人と関わるロボットを作ろうと思ったら、見かけはどれだけ重要だとか
何をもって人を人らしいと認識するのかをまず研究しなくちゃいけないんじゃないか
そう考えて、自分自身を型にとり、自分そっくりのアンドロイドを作ってしまった
ATR石黒浩特別研究室 石黒 浩
【この企画はWebナショジオ_“日本のエキスプローラ”/研究室にいって来た”を基調に編纂】
(文=川端裕人/写真=的野弘路 & イラスト・史料編纂=涯 如水)
◇◆ 石黒 浩 : 第4回 ロボットと類人猿 =1/2= ◆◇
ロボットが、人間らしさを獲得し、まるで映画のように日常生活の中に溶け込んで暮らすようになる社会。
そこまで至るには、100年、あるいはそれ以上かかると、石黒さんは踏んでいる。
そんな時代になると、人間とロボットの関係はどうなるのだろう。アイザック・アジモフではないが、「ロボット3原則」のようなものが普及するのだろうか。
いや、それ以前に、人間とロボットの区別がつかくなくなったら、どうなるのだろう。
石黒さんは、著書で、非常に厳しい意見を述べていた。
・哲学を持たないものは機械である。
・心を探さない人間は機械になってしまう。
実際、「区別できない」となると、結局は「心の問題」に行きついてしまうわけだ。逆に言えば、外から見て心を持っているように見えたら、もう機械ではない、と言ってしまって差し支えない。
「歴史的にそうだったわけですよね。例えば200年とか300年前、手足がなかったら人間社会にその人は受け入れられなかったでしょう。人間社会から、のけ者にされていた。でも、今はそんなことないじゃないですか。身体に障害があっても、間違いなく人間ですよ。疑問の余地などない。人間の定義ってバンバン変わってるわけですよ」
ぼくは正直、身体的な、あるいは知的な障害者が、いかに「人間」として認められてきたという歴史については明るくない。しかし、近代以降、様々なマイノリティの「権利」が段階的に認められてきたのは事実だろう。
それを踏まえて石黒さんは、ここまで言ってしまうわけだ。
「体が機械になろうが、そうじゃなかろうが、肉体でもって人間を定義するっていう時代は、もうすぐになくなると思いますね」と。
まさに、士郎正宗の「攻殻機動隊」の世界!
・・・・・・明日に続く・・・・
■□参考資料: 世界を仰天させたアンドロイド開発者・石黒浩 (3/3) □■
開発を始めたら、ゴールはどんどん遠くなった
大事なことは根本的な問題です。世の中の不思議のひとつ「人間とは何か」です。そのひとつのツールとして、アンドロイド開発がある。工学的に人間と同じものができれば、人間とは何かという説明になる。そして具体的な目標があれば、動きやすくなる。次に何をしないといけないのか、順番が決められるようになる。漠然と「人間とは何か」を知ろうとしても難しいでしょう。そして大きな目標だからこそ、人の興味は続く。目標に向かうことに自分の存在意義はあるのに、簡単な目標で1年後に達成されたら、生きている存在意義がなくなってしまう。だから、高い目標が大切なんです。
アンドロイドの完成には100年かかるでしょう。いや100年後もできていないかもしれない。でも今も毎日、着実に成果が出て、目標に近づいています。そしてアンドロイド研究を始めて面白いと思ったのは、どんどんゴールが遠くなっているということです。開発したアンドロイドロボットも常に進化していますが、その過程でより深い人間に対する知識が僕は得られた。そしてわかってきたのは、人間とはいかに複雑なものかということです。ゴールは遠のいても、逆に到達の難しさを知ることが、科学者・技術者でいられ続けるモチベーションになっている。生きていく原動力にもなっているんです。
逆にいえば、表面的にしか問題にさわっていなければ、何も見えてこないということです。ときどき人間に失望している人がいますね。僕は言いたいんですよ、もっと人を勉強してみてください、と。人間がいかによくできているか。複雑で奥深いか。それが少しでもわかってくれば、人は人間に失望したりはしないですよ。
工学で唯一正当化されるのは、今までにないことをやること
どうしてアンドロイド開発に至ることができたか。僕の場合は、自分の生きる存在価値を見つけるために研究をしようと考えていたことが大きかったと思う。生活するための職業としての研究題と、お金を稼ぐ工学的研究成果と、人間とは何かという人が生きていくうえでの基本問題を、区別せずに考えてきたということ。
◆ ジェミノイドF 起動の様子 ◆
・・・https://youtu.be/4_U0PWn3VIE・・・
研究というのは、さまざまに領域があり、その中で解決しないといけない問題があるわけですが、何のための研究かを突き詰めれば、素材だって機械だって、同じ課題に行き着くんです。それがわかった瞬間に、ジャンルや職業や、そういうものから解き放たれる。僕の研究だって、既存の分野に含まれますよ。でも、自分の中の基本問題や発想まで分野に縛られてしまうことはない。何をやってもいいんですよ。そもそも工学の分野では、歴史はどんどん移り変わっている。まったく同じ研究なんてない。ある程度やってできないのなら、違う分野を作って、また研究し始めればいい。そして、そういう新しい分野を生み出していくには、基本問題、根本問題に立ち返って考えることが大事になる。そのひとつが「人間とは何か」なんです。
ATRや私の大学の研究室では、分野にこだわることなく、僕の研究室の学生と、脳や認知を研究するほかの大学の研究室の学生が一緒に研究しています。中には、途中で分野を変える学生も出てきている。僕は脳や認知は専門ではありませんが、いずれ、工学も脳も認知もわかる研究者が出るでしょう。彼らが新しい分野を作っていくんです。それでいい。新しい研究者がでて、新しい分野が育ち新しい解は生まれるんだから。
アンドロイド開発の苦労ですか? 技術的には山盛りありますよ(笑)。座っているだけで人間らしくするだけでも、大変なこと。人間らしく動かすことは、本当に難しいんです。研究テーマは山ほどあります。だからおそらく僕は、人よりは、うんと働いているでしょうね(笑)。四六時中、いろんな意味で研究について考えています。それこそ子どもを通じても、妻との会話を通じても、学ぶことは多々ある。でも、生活のモチベーションと研究のモチベーションが一緒ですから。それこそ、「こういうときに、人はこう考えるのか」ということの連続で、日々結構面白いです(笑)。
何がいい仕事で、悪い仕事なのか。それは実はわかりません。人を幸せにできるか、褒めてもらえるか、というのも主観的な話でしかない。唯一、工学にとって正当化される方向は、今までにないことをやることだと僕は思う。それは、「人間とは何か」に一歩でも近づくことだから。人類は生き延びて何をしようとしているのか。結局、僕はこういうことだと思っているんです。人間とは何かということを、知ろうとしているのだ、と。
◆ 石黒浩「Who am I ?」/ Seeds Conference 2013 ◆
・・・https://youtu.be/yFKdgZX-tBU・・・
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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
森のなかえ
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