カメルーン南東部のピグミー系狩猟採集民―研究しようと足を踏み入れた
目を奪われ、魅了されたのは、異質な独自の文化を持つ子どもたちの「遊び」だった
大人たちとは異質で豊かで深遠なる楽しい世界に、我知らず深入りしてしまった
愛知県立大学 アフリカ文化人類学 亀井伸孝
【この企画はWebナショジオ_“日本のエキスプローラ”/研究室にいって来た”を基調に編纂】
(文=川端裕人/写真=藤谷清美、(アフリカ=亀井伸孝) & イラスト・史料編纂=涯 如水)
◇◆ 亀井伸孝 : 第2回 めくるめく遊びの世界 =2/2= ◆◇
最近では政府により定住が推奨されており、狩猟が行いにくい雨季には農耕民の集落の近くに定住しつつも、乾季になると森の中に「消えていく」という。亀井さんも、調査の初期、キリスト教会が作った小さな学校を拠点にしていて、子どもたちが「消える」のを体験したそうだ。
「とはいえ、別に子ども達は消えちゃうわけじゃなくて、森の中で別の活躍の場を持っていたわけですね。そっちはどうなってるんだろうって、とても気になりまして、結局、学校じゃなくて、森の方へ関心が移っていきました」
つてを辿って森の狩猟キャンプに住み込むようになり、そこで、森の子どもたちの、めくるめく遊びの世界に目を奪われることになる。冒頭で描いたのはほんの一部。
亀井さんが自ら目撃し、経験もした遊びは、85種類にもわたり、それらをこんなふうに分類している。
・生業活動にかかわる遊び
男の子は釣りや罠、小動物狩り。女の子は、採集や川をせき止めて魚や甲殻類を捕まえる「かいだし漁」など。これは、大人の真似とはいえ、生業としては「はんぱな活動」であり、成果は期待されていない。ゆえに、遊び、としたほうがしっくりくるという。
・歌・踊り・音にかかわる遊び
歌唱、精霊ごっこ、草笛など。実は「精霊ごっこ」は、亀井さんが子どもの遊びの収集を始めたきっかけになったものだ(後述)。
・身体と動きを楽しむ遊び
とっくみあい、チャンバラ、おにごっこ、川遊び、パンツなげ、等々。ほんと、これは万国共通のようで……。
・衣食住・家事・道具にかかわる遊び
小屋づくり、調理ごっこ、女装、子どもあやし、等々
・その他
サルのまね、ブランコ、手品、学校ごっこ、お絵かき、など。
・ルールの確立したゲーム
マセエ、ソンゴ(それぞれ、伝統的なゲーム)、サッカー。
ぼくの個人的な感覚としては、サッカーの世界的普及度に驚かされる。
このリストを見ただけで、わくわくしません?
今、自分自身の子どもが、どれだけの「種類」の遊びをしているだろうと考えてみて、85種類には届きそうにない気もする。子どもの遊びの多様性の大きさは、社会の経済的な意味での豊かさとは直接関係ないのだろう。いや、むしろ、逆の関係にあるのかもしれないとまで思う
遠く離れたカメルーンの森の子たちの遊びっぷりに思いをはせて、楽しい気分になりつつも、あれこれ考えてしまうのだった。
亀井伸孝(かめい のぶたか)
1971年、神奈川県生まれ。愛知県立大学外国語学部国際関係学科准教授。理学博士。手話通訳士。専門は文化人類学、アフリカ地域研究。1996年からカメルーンにおける狩猟採集民バカの子どもの研究を始め、あわせてアフリカの手話とろう者に関する研究に携わる。著書に『手話でいこう-ろう者の言い分 聴者のホンネ』(ミネルヴァ書房、2004年)、『アフリカのろう者と手話の歴史-A・J・フォスターの「王国」を訪ねて』(明石書店、2006年)、『手話の世界を訪ねよう』(岩波ジュニア新書、2009年)、『森の小さな〈ハンター〉たち-狩猟採集民の子どもの民族誌』(京都大学学術出版会、2010年)など。
次回は“遊びたおそう!”に続く・・・・
■□参考資料: ピグミー (Pygmy) (2/2) □■
社会・文化
最も人類学的研究の進んだピグミーはコンゴ民主共和国のイトゥリの森に住むムブティ族である。ピグミーは他の民族と異なり、10代はじめに身長の成長が鈍化する傾向にあるために成人の身長が低くなる。これらは環境への適応のためであり、小島や密林といった隔絶された環境に応じ人間以外の種の中で独立して進化したものである。ピグミーの祖先が生きた環境はかれらの身体サイズを多世代にわたり小さくし、そして今日、自然淘汰によりその遺伝子が優位性を占めている。
アフリカのピグミーは集団、即興による複雑なポリフォニーが特徴的な声楽によってよく知られている。Simha Aromはピグミー音楽の多音の複雑さは、中世ヨーロッパのアルス・ノヴァのポリフォニーとよく似ていると指摘している。ピグミー音楽に用いられるほとんどの楽器は単純かつ実用的なもので伝統的なノマディック(放浪的)ライフスタイルに似つかわしい。
ピグミー社会は平等主義で有名である(おそらく空想的に描かれたもの)。彼らはよく理想郷と未開社会の両者を包含するものとして空想的に描かれ、彼らが長期にわたり、ピグミー以外の「より近代的な」集団(近隣の村落、農場経営者、材木会社、宣教師、狩り場に侵入するハンター)と関係を持ち続けてきたことを見落としがちである。
コンゴ民主共和国のサンガ (Sangha) 川沿いのウエッソ (Ouesso) とポコラ (Pokola) のちょうど中央付近にあるピグミーの家は、棒きれと葉っぱで建てられており、とても狭く、木製のベッドと棚のような基本的な家具だけがある。熱帯雨林では夜間の冷え込みが厳しいため、内部には囲炉裏が設けられており、トウモロコシやその他の果物を蒸留して酒を造るために使われている。彼らはまた非常に有能な猟師でもある。
言語
ピグミーは農耕民との接触以前は無言語であり、農耕民との接触によって言語を獲得した、あるいは農耕民の中のある被支配階層が狩猟採集生活に適応した結果身体が矮小化した(ので農耕民とピグミーは同一言語を話している)という説が立てられたことがあった。
しかし12万5000年─16万5000年前にコイ=サン語族とピグミーが他の人類集団から分岐したにもかかわらず、前者のみ独自言語を持つという仮説は不自然である。なおピグミー全体に共通する語彙についての研究はないが固有名詞や儀礼の言葉、動植物名にピグミーオリジナルの語彙の存在は確かめられる。かつては存在していたオリジナルな言語が、農耕民との接触によって文法や語彙の多くが消失したと一般には考えられ、かつて存在したオリジナル・ピグミー語は遺伝子からハザ語に近縁であるとの説もある。
◆ Pygmy People Singing and Dancing ◆
・・・https://youtu.be/epKIGQOkm5c・・・
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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
森のなかえ
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