○◎ Great and Grand Japanese_Explorer ◎○
○ 世界中を飛び回り、恐竜の姿を求める / 小林快次 ○
◇◆ 第7回 「間違った」仮設 =2/3= ◇◆
発掘作業は総力戦
恐竜の発掘というと、「偉い研究者は発掘の指示をするだけで、あとは学生やボランティア、雇われた人たちが力仕事をする」というイメージがあるだろうか。しかし、多くの場合、「上下関係」はない。この時も、世界的な研究者であるフィルであろうが、学生であろうが、身分も立場も関係ない。周りを見て各自ができることを探し、自分の役割を見つける。私はスコップとツルハシの役割を交代で行った。
土とは違い、岩のがれきをスコップですくうにはコツがいる。スコップの使い方はいろいろあるだろうが、私は以前、中国の元軍人から教わったやり方を採っている。私は右利きなので、スコップの付け根に左手を添え、右手は柄の後ろのほうを握る。足を前後にしっかり開き、腰を曲げる。スコップをがれきに突き刺してもなかなか入っていかないが、上下に揺らしながら奥へと入れていくと、がれきがスコップの上に次々と載ってくる。
ある程度がれきがスコップの上に載ったら、足を固定し、体の軸はそのままで腰をうまく左に回転させて、がれきを後ろへと投げる。投げる時は、スコップの付け根に添えた左手の力を抜き、右手でスコップを後ろへ素早くスライドさせる。すると、力を入れなくても、反動でがれきは遠くへと飛んでいく。この方法だとテンポよく作業できる。
スコップを使いはじめて10分もしないうちに、額から大粒の汗が流れ出す。なかなか気持ちがよい。しかも、この恐竜骨格が大発見である可能性も高いとなれば、なおさらである。
作業を続けて3日間。ようやく2メートルという膨大な岩が取り除かれ、いよいよ発掘が始まる。これはボーンベッド(不完全な骨が1カ所に集まった状態。前回記事参照)と違い、骨格1体がそのまま埋もれている発掘現場だ。
ボーンベッドでは当時の生態系が見られる点が重要だと前回書いたが、骨格の場合は、その恐竜そのものの解剖学的な情報を得られる点が重要だ。新種なのか否か。新種でなければ、どの恐竜なのか。新種であれば、どのようなところがユニークで、どの恐竜に最も近縁か。どのような生活をしていたのか、などなど多くの疑問に答えてくれる。
「七つ道具」セットから、小さいハンマーとタガネを取り出す。デンタルピック(金属製の歯間ようじ)も取り出し、さらに細かい作業の準備をする。これまでは完全な力仕事だったが、ここから先は神経を使う細かい仕事だ。どんなに日が照ってフライパンの上にいるような猛暑でも、冷たい風が吹いて小雨が降ってきても、集中力を欠かすことなく、骨を壊さないように注意深く掘っていく。
注意しなければならないのは骨だけではない。この地層からは、羽毛の痕が残っているオルニトミモサウルス類の化石も発見されている。一見シミのように見える部分が、羽毛だったりすることがあるのだ。ま、この骨格はケラトプス科ということなので、その心配は少ないと思うが・・・。
化石が含まれている岩を軽くハンマーで叩き、周りの岩を剥がす。骨に近づいてきたら、デンタルピックを使って岩を剥いでいく。すると、キレイな骨が次々と露出していく。この作業は楽しい。骨が出た瞬間の、表面の艶(つや)がたまらない。空気に触れて変色したり、有機溶媒に溶かした接着剤を塗ったりすると、オリジナルの美しい色つやが失われてしまう。この美しさが見られるのは、発掘する人だけの特権である。
※ ローレンス・モリス・ラム(Lawrence Morris Lambe、1848年-1934年)はカナダの地質学者者、古生物学者。Geological Survey of Canada(カナダ地質学調査局)に所属。 カナダ最初の、偉大な地質学者である。 アルバーター州の化石層から発掘された多種多様の恐竜に関する彼の著作は、公衆の目を恐竜に引き付け、なおかつこの地方に「恐竜の黄金時代」をもたらすきっかけとなった。
この時代、すなわち1880年代から第一次世界大戦の期間には、恐竜発掘者たちが世界中からアルバータ州に集まった。 ランベオサウルス(Lambeosaurus)は、ラム(Lambe)の栄誉を讃え、その名に因んで命名された(1923年)。
彼が発見したのは恐竜だけではない。 Leidyosuchus canadensisは1907年に報告されている。 これは、アルバータ州の白亜紀後期の地層に見られるワニの一種である。
なおラムはニューブラウンズウィック州のデヴォン紀の地層から発掘された魚や古生代のサンゴについても研究した。 ブリティッシュ・コロンビアの第三紀の昆虫や植物も収集した。 とはいえ彼が有名なのはカナダ西部での脊椎動物(特に恐竜)の発掘によってである。
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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
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