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Channel: 【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》
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めくるめく知のフロンティア・学究達 =063= / 渡辺佑基(32/mn) 

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地球に生息するアザラシから、チョウザメ、ウナギ、ワニ、ペンギン

つまり 北極圏―中国深部―マレーシア―フロリダ―南極まで

インディ・ジョーンズばりに世界の極地を飛び回り、兵器“データロガー”で野生動物を狙う

驚くべきデータを次々に発表する / 大型捕食動物の生理生態学者・渡辺佑基

【この企画はWebナショジオ_“日本のエキスプローラ”/バイオロギングで海洋動物の真の姿に迫る”を基調に編纂】

(文/写真=渡辺佑基= & イラスト・史料編纂=涯 如水)

◇◆ アザラシの風変わりな休息法 =3/3= ◆◇

動物の体に取り付けた加速度センサーの記録を見てみる。加速度というのは、動物の体の動きの度合いを示す項目であり、アザラシが左右に足ヒレを振って泳げば、それに伴う体の振動が記録される。

 加速度の記録によると、アザラシは「V」潜水の前半、足ヒレの動きを完全に停止していることがわかった。

 つまりアザラシは潜水を始めるや否や、足ヒレの動きをぴたりと止め、体の向いた方向とは別の方向に、ふらふらと沈んでいた。そう、アザラシは潜りながら休んでいた。

 そして潜水の最深部に到達すると、はっと気付いたかのように再び足ヒレを振り始め、能動的に泳いで水面に浮上していた。水面で何度か呼吸をし、体内に酸素を補給したのちに、再び休息のための潜水を開始していた。

 それだけでなく、バイカルアザラシは水面にぷかぷかと数時間以上にもわたって浮いていることもあった。つまりバイカルアザラシは上陸場のひどく限られた夏のバイカル湖で、「休息潜水」と「水面滞在」の2通りの方法で、体を休めていることが明らかになった。

 じつは「休息潜水」はこれまでに数種類のアザラシで報告されており、まったく新しい発見というわけではない。たとえば前述のキタゾウアザラシも太平洋の旅行中に「休息潜水」をすることが知られている。いっぽうでキタゾウアザラシは「水面滞在」はめったにしない。

 そこで従来は次のように考えられていた。キタゾウアザラシはできることならば、水面でゆっくりと休みたい。けれども太平洋にはホホジロザメという恐ろしい天敵がいるので、水面にぷかぷか浮かんだままでいるのは危険すぎる。そこで次善の策として、「休息潜水」という奇抜な休み方をするようになったのだと。

 ひるがえってバイカルアザラシの暮らすバイカル湖は、ホホジロザメのような危険な天敵はおらず、天下泰平そのものである。だからバイカルアザラシが時折水面で休むことは、道理にかなっている。

 けれども面白いことに、バイカルアザラシは「休息潜水」もする。ということは、アザラシにとって「休息潜水」は決して次善の策ではなく、天敵のいない安全な場所でもする価値の十分ある、休みやすいスタイルだということである。水中をリラックスした姿勢で重力に任せてふらふらと沈んでいくのは、水面に浮いているよりも、ずっと快適なのだろう。

 ちなみにアザラシにとっては、水面に浮かぶことも、水中を沈んでいくことも、どちらもたやすいことである。息を吸って肺に空気を貯めれば、体はぷかぷかと水面に浮くし、潜れば水圧によって肺の空気が圧縮されるので、自然と浮力はマイナスになり、体が沈むようになる。

 いずれにせよアザラシという動物は、体の隅々までが潜水というただ1つの行動のために特殊化している。彼らにとっては潜水が日常そのものであり、だから上陸する場所がなければ、そのまま潜水を続けながら休むことさえできる。本研究で明らかになったのは、アザラシという哺乳類の水中適応のすごさであった。

 自分で言うのもなんだが、よい研究成果である。いまさらだけど、もっと早く論文にすればよかった……。

次節“世界が注目!神子元島のシュモクザメ”に続く・・・・・

■□参考資料: アザラシ(海豹) (3/3)  □■

アシカとの違い

アシカには耳たぶがあるが、アザラシの耳は穴が開いているだけである。

アシカは後肢に比較して前肢が発達している。泳ぐ際の主たる推進力は前肢から得て左右の後肢を同調させて泳ぐ。逆に、アザラシは後肢が発達しており、泳ぐ際には前肢は体側に添えるのみで、左右の後肢を交互に動かして推進力を得る。

陸上における移動を見ても異なっている。アシカは後肢を前方に折り曲げ、主に前肢を使って陸上を『歩く』ことができる。一方、アザラシは後肢を前方に折り曲げることはできず、前肢もあまり発達していないので『歩く』ことはできない。前肢を補助的に使いながら全身を蠕動させ、イモムシのように移動する。

このような差異もあって、かつてアザラシ類とアシカ・セイウチ類は異なる祖先からそれぞれ独自に進化したとみられていたが、研究が進んだことでアンフィキオン類(クマに近い化石種の系統)から進化した共通の祖先を持ったグループであることがわかっている。

日本でのアザラシ猟

日本では古くからアザラシ猟が行われてきた。北海道のアイヌや開拓期の入植者も利用した。皮は水濡れに強く、馬の手綱や“かんじき”の紐に好んで使われた。また脂肪は照明用に燃やされた。

昭和以降になると皮がスキーシールやかばんの材料になったり、脂肪から石鹸が作られたりした。昭和30年代以降はみやげ物の革製品の材料として多く捕獲された。この頃になると猟も大規模になり北海道近海からサハリン沖にまで及んだ。

最盛期の年間捕獲頭数は2500頭ほどと推定されている。その後、環境保護の流れが盛んになりファッションの材料としての需要の低迷、ソ連の200海里水域経済水域宣言、輸入アザラシ皮の流入等の理由により昭和50年代には商業的なアザラシ猟は終わりを迎えた。

現在では北海道の限られた地域で有害獣駆除を目的としてわずかな数が捕獲されているのみである。

北極圏でのアザラシ猟

北極圏にはアザラシを食料として狩る民族が現在も存在する。アラスカ及びその他北極圏を拠点とするエスキモーにとってアザラシの肉は数少ない貴重なタンパク源であるとともに、脂肪分を多量に含むアザラシ肉は極地環境で消費される大量のカロリーを補う優れた食物である。キビヤックなどの民族独自のアザラシ料理が存在する。

またカナダなどでは、アザラシの子供が商業狩猟の対象となっており、棍棒で殴り殺して、上質の毛皮を得る。

 ・・・・・・明日に続く

◆ ゼニガタアザラシ(北海道・襟裳岬) ◆

・・・https://youtu.be/mSd-jvCl1uk・・・

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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽  憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・

森のなかえ

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