地球に生息するアザラシから、チョウザメ、ウナギ、ワニ、ペンギン
つまり 北極圏―中国深部―マレーシア―フロリダ―南極まで
インディ・ジョーンズばりに世界の極地を飛び回り、兵器“データロガー”で野生動物を狙う
驚くべきデータを次々に発表する / 大型捕食動物の生理生態学者・渡辺佑基
【この企画はWebナショジオ_“日本のエキスプローラ”/バイオロギングで海洋動物の真の姿に迫る”を基調に編纂】
(文/写真=渡辺佑基= & イラスト・史料編纂=涯 如水)
◇◆ アザラシの風変わりな休息法 =1/3= ◆◇
アザラシというと一般的には、浜辺や氷上に横たわってごろごろしているイメージだろう。それは実際その通りであって、南極のウェッデルアザラシであれば南極の氷上で、北海道のゼニガタアザラシであれば沿岸の岩場で、まるで置物のようにじっとしたまま長い時間を過ごしている。
けれどもアザラシの中には数カ月あるいは半年以上もの間、一度たりとも上陸せずに、ひたすら泳ぎ続ける種類がいるのをご存じだろうか。たとえばカリフォルニアの浜辺で子育てをするキタゾウアザラシは、1年のうちのじつに10カ月間を、ほとんどマグロのように太平洋を泳ぎまわって過ごしている。
ここで素朴な疑問。このように長時間上陸しないアザラシは、いつ、どのように休んでいるのだろう?
その答えを私はいまから10年近く前、大学院生としてバイカルアザラシの調査をしていた折、思いがけずに発見した。予想もしていなかったその結果に、当時の私は心底驚き、興奮した。
当然、すぐに論文にすべきだった。けれどもちょうどその頃、私はアザラシに加えてマンボウやチョウザメの研究にも乗り出しており、あれやこれやと忙しくしているうちに、いつの間にか優先順位が落ちてしまった。誰にでもあることかもしれないが、「いつかやろう」と思いながら、その「いつか」がちっとも訪れないまま、10年もの年月が過ぎてしまっていた。
これではいけない。最近になってようやく反省した私は、ハードディスクの奥底から10年前のデータを掘り起こし、論文を書き始めた。幸いなことにデータは腐っておらず、それどころかデータの輝きは少しも減衰していなかったので、英国の一流の学術誌『Journal of Experimental Biology』にスムーズに受理され、先日内容が公開された。
今回紹介するのは、そんな新しいのか古いのかよくわからない私の論文である。
バイカルアザラシはロシアのバイカル湖に生息するアザラシだ。淡水湖に暮らすアザラシとしては、ラドガ湖(ロシア)とサイマー湖(フィンランド)に海から入り込み、そのまま居着いたワモンアザラシの亜種がいるが、純粋に淡水湖のみに生息するアザラシは、世界でただ1種バイカルアザラシのみである。
バイカル湖は冬の間はがちがちに凍りつくため、アザラシは氷上で横になり、ゆっくりと体を休めることができる。
ところが興味深いことに、氷の解ける毎年6月から11月までの間、バイカル湖にはアザラシの上陸に適した場所が数えるほどしかない。
人やヒグマに遭遇する可能性があるので、アザラシは湖岸にはめったに上陸しない。湖面から突き出した岩場があればいいのだが、そのような岩場はウシカニ島という小さな島の周辺に点在するのみである。同時に上陸できるアザラシの数は、せいぜい数百頭というところだろう。バイカルアザラシはバイカル湖全体で8~10万頭もいると推定されているから、ほとんどのバイカルアザラシは6月から11月までの間、まるで魚のように一度も上陸することなく湖を泳ぎ続けていることになる。
彼らは一体いつ、どのように体を休めているのだろう?
私は東大の大学院生だった2002年から2006年までの間、毎年バイカル湖を訪れて1カ月ほど滞在し、アザラシの調査を実施した。アザラシの背中に記録計を取り付けて放流し、数日後にタイマーで切り離されて浮かんできた記録計を、電波を頼りに回収するという調査であった。
・・・・・・明日に続く・・・・
■□参考資料: アザラシ(海豹) (1/3) □■
アザラシ(海豹)は、鰭脚類に含まれる海棲哺乳類のグループである。アザラシ科、もしくはアザラシ科アザラシ亜科に分類される。北海道ではアイヌ語より「トッカリ」とも呼ばれている。
アザラシには体重50kgのワモンアザラシから3700kgに及ぶミナミゾウアザラシまでおりその体は変化に富む。体格については多くの種で雌雄にそれほど顕著な差は無いが、ミナミゾウアザラシではオスの体重はメスの10倍になる。逆にモンクアザラシやヒョウアザラシではメスのほうがオスより大きい。
ゾウアザラシ属とズキンアザラシは繁殖のディスプレイのため鼻が特異な形をしている。首は短く、四肢には5本指があり指の間には水かきが付きヒレに変化している。アザラシの前ビレのうち空気中に露出している部分はヒトの手首より先の部分にあたる。体には短い毛が隙間なく生えており毛皮として利用されてきた。
アザラシは優れた潜水能力をもつことで知られている。キタゾウアザラシは1,500mまで潜水した記録がある。鼻腔を閉じることができ、肺の中の空気をほとんどすべて吐き出すことで高い水圧に耐えられるなど、潜水に適応した特徴をもつ。
かつて、アザラシはイタチとの共通祖先から分岐し、アシカはクマとの共通祖先から分岐し、収斂進化によって類似した形態を獲得したとする2系統説が主流であったが、近年は分子系統学的研究により、いずれもクマに近い共通の祖先をもつという単系統説が主流になっている。
分布
北極圏から熱帯、南極まで幅広い海域に生息する。 アザラシ科は10属19種からなり頭蓋骨や四肢骨の特徴からモンクアザラシ亜科とアザラシ亜科に分けられる。モンクアザラシ亜科に属する種は主に南半球に、アザラシ亜科に分類される種は北半球に生息する。
アザラシはホッキョクグマの主食となっており、その食料の9割をアザラシが占める。ホッキョクグマの嗅覚は優れており10kmくらい離れた場所からでもアザラシの匂いを嗅ぎつけることができるとする説もある。
日本近海では北海道を中心にゴマフアザラシ、ワモンアザラシ、ゼニガタアザラシ、クラカケアザラシ、アゴヒゲアザラシの5種のアザラシが見られる。5種のアザラシは「すみわけ」をしているように見える。大雑把に言うとワモンアザラシは氷や流氷の多い地域に多く、大型プランクトンと小型魚類を食べている。
アゴヒゲアザラシは流氷の移動する浅い海域を好み底性の魚類やカニ・貝を食べている。ゴマフアザラシとクラカケアザラシはこれらより南に分布し、冬から春にかけては流氷上で出産する。流氷期が終わるとゴマフアザラシは分散して沿岸で生活するがクラカケアザラシは外洋で回遊する。
ゼニガタアザラシはその南に分布し流氷のあまり来ない北海道から千島列島の結氷しない地域で暮らす。以上が日本近海のアザラシの分布の定説であるが、2002年に東京都の多摩川に出現し日本を騒がせたアゴヒゲアザラシのタマちゃんのように定説どおりに動かないアザラシの個体も少数おり、日本各地に出現するケースも稀にある。
・・・・・・明日に続く
◆ Nanook Of The North ◆
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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
森のなかえ
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