-zKsJxl0

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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽  憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・

森のなかえ

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