地球に生息するアザラシから、チョウザメ、ウナギ、ワニ、ペンギン
つまり 北極圏―中国深部―マレーシア―フロリダ―南極まで
インディ・ジョーンズばりに世界の極地を飛び回り、兵器“データロガー”で野生動物を狙う
驚くべきデータを次々に発表する / 大型捕食動物の生理生態学者・渡辺佑基
【この企画はWebナショジオ_“日本のエキスプローラ”/バイオロギングで海洋動物の真の姿に迫る”を基調に編纂】
(文/写真=渡辺佑基= & イラスト・史料編纂=涯 如水)
◇◆ ニシオンデンザメと優しいイヌイット =1/3= ◆◇
「あちらに到着したら、君はきっとショックを受けるよ」
オタワ空港の近くにある洒落たステーキ・バーで、ビールのグラスを傾けながらナイジェルは言った。明日の早朝の便で私たちは、カナダ北極圏の町、クライドリバー(Clyde River)に飛ぶ。北極の海に住む不思議な深海ザメ、ニシオンデンザメの調査をするためだ。
「ショックを受ける!?」
私はサーロイン・ステーキをナイフで切りながら、信じられないという顔をした。なるほど私にとって、カナダの北極圏は人生初めての場所だ。けれども私は――自慢でもなんでもないけれど――孤立した観測基地に滞在した経験は豊富にあり、僻地には慣れている。それにノルウェーの北極圏の島、スバールバル諸島にも行ったことがあるから、だいたい北極の雰囲気は想像できる。ショックを受けるようなことは、何もないはずだ。
「まあ、明日になればわかるよ」
ナイジェルはニヤリと笑ってビールを飲み干すと、ウェイターを呼び、もう一杯同じビールを注文した。私も自分のビールを一口飲んでから、明日向かう「クライドリバー」について少し想像を巡らしてみたが、基礎知識がなさ過ぎて、何も浮かんでこなかった。
翌朝、私とナイジェル、そしてナイジェルの学生であるアマンダの3人は、清潔でモダンなオタワ空港からFirst Airという航空会社の便に乗り込んで、まずはイカルイト(Iqaluit)という経由地の街まで飛んだ。イカルイトはカナダの東北部に位置する巨大な島、バフィン島における最大の街である。
空港に降り立った途端、私はびっくりして目を剥いた。イカルイトの空港は狭くて薄暗く、待合室は日本人と似た顔つきの、でも黒く日焼けをして背の低い人たちでいっぱいだった。そして案内板やポスターに書かれている、見たことのない文字! フライトの電光掲示板さえも、謎の文字と英語とを交互に表記していた。目のギョロっとした、子どもくらいの背丈の中年男性がニヤニヤ笑いながら近づいてきて、アクセサリーを買わないかと強引に勧めてくる。そう、バフィン島はカナダであってカナダではない、イヌイットの土地だった。
イカルイトで飛行機を乗り換え、さらに2時間。機内の窓から外を見下ろしていると、どこまでも続く広大な土地の中に、ゴマ粒みたいな集落が見えてきて、それがクライドリバーだった。日本のすべての田舎町が大都会に思えるほどの僻地だ。凍てつく風に縮み込みながらタラップを降り、簡素な空港の待合室に入ると、壁には「ホッキョクグマを撃つときはオスを狙ってください」というギョッとするようなポスターが貼られていた(子どもを産むメスはなるべく狙わないで、という意味である)。車に乗り替え、未舗装の一本道をはしっていくと、寒々とした海が見えてきた。港ではイヌイットの子供たちが石を投げたり、ロープにつかまったりして遊んでいた。バケツが1個、桟橋の上に置いてあって、中には解体したてのアザラシの肉が入っていた。
・・・・・・明日に続く・・・・
■□参考資料: サメが広大な海を回遊できる理由が明らかに □■
広大で、どこを見ても同じような景色に見える海の中で、サメたちが正しく目的地へと到達できるメカニズムはずっと謎だった。今月、サメが「航路」を決める手がかりの一つが匂いらしいことが、科学誌「PLOS ONE」2016年1月6日号の論文で発表された。この研究によれば、サメは嗅覚を頼りに、深海の中で進むべき方向を見つけ出すのだという。
長距離を移動するサメは多い。実際、ホホジロザメは、ハワイからカリフォルニアまで移動するし、ネズミザメはアラスカ沿岸と太平洋亜熱帯海域の間を回遊している。
これまで研究者は、サメは匂いや地球の磁場を手がかりに回遊すると推測はしていたが、肝心の証拠と言えるものがなかった。
匂いをたどって里帰り
米国のカリフォルニア州サンディエゴの近海で行われた実験は、次のようなものだ。まず、野生のカリフォルニアドチザメ(Triakis semifasciata)を沿岸の生息地から10km離れた海域まで移し、追跡装置を取り付ける。そして、一部のサメは鼻孔に綿を詰めて嗅覚を使えないようにした。
スクリップス海洋学研究所とバーチ水族館の博士課程を修了した研究員であり、今回の研究のリーダーをつとめたアンドリュー・ノザル氏によると、鼻をふさがれなかったサメは、本来の生息地と逆向きに放流されたにもかかわらず、わずか30分後にUターンしてまっすぐ自分たちがくらす岸に向かったという。
一方、鼻孔に綿を詰められたサメたちは「迷ったように見え」、あてもなく蛇行して「鼻をふさがれなかったサメよりゆっくり泳いでいた」という。
サメの方向感覚を調べるため、ノザル氏らは数十匹のカリフォルニアドチザメを捕獲した。カリフォルニアドチザメは米国のワシントン州からメキシコ北部にかけての沿岸海域に生息する小型のサメだ。捕獲したのはすべてメスの成体で、体長は平均1.5m。研究者は数匹のサメの鼻孔に綿を詰めると、より水深のある海域まで移動してサメを傷つけないように注意して放流した。
ノザル氏らの論文によると、鼻孔に綿を詰められたサメたちは岸に向かって戻ろうとはしていたが、鼻孔をふさがれなかったサメたちは「一直線」に回帰した。
ノザル氏は、サメは陸地に近づくほど濃度が高くなるような化学物質を嗅ぎ分け、それを頼りに回帰するのではないかと考えている。
はじめの一歩
しかし、この解釈に納得しない研究者もいる。米ハワイ大学マノア校の海洋生物学者キム・ホランド氏は、鼻をふさがれたサメは「鼻に何かを入れられたこと自体に動転したのかもしれません」と指摘する。
米国のニューカレッジ・オブ・フロリダの感覚生物学者ジェイン・ガーディナー氏も、サメが陸地に近づくほど強くなる匂いを追いかけている可能性は低いという。
ガーディナー氏は、サメたちは陸地の方からくる何らかの匂いに注意を引かれ、その他の手がかり(たとえば、水温や光量など)をたどって、いつものたまり場に戻ってくるのかもしれないと考えている。
実験で鼻をふさがれたサメたちも最終的に陸地に向かおうとしたのは、「匂い以外の何かをつかっていたことを示しています」と彼女は言う。
一方、研究チームを率いたノザル氏は、鼻孔に綿を詰められたサメたちは自発的に餌を食べていたことから、「動転などしていなかったはずだ」と反論する。
とはいえノザル氏も、サメが匂い以外のマーカーを用いて、「道」を見つけていることには同意する。「私たちが言いたいことは、サメのナビゲーションに匂いが大きく関与しているということです。研究は、謎を解く第一歩にすぎません」
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・・・https://youtu.be/WAyaUfoXktw・・・
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