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Channel: 【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》
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めくるめく知のフロンティア・学究達 =060= / 渡辺佑基(30/mn)

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地球に生息するアザラシから、チョウザメ、ウナギ、ワニ、ペンギン

つまり 北極圏―中国深部―マレーシア―フロリダ―南極まで

インディ・ジョーンズばりに世界の極地を飛び回り、兵器“データロガー”で野生動物を狙う

驚くべきデータを次々に発表する / 大型捕食動物の生理生態学者・渡辺佑基

【この企画はWebナショジオ_“日本のエキスプローラ”/バイオロギングで海洋動物の真の姿に迫る”を基調に編纂】

(文/写真=渡辺佑基= & イラスト・史料編纂=涯 如水)

◇◆ 伏兵アカマンボウの逆襲 =4/4= ◆◇

 今回の『Science』の論文によれば、アカマンボウもマグロ類やホホジロザメと同様に、対流式熱交換器を備えているのだが、それがなんと、エラの周囲に配置されている。

 エラを通過した血液は、必然的にまわりの水と同じ温度まで冷えてしまうが、エラを出た時点で、エラに入っていく血管と並行し、温められる。つまりアカマンボウの場合、エラという熱放出の「元凶」の周囲に対流式熱交換器を配置することによって、エラ以外のすべての体の部分を温めることに成功している。

心臓も温かいから、冷たく深い海の中に長く滞在しても、正常なポンプ機能を維持することができる。筋肉とその周辺だけが温かいマグロ類やホホジロザメとは、この点において根本的に異なっている。

 もうひとつのマグロ類やホホジロザメとの大きな違いは、アカマンボウは尾びれではなく、胸びれをくいくいと振って泳ぐことである。だから熱の発生源は、体幹部にある尾びれを動かす筋肉ではなく、胸びれの根元にある筋肉だ。マグロの血合いに相当する、濃い赤色の筋肉(しかもとても大きな筋肉)が、アカマンボウの胸びれの根元にしっかりと付いている。

 言われてみれば、ものすごく単純。でもこのような魚が存在したことに、そしてそれが今になって発見されたことに、私は心底驚いた。

 生物の進化とはかくも不思議な現象である。血管や筋肉という「手持ちの材料」の配置を少し工夫するだけで、劇的な体の機能の変化が生じる。アカマンボウの体温は「単純な原理、劇的な変化」の鮮やかな一例であり、その意味において、私は歴史に残る大発見だと信じている。

 では、どうしてこのような不思議な進化が起こったのだろうか。高い体温が、アカマンボウの生活スタイルにどう関係しているのだろう。ここからは私の想像だが、きっとアカマンボウもマグロ類やホホジロザメと同様に、他の魚に比べて速く泳ぐことができるのではないだろうか。

アカマンボウの生活する深い海(深度50~400m程度)において、一人だけ冷たい水温の影響を受けることなくピンピンと泳ぎ続けることができるならば、生存にすこぶる有利にはたらくと予想される。あ、バイオロギングを使って研究したい動物種が、また増えてしまった。

 最後に、私の感想。海は広く、おびただしい種類の魚がいるが、いままでに体温が計測されたのは、ごく一握りに過ぎない。ひょっとしたらアカマンボウのように高い体温を保持している魚は、まだまだ他にもいるかもしれない。もしそうだとすれば、魚は変温動物だという一般的な「常識」は、「例外の多いひとつの傾向」に格下げされる日が、もしかしたら来るのかもしれない。

次回“アザラシの風変わりな休息法”に続く・・・・

 

■□参考資料: ホホジロザメ (2/2)   □■

ホホジロザメの生態・食性・天敵

奇網と呼ばれる毛細血管の熱交換システムが発達しているため、体温を海水温よりも高く保つことができ、軟骨魚類の中では高い運動能力を獲得している。普段はゆったりと泳いでいるが、瞬間的には最高時速25-35キロメートル程度を出すと言われ、海面から体が完全に飛び出す高さまで跳躍することもできる。これほどの運動能力は、他のサメでは高速遊泳を行うことで知られるアオザメオナガザメに見られる程度である。

シャチイルカなどの海棲哺乳類の知能とは比べられないが、魚類の中でも高度な知能を持ち、学習能力に優れ、獲物を襲う際には過去の成功と失敗の経験を生かすと言われている。仲間内で多彩な行動を取り、獲物を分けるなど、社会性を示すような行動も確認されている。

食性は動物食で、イルカやオットセイ、アザラシなどの海棲哺乳類を好み、魚類や海鳥も捕食する。クジラの死骸を食べることもある。またホホジロザメはよくエイを食べるが、エイの棘が内臓に引っかかることも珍しくない。体重の30%程の重量を食べると満腹になるといわれる。

ホホジロザメは呼吸のため泳ぎ続ける必要があるが、常に高速を出すとエネルギーを消耗する。このため餌が豊富な海域では、尾鰭を止めてゆっくり泳ぎ、捕食する直前にスピードを上げる「待ち伏せ型」の行動が観察されている。

獲物を食いちぎる際、肉に刺さって欠けた歯を一緒に飲み込んで自身の内臓を傷つける場合があると言われている。獲物に喰いついて大ダメージを与えた後に放し、出血多量で死ぬのを待つ行動は、歯が折れるのを防ぐためだと考えられている。

天敵は人間やシャチ、他の大型のサメである。大型のサメは比較的小型のホホジロザメを捕食することもあり、また、同じホホジロザメ同士で、より大型の個体が小型の個体を捕食することもある。

シャチは偏食の習性があるのに加えて、抵抗されれば自身にも危険が及ぶホホジロザメを積極的に攻撃や捕食の対象にはしていないと見られているが、沖合型のシャチはサメ類を積極的に捕食しているという説もある。また、子供を連れているシャチは危険を除去する目的で積極的に攻撃を仕掛け、ホホジロザメを殺害する例が幾度も観察されている。シャチはサメをはじめとした軟骨魚類を襲う際に、身体をひっくり返らせて擬死状態に陥らせ、抵抗できなくしてから捕食する。

・・・・・・明日に続く

◆ 【ナショジオ】「シロワニ:こわもてなサメの素顔」より ◆

・・・https://youtu.be/eF5GrCo2ncg・・・

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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽  憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・

森のなかえ

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