地球に生息するアザラシから、チョウザメ、ウナギ、ワニ、ペンギン
つまり 北極圏―中国深部―マレーシア―フロリダ―南極まで
インディ・ジョーンズばりに世界の極地を飛び回り、兵器“データロガー”で野生動物を狙う
驚くべきデータを次々に発表する / 大型捕食動物の生理生態学者・渡辺佑基
【この企画はWebナショジオ_“日本のエキスプローラ”/バイオロギングで海洋動物の真の姿に迫る”を基調に編纂】
(文/写真=渡辺佑基= & イラスト・史料編纂=涯 如水)
◇◆ 神子元島のシュモクザメの調査は大成功 =1/3= ◆◇
がんばりました! 研究者としてというより、旅の添乗員として。
8月13日、調査機材やダイビング機材のぎっしりつまった巨大なバッグを抱えた海外の研究者やメディア関係者が、次々と成田空港に降り立った。私は最も遅い時刻に来日したヤニスを空港で出迎え、都内のホテルまで案内する。
翌日、渋谷の居酒屋で顔合わせをし、人数を数えてみると、私自身を含めて8人しかいない。あれ? 9人のはずなのに、と私が怪訝そうにしていると、ハワイからやってきたトレが何事もなさそうに言う。
「うちのワイフが来たがってたんだけど、用事があって来れなくなったんだ。とってもシェイム――」
(……早く言えよ! 列車も民宿も9人で予約してあるんだから)――喉元まで出かかった言葉をぐっと飲み込んで、我慢強い旅の添乗員は、ニカッと笑顔を見せる。
「オッケー! ノープロブレム」
翌朝、東京駅で全員が集合する前に、慌てて「みどりの窓口」に駆け込み、1人分のチケットを払い戻す。その後、大混雑したお盆の東京駅の構内で、大量の荷物を抱えた7人の外国人集団を制御し、誘導する。
なんとか予定通りの特急「踊り子」に乗せることに成功し、心の中でガッツポーズ。本当のことをいえば、乗車前に各自弁当を買ってもらう予定であったが、難易度が高すぎると悟ってあきらめた。
ともあれ、列車に乗り込んでしまえば一安心。発車予定時刻きっかりに、「踊り子」はゆるゆると加速し始めると、あれよあれよという間に都内の喧騒を抜け、郊外の住宅地を過ぎ、トンネルをいくつかくぐって、青く光る太平洋の沿岸に沿ってはしっていく。
3時間ほどで伊豆半島の南端、終点の伊豆急下田駅に到着した。駅前のタクシー乗り場で連続したタクシーを3台つかまえると、7人の外国人集団と大量の荷物を無茶苦茶にして詰め込み、南伊豆町の弓ヶ浜まではしってもらう。
そしてついに到着。海水浴客で賑わう弓ヶ浜の先にぽっかりと浮かぶ、小さな無人島こそが、今回の調査地であり、日本が誇る世界有数のサメスポットでもある神子元島(みこもとじま)だ。
前回お話ししたように、今回の調査の目的は神子元島周辺に群れるシュモクザメの生態を調べることだ。シュモクザメの大集団は世界中のダイバーの憧れの的であるが、神子元島のように、都市部から容易にアクセスできる場所で見られる例は極めて珍しい。
というのも、シュモクザメの見られるダイビングスポットといえば、ガラパゴス諸島(エクアドル)やココ島(コスタリカ)など、大陸から遠く離れた孤島にあるのが当たり前だからだ。
・・・・・明日に続く・・・・・
■□参考資料: 巨大古代サメの新種を発見、日本人研究者ら □■
太平洋と大西洋の中緯度の浅い海に生息、三重県からも化石
絶滅した大型の古代サメが新種と特定され、命名された。
新種に付けられた学名は、メガロラムナ・パラドクソドン(Megalolamna paradoxodon)。史上最大のサメとして有名なメガロドンと近縁の可能性があり、体長は自家用車ほどあった。研究結果は、10月3日付で学術誌「ヒストリカル・バイオロジー」に掲載された。
米デポール大学の古生物学者、島田賢舟教授らの研究チームによると、この巨大な魚は約2000万年前の中新世に生息していた。大西洋にも太平洋にもいて、中緯度の浅い海を泳いでいたらしい。チームは米国のカリフォルニア州とノースカロライナ州、日本、ペルーで見つかった歯の標本5つを詳しく調べ、こうした生態を判断した。これらの歯は、いずれも長さが5センチ近くあった。(参考記事:「古代のサメは淡水に生息?」)
歯の形も独特で、複数の種の特徴をあわせもったような構造になっており、過去に例のないものだったことから新種の可能性が高まった。獲物を捕らえるのに有利とみられる前歯と、切断するのに使ったであろう奥歯の両方が発見されている。
したがって、このサメは中型の魚を食べていた可能性が最も高いと研究チームは結論付けた。
既に知られているサメの大きさに基づき、研究チームがこのサメの体長を歯の標本から推定したところ、約3.7メートルという結果が出た。6メートルに達することがあるホホジロザメよりは少々小さいが、現代でも比較的大きなサメと言える。
ただ、米フィラデルフィア州のセントジョセフ大学でサメを専門に研究するジョン・ポール・ホドネット氏は、科学ニュースサイト「Live Science」の取材に対し、この推定はやや差し引いて考えた方がいいと指摘した。
「歯に関しては、サメの顎にはかなり大きな歯もあれば小さな歯もあり得るため、歯が正確な体長を反映していないことがあります。この点に絶えず注意が必要です」とホドネット氏。同氏は今回の研究には関わっていない。
島田氏らの研究は、体長18メートルに達したとも言われるカルカロクレス・メガロドン(Carcharocles megalodon)と、今回の新種が近縁である可能性も示唆した。現在、ネズミザメ目サメ類の化石の分類が混乱しているなかで、研究チームは、どちらの種も絶滅したオトドゥス科に分類されるべきだと指摘している。
研究チームは論文で「脊椎動物の化石の中でも、サメの歯は最もよく産出する物の1つ」としながらも、「メガロラムナ・パラドクソドンほど大きいものはほとんどない」と述べている。この新種に付けられた名は、歯の特性が珍しく、既知のどんな種とも隔たりが見られることを示している。
文=Brian Clark Howard/訳=高野夏美
◆ Jonathan Bird's Blue World: シュモクザメの謎 ◆
・・・https://youtu.be/zz7NSeSJPOs・・・
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