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Channel: 【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》
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めくるめく知のフロンティア・学究達 =086= / 亀井伸孝(03/mn)

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カメルーン南東部のピグミー系狩猟採集民―研究しようと足を踏み入れた

目を奪われ、魅了されたのは、異質な独自の文化を持つ子どもたちの「遊び」だった

大人たちとは異質で豊かで深遠なる楽しい世界に、我知らず深入りしてしまった

愛知県立大学 アフリカ文化人類学 亀井伸孝

【この企画はWebナショジオ_“日本のエキスプローラ”/研究室にいって来た”を基調に編纂】

(文=川端裕人/写真=藤谷清美、(アフリカ=亀井伸孝) & イラスト・史料編纂=涯 如水)

◇◆ 亀井伸孝 : 第2回 遊びたおそう! =1/3= ◆◇

 文化人類学者の亀井伸孝さんが、カメルーンのピグミー系狩猟採集民、バカの調査に「子どもの遊び」を選んだのは、実は「失敗からの出発」だったという。

 研究地とテーマを絞り込む際、当初、狩猟採集民バカの大人の本格的な狩猟採集活動の調査を考えた。そして、実際に日帰りの狩猟に同行もしてはみた。それで、「向いていない」と自覚したのだという。

「ついていきたいと言ったら、オーケイしてくれたんですが、朝早く出発してもう平気で何10キロも歩くんですね。私はものすごく足手まといになってしまったんです。私のためにわざわざゆっくり歩いてくれたり、時々、休ませてくれたり……結局、集落に帰るのが夜遅くになってしまって──」

 これではとても調査研究などできないと途方に暮れていたところ、亀井さんは子どもたちの不思議な行動を目にする。

「大きい子が、小さい子を誘って何かを始めたんです。手近なバナナの葉っぱを細かくちぎって、暖簾みたいなものを作って、それを頭に被り、腰にも巻いて、腰振って踊ったりしてですね。後になって、その地域で信じられている精霊の姿を扮したものだと知ったんですが、とにかく、手近にあるものを使ってチョコチョコっと遊具を作って遊ぶのが面白いなあと思って。普段何してるのかな、と知りたくなっていったんです」

 調べてみると、バカの大人の狩猟採集活動はこれまでに先行研究があるものの、子どもについてはほとんど先行研究がなかった。ならば、自分で研究するしかない!
 そこから、亀井さんの「子どもたちに弟子入り」する生活が始まったのだった。

 前回も紹介した通り、カメルーン南東部の熱帯雨林に住むピグミー系狩猟採集民、バカの子どもたちの遊びは実に豊かに見える。簡単な小屋をつくって暮らしているキャンプから、近くの森の中に入って、「身近なもの」でちゃっちゃっと遊具を作ったり、狩猟など大人の活動のまねごとをしたりして楽しむ。

 集落の子どもたちにとって、亀井さんはたぶん普通の「大人」ではなく、ひとたび森の中に入ると自分たちよりも能力が劣る「みそっかす」でもあったようだ。年齢だけはいっているけど、子どもの遊びが好きで、そのくせ森の中ではなんにもできない、不思議なおっちゃん、だったのだろう。そういう立ち位置はとても楽しいそうだ。

 ちなみに、バカの大人たちは、子どもについてとても放任主義なのだという。大人たちが森に入れば十分な食料を見つけられるから、労働力として期待していないし、勝手に遊んでな、というかんじ。それどころか、親が子に弓矢の使い方を教える、といったふうな、生業活動についての指導のようなものも見たことがないという。子どもは子どもで勝手にやる、というのがバカの流儀らしい。実におおらかである。

 そのせいか、亀井さんが子どもたちにくっついて歩くのも、親たちは特に問題にすることなく受け入れてくれたとか。

・・・・・・明日に続く・・・・

■□ 参考資料: バカ・ピグミー (1/3) □■

「ピグミー」とは

よく誤解されるのだが、アフリカに「ピグミー族」という固有の民族集団がいるわけではない。人類学的な定義では、ピグミー Pygmy という呼び名は、成人男子の平均身長が150cm以下の集団のことを呼ぶ名なのである。その語源は、ギリシャ語の「ひじからこぶしまでの長さ」をあらわす単位だと言われている(もちろん誇張的なたとえだが)。アフリカにもアジアにも、定義上ピグミーにあたる低身長の人々は居住しており、前者はネグリロ、後者はネグリトと呼ばれている。

このようにピグミーとは本来、民族集団として定義されるものではなく、形質的な特徴による呼び名である。しかし実際上は「ピグミー」という呼び名は、熱帯雨林に住み狩猟採集をおこなっている低身長の人々を指す呼び名として使われている。

森林地帯に住んでいる動物は、オープンな場所に住む近縁種に比べて体が小さくなるという傾向がある。それは樹木に引っかかりやすい森林中でスムーズに活動するための適応であると考えられているが、このことはピグミーにもあてはまるのだろう。実際、森の中をピグミーの人々と一緒に歩くと、彼らが何の苦労もなく通過する木々の間を、引っかかりながら進んでいくという、みじめな思いをしなければならない。

アジアのピグミーとアフリカのピグミーは遺伝的に近縁だと考えられたことはあるが、今ではこの説は否定されている。しかし少なくとも、アフリカ熱帯雨林に住むピグミー系集団(下図/Fig-1)の多くは遺伝的に近く、Bahuchet [1993]によると、これらの集団は少なくとも二万年前から、まわりの集団と遺伝的に分岐していたと考えられている。

またアフリカのピグミー系集団には共通して、特徴的な歌と踊り、森の精霊の登場する儀礼、活発な蜂蜜採集といった文化要素がみられる。このような森林への適応形態から、彼らはアフリカ熱帯林の先住民であるとされることが多い。

しかし、少なくとも現在のピグミー系狩猟採集民は、何らかの形で農耕民と関係を結んで生活している。農耕による産物にまったく依存することなしに、熱帯林のなかで生きていけるのかという問題については、さまざまな議論があり、ピグミーたちは農耕民たちと手を携えて熱帯雨林の中へ入ったのではないかと考える研究者もいる[Bailey et al. 1989]。  ・・・・・・明日に続く

◆ Micyingo (Kisoro Hill) Batwa Community - The Singing Wells project ◆

・・・https://youtu.be/gt4_CaZNN2c・・・

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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽  憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・

森のなかえ

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