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Channel: 【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》
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現代の探検家《小林快次》 =16=

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○◎ Great and Grand Japanese_Explorer  ◎○

○ 世界中を飛び回り、恐竜の姿を求める / 小林快次 ○

◇◆ 第7回 「間違った」仮設  =1/3= ◇◆

※前回まで:2015年の発掘シーズンをカナダ南部、アルバータ州の恐竜州立公園でスタートさせた小林さん。恐竜の聖地であるこの公園では、至る所から化石が出てきます! 今回も引き続き、カナダからお届けします。

 「ガガガガガガ・・・」

 遠くから機械の音がする。音の方向を見ると、オレンジ色のシートのようなものが見えた。目の前に、今回の発掘を指揮するフィル(カナダ、アルバータ大学のフィリップ・カリー教授)がいたので、近づいていって尋ねてみた。

 「あんなところにテントを立てている人がいるよ。」

 「あ、あれはテントじゃないよ、シートだよ。私の学生が見つけた、ケラトプス科(トリケラトプスなどの角をもつ恐竜のグループ。 角竜類とも)の発掘現場だ。削岩機とか燃料とかいろんなものを持っていったから、雨よけのシートだね。あの音は、私の学生が削岩機を使っている音だよ。みんな頑張っているようだ」

 その現場は、私たちが立っているところよりも随分高い位置にある。「高い」というのは、「今、立っているところよりも、標高的に100メートルほどの高低差がある」というのと、「足元の地層よりも時代が新しい」という2つの意味がある。

 「ダイノソーパーク層(アルバータ州に露出する、白亜紀後期約7660万~7480万年前の地層)でも、随分上のほうだ。あんなところからも恐竜が見つかるんだね」と私が感心していると、フィルが汗を拭いながら答える。

 「あの層準(地層)からも恐竜は見つかるんだ。プロサウロロフスというハドロサウルス科の恐竜が多いけどね。 でも、今回私たちが見つけたのは、ケラトプス科だと思う。 これだけ層準が上のほうからケラトプス科が見つかるのは、まれなんだ。

 今、発掘している化石が重要な発見なのは、間違いないよ。 去年、脚を発掘して、骨格がつながっていることは確認済み。あとはどれだけの骨格が崖に埋まっているかなんだ」

 随分の自信だ。それだけ、この谷からは全身骨格がたくさん見つかっているということなのだろう。

 ケラトプス科の発掘現場に向かって20分ほど歩いていくと、絶壁が目の前に広がる。絶壁といっても、頑張れば登れるほどの斜面だ。


 「ヨシ、ちょっと遠回りになるけど、この崖の左を回って、もう少し緩やかな斜面を歩いていこう」
 「このくらいだったら登れるよ」
 「いや、エバ(フィルの妻)から、無理してヨシに怪我をさせないようにってキツく言われているから・・・」

 そんなに体力がないように見られているのだろうか。

「人と同じ道は歩かない」を実践

 仕方がないので、崖を避けて緩やかな斜面を歩きはじめる。すでに人が歩いた足跡があり、道になっている。 確かに歩きやすいが、少し物足りない。 その時ふと、中国の恐竜研究者ドン・チミンに昔言われたことを思い出す。

 「シャオリン(小林の中国語読みで、中国ではこう呼ばれている)、化石を見つけるコツは、人と同じ道を歩かないこと。できる限り、誰も歩いた形跡のない所を歩く。往復するときも、自分の足跡さえもたどって帰ることなく、新しい道を行きなさい」と。

 「人と同じ道は歩かない、常に新しい道を」とは、なかなか意味深い。

 そうだ、こんなときこそ、あえて人と違う道を行こう。 フィルの後ろから少し外れたところを1人で歩きはじめる。足場は悪いが、こっちのほうがしっくりくる。地面は乾燥し、表面に小石が無数に落ちている。 そのせいか、気をつけないと足が滑る。所々にシンクホール(水に削られて自然にできた「落とし穴」のこと。 前回記事参照)もある。

 シンクホールの縁を歩くときは、細心の注意を払う。滑って落ちないとも限らないし、落とし穴のようになっているかもしれない。 身軽にヒョイヒョイとシンクホールを飛び越え、上へ上へと登っていく。

 シンクホールの近くには植物が生えていることがある。その中にサボテンもあった。 「メキシコではたくさんのサボテンを見たけれど、こんな北のほうにもあるんだ。冬を越えるのは驚き」
 サボテンがあるといったん気がつくと、そこら中に生えているのがわかる。 少し向こうには黄色いキレイな花を咲かせているサボテンもある。 不注意に手をつかないように気をつける。どんなにキレイな花を咲かせていようが、鋭いトゲが私たちを威嚇している。

 「どの辺に埋もれているの?」 発掘現場に到着した私は、フィルの学生で、化石を発見したアロンに話しかける。
 「ちょうど俺の足元あたりさ。ヨシも手伝うか?」

 「・・・」

 言葉を失う。なぜなら、みんながツルハシ、スコップ、削岩機を使って作業しているところと、アロンがいる位置とは、2メートルほど落差がある。これを手作業で掘り込むのか? 2メートル掘り下げるには、相当の量の岩石を取り除かなければならない。かなりの作業だ。

 バックパックから私の「七つ道具」セットを引っ張り出し、そこから革でできたグラブを取り出す。 ここからは体力勝負だ。

 総勢8人での作業。力作業なので交代で行う。削岩機で岩を崩し、ツルハシでその岩を砕き、最終的にスコップで岩をかき出す。 スコップでかき出す際に、より遠くに岩を移動させなければならないので、オレンジ色のシートをうまく使う。 斜面にシートを張り、その上に岩を滑らせて、遠くへと移動させるのだ。

 

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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽  憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・

森のなかえ

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