地球に生息するアザラシから、チョウザメ、ウナギ、ワニ、ペンギン
つまり 北極圏―中国深部―マレーシア―フロリダ―南極まで
インディ・ジョーンズばりに世界の極地を飛び回り、兵器“データロガー”で野生動物を狙う
驚くべきデータを次々に発表する / 大型捕食動物の生理生態学者・渡辺佑基
【この企画はWebナショジオ_“日本のエキスプローラ”/バイオロギングで海洋動物の真の姿に迫る”を基調に編纂】
(文/写真=渡辺佑基= & イラスト・史料編纂=涯 如水)
◇◆ 神子元島のシュモクザメの調査は大成功 =2/3= ◆◇
シュモクザメの見られるダイビングスポットといえば、ガラパゴス諸島(エクアドル)やココ島(コスタリカ)など、大陸から遠く離れた孤島にあるのが当たり前だからだ。 ここ伊豆半島の特異な地理的条件が関係して、特異なダイビングスポットを形成している。
地図をご覧になるとおわかりのように、伊豆半島は広大な太平洋の西端に、まるで杭を打ち込んだみたいに鋭く突き刺さっている。そのうえこの海域は、黒潮(英語でもKuroshioと呼ばれる)という世界有数の強烈な暖流が、まるで目に見えない大河のように、南から北へと滔々と流れている。
つまり伊豆半島南端の海は、海洋学的にほとんど外洋であり、沿岸部には寄りつかない外洋性の様々な海洋生物(シュモクザメもそうだ)が、黒潮にのってやってくるというわけだ。
しかし神子元島でわかっているのは、シュモクザメの集団が毎年7月頃にやってきて、11月頃にはどこかへ去っていくということ。それ以外の移動や回遊のパターンはまるきりわかっておらず、それを明らかにするのが私たちの目標だ。
私たちは「音丸」という素敵な名前の付いた漁船を1週間チャーターし、船長の石坂さんの操船のもと、毎日朝から晩まで調査を行った。船には現地のダイビングショップ「神子元ハンマーズ」のスタッフの方が乗船してくれ、シュモクザメの出現スポットについてアドバイスをしてくれた。
調査の内容は、海底へ受信器を設置することと、サメへ発信器を装着することである。受信器はサメの出現率が高く、水深が20メートル程度である場所を選んでスキューバダイビングで潜り、海底の岩場の隙間にロープを通して設置した。
いっぽう発信器はフリーダイビング(タンクを背負わない、いわゆる素潜り)で潜り、サメにそーっと近づいて、近距離からスピアガンで打ち込んだ。あえてスキューバを使わないのは、フリーダイビングのほうが音が静かなのでサメに近寄りやすく、また身軽なのでサメを追いかけやすいためだ。
海況がおおむね良好だったこと、サメが頻繁に出現してくれたこと、それに現地の人たちが熱心に協力してくれたことで、調査は予想以上にスムーズに進み、受信器は全部で6台、神子元島をぐるりと囲むように設置することができた。
それに発信器も超音波発信器(超音波信号を発信して受信器に居場所を知らせるもの)を8台、人工衛星発信器(6カ月後に切り離されて海面に浮かび、人工衛星経由で居場所を知らせるもの)を2台、計10匹ものサメに取り付けることができた。
この10匹には、シュモクザメだけでなく、ガラパゴスザメ(いわゆる普通の見た目をしたメジロザメの仲間)も含まれている。これはもう、大成功と胸を張って言えるほどの成果である。
では、どんなデータがいつごろ得られるだろう。そしてそこから何がわかるのだろう。
海底に設置した受信器は、1年間そのままにし、来年の8月に回収する。回収した受信器からデータを読み込めば、神子元島周辺におけるサメの詳細な行動パターンがわかるはずだ。
とりわけ私が気になっているのは、シュモクザメの夜の行動パターンだ。毎日のように潜水しているダイビングショップの人たちでさえも、不思議なことに、シュモクザメがエサを捕る様子は一度も見たことがないという。
・・・・・明日に続く・・・・・
■□参考資料: 大絶滅を生き延びた角のある古代ザメ (1/2) □■
大絶滅を生き延びた角のある古代ザメ
古代の海にはさまざまな小型のサメの仲間が泳いでおり、中には頭上にツノのような器官を備えたものまでいたという。最新の研究で、これらのサメは従来考えられていたよりはるかに長く、約1億2000万年前頃まで生き延びていたことが明らかになった。多くの生物種が絶滅した時期にも、深海がシェルターの役割を果たしていたものと考えられる。 約2億5200万年前のペルム紀(二畳紀)末から三畳紀初期にかけて、地球上の海洋生物のおよそ90%が死に絶える大絶滅が起きた。
火山の噴火、海中の酸素の減少、深刻な気象変動などのさまざまな事態に見舞われたこの時期は、化石記録を見る限り、地球上の生命の存続にとって最も困難な時代であった。 この時期には、長く鋭いT字型の歯を持つクラドドント類と呼ばれる初期のサメの仲間も多数絶滅したと考えられていた。
ところが、スイスのジュネーブにある自然史博物館のギヨーム・ギノー(Guillaume Guinot)氏の率いる国際的なチームの研究によって、このサメの仲間が大絶滅の後も、少なくともさらに1億7000万年は生き延びていたことが明らかになった。つまり、恐竜の時代にも生息していたことになる。
「思ってもみなかったことだ。これらの古代のサメが見つかったのは本当に素晴らしい。実を言うと、もっと新しい時代のサメを探していたんだが」とギノー氏は言う。
◆大絶滅を生き延びた古代のサメ
チームの報告によると、フランス南部の石灰岩の地層から、クラドドント類のサメの歯の化石が複数見つかった。3種の新種が確認され、うち1種の歯はこれまで発見されているどの種とも似ていないという。
これらのサメが大絶滅の後も1億7000万年もの間生き延びていたという発見は、今回の研究に参加していない研究者からも驚きをもって迎えられた。
「たとえて言うと、ティラノサウルス・レックスの子孫が(現代に)生きた状態で見つかったようなものだ」と、古代のサメを専門とする在野の研究者ジョン・ポール・ホドネット(John-Paul Hodnett)氏は言う。「チームの結論には同意せざるを得ない。間違いなくクラドドント類のサメの歯(の特徴)を備えている」。
「大絶滅を生き延びたものの、その後すぐに死に絶えたというだけなら、さほど驚くことではない」とイギリス、ブリストル大学の古生物学者マイク・ベントン(Mike Benton)氏は言う。「しかし中生代に入って(1億年以上)も生きていたとは興味深い。その長い期間にはおそらくかなりの希少種になっていたとしてもだ」。 ・・・・・・明日に続く
◆ メガロドンよりも恐ろしいサメ ◆
・・・https://youtu.be/wkgIRZgwLaQ・・・
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