生態がほとんどわかっていなかったオオサンショウウオ
驚くべきは国の特別天然記念物でありながら、その生態は謎だらけ
勤務する水族館でよく聞かれた素朴な疑問に答えようと研究をはじめた
子供たちに答えようと、ついには「日本ハンザキ研究所」を作ってしまった栃本武良
【この企画はWebナショジオ_“日本のエキスプローラ”/研究室にいって来た”を基調に編纂】
(文=川端裕人/写真=的野弘路、堀信行 & イラスト・史料編纂=涯 如水)
◇◆ 栃本武良: 第3回 オオサンショウウオの知られざる生態 =3/3=
80センチメートルから大きくならない? おまけに、縮むやつがいる??
じゃあ、1メートルを超えるような個体は何が違うんだろう。「運が違うんじゃないですかね」と栃本さんはあっさり言った。
ここで隣で話を聞いていた研究員の田口勇輝さんがツッコミを入れる。「いや、実力もあるんとちがいますか。いい巣穴を押さえて、いい狩り場に出て──」
ひとしきり、運か実力かという楽しい議論をした後で、栃本さんの総括。
「一番大きい要因はやっぱり、鼻先に餌が来てくれなきゃいかんわけだし。ええっと、例えば、全長40センチだったやつが、3カ月後に同じマイクロチップの反応が出て全長80センチだったと。何だと思います?」
何年も成長しないと思えば、40センチメートルの個体がわずか3ヵ月で倍の全長に成長する? ちょっと考えにくいが、実際に観察された実話だという。
「胃袋のあたりからマイクロチップの反応が出たわけです。本当は左肩に埋め込んでいるから、そんなとこから反応があるわけない。つまり、そいつ、40センチもある大きな餌にありつけたというのは、運がいいわね。そういうやつが、グーッと伸びるんじゃないかな」
なんと、オオサンショウウオの共食いの事例なのだが、長い間、調査をしているとこういうことに出会う。
ちなみに、今のところ報告されている最高齢のオオサンショウウオは、岡山で116歳で死んだものだそうだ。ところが、その年齢の信頼性はいまひとつだという。かつて食用にしていた地域で、川から獲ってきたものを池に住まわせて養う習慣があった。40センチメートルでとってきてそれから何年間、池にいたという計算だそうなのだが、まず最初の時点の年齢もはっきりしていないし、途中で別の個体と入れ替わっていたとしても分からない。
これまでのところで、もっとも信頼できる最長の飼育記録は、実は日本ではなく海外だそうだ。
「シーボルトがオランダに持っていったやつですね。あれはアムステルダムの動物園で飼育下で51年です。向こうにはオオサンショウウオがいないから、入れ替わりようがないし。おまけに面白いのは、最初は2頭船に乗せていて、航海の途中で、でかいほうが小さいほうをかみ殺したと。そのかみ殺された、傷のある標本を、この前、彼が見てきたんです──」
彼というのは、研究員の田口さんだ。
「ちょっと丸まってる標本なんでね、測りにくいんですが、70センチ以上はあったんですよ。そいつをかみ殺したもっと大きいやつが、その後、51年生きたわけです」と田口さん。
栃本さんがふたたび話を引き取った。
「そういうことを考えると、100年以上は軽く生きるんだろうというふうにはやはり思ってるんだけど、ホントのところはねぇ──」
栃本さんは、本当に遠くはるかかなたの時間のはてを見るような目つきで言うのだった。
次回“「謎の首切り死体事件」の犯人は?”につづく
■□参考資料: オオサンショウウオの現在 (1/7) □■
= 桑原 一司 : 日本オオサンショウウオの会 会長 (広島市安佐動物公園 前副園長) =
オオサンショウウオとは / 特別天然記念物
オオサンショウウオは、日本国の特別天然記念物である。国の定める天然記念物とは、日本の自然を記念するものとして学術上文化上貴重な動植物や地質鉱物ならびにその地域を対象に定めたもので、特に重要なものを特別天然記念物としている。オオサンショウウオは、日本の固有種であり、世界最大の両生類、太古の原始両生類を彷彿とさせる「生きた化石」、一生を水中で過ごす両生類などの学術上重要な特徴をもつ両生類で、日本が世界に誇る希少動物である。1952 年に、地域を定めず個体そのものを特別天然記念物に定め、国宝に当たる扱いとして文化財保護法により厳重に保護している。
世界に3 種
オオサンショウウオ科の両生類は、世界に3 種生息している。オオサンショウウオ Andrias japonicus、 チュウゴクオオサンショウウオAndrias davidianus、アメリカオオサンショウウオCryptobranchus alleganiensisである。オオサンショウウオは、日本のみに生息している固有種で、1935 年にテムミンクにより記載された。チュウゴクオオサンショウウオは中華人民共和国の長江、黄河流域に生息する種で、1871 年にブランシャールにより記載された)。
日本のオオサンショウウオと類似しているが、眼がとび出ている、地色より斑紋の方が薄い、尾が長い、頭が扁平などの特徴をもつ。日本のオオサンショウウオの亜種とされたこともあるが、現在は同じAndrias 属の独立した種として扱われている。アメリカオオサンショウウオは、アメリカ合衆国のミズリー川流域に生息する種で、ヘルベンダーとオザークヘルベンダーの2 亜種がある。アメリカオオサンショウウオは、最大全長70 ㎝とやや小型で、成熟後も一対の鰓孔が開口しているなど、他の2 種とは異なる属のオオサンショウウオである。
世界最大級の両生類
カエルやイモリの仲間である両生類は、世界に約5800 種が知られるが、現存する両生類のほとんどは手のひらに載る大きさである。その中で、日本のオオサンショウウオは全長150 ㎝、体重30 ㎏にもなる、飛び抜けて大きい世界最大級の両生類である。
標本が現存する最大のオオサンショウは、広島市安佐動物公園の動物科学館に展示されている全長150.5 ㎝、体重27.6 ㎏の個体で、1993 年に広島県高田郡高宮町川根の江の川支流の田草川で保護され、2002 年に死亡した個体で、保護時にすでに全長が146 ㎝あった2)。自然の川に暮らすオオサンショウウオ成体の一般的な大きさは40 ㎝~90 ㎝3),4)、120 ㎝を超える個体はごく稀である。
生きた化石
3 億年も前の石炭紀と呼ばれる時代には4mもある両生類が生息していたことが分かっているが、現在の地球上にはこのように大きい両生類はいない。1726 年、アルプスの山中から巨大な両生類の化石が発見された。それは、最初はノアの洪水で死んだ人の化石だと言われたが、1811 年にフランスの動物学者キュビエが3000 万年昔の巨大な両生類の化石であることをつきとめた。
アンドリアス・ショイツアーと名付けられたその巨大な両生類は、ヨーロッパではすでに死に絶えた過去の動物であった。ところが、来日したシーボルトが、1826 年に伊賀の坂の下においてオオサンショウウオを見出す。弟子に採集させた生きものの中にオオサンショウウオがいたのだ。シーボルトはその重大さに気づき、本国オランダに連れ帰った3)。それはアンドリアス・ショイツアーの生き残りかとも思える巨大両生類の発見であった。現在のオオサンショウウオはショイツアーと骨格の形態がほとんど変わらず、同じAndrias の属名を戴いている。
こうして日本のオオサンショウウオは、「世界最大の両生類・生きた化石」と称され、世界で最も有名な生きものになった。現在、この化石標本の年代は、2300 万年前とされている5)。ヒトは約600 万年の間にサルの祖先からヒトへと進化したが、オオサンショウウオは2300 万年以上もの時間を、形態を変化させずに生き残ってきた生きものである。
.-.-.- 滝つぼのオオサンショウウオ[HD] -.-.-.
動画のURL: https://youtu.be/YxdO_1APSCY
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