地球に生息するアザラシから、チョウザメ、ウナギ、ワニ、ペンギン
つまり 北極圏―中国深部―マレーシア―フロリダ―南極まで
インディ・ジョーンズばりに世界の極地を飛び回り、兵器“データロガー”で野生動物を狙う
驚くべきデータを次々に発表する / 大型捕食動物の生理生態学者・渡辺佑基
【この企画はWebナショジオ_“日本のエキスプローラ”/バイオロギングで海洋動物の真の姿に迫る”を基調に編纂】
(文/写真=渡辺佑基= & イラスト・史料編纂=涯 如水)
◇◆ ヒラシュモクザメに関する奇想天外な仮説 =2/3= ◆◇
さらにこのサメは呆れたことに、記録計が回収された後、もう一度我々の仕掛けにかかり、釣り上げられている。ということは20キロの距離をまた泳ぎ戻ってきて、元気にエサを追いかけ続けていたということである。
だから私は差し当たり、横倒しの遊泳姿勢はヒラシュモクザメにとっての自然な行動であると、素直に受け入れてみることにした。そして、だとすればそれが何を意味するのか、どうしてそんな奇妙な姿勢をとる必要があるのか、真剣に考えてみた。
その結果、奇想天外としか言いようがない、とびきりの仮説を思いついた。
ヒラシュモクザメの外見で際立っているのは巨大な背びれである。スレンダーな体には不似合いなほどに立派な背びれが、堂々と背中にそびえたっている。実際、ヒラシュモクザメの背びれは世界中に450種ほどいるサメの中でも群を抜いて大きい。アカシュモクザメやシロシュモクザメなど、他のシュモクザメ類もこれほど大きな背びれは備えていない。
しかもヒラシュモクザメの背びれは、後ろに傾いた三角形をしており、形といい大きさといい、胸びれと瓜二つである。これが私の仮説の最大のポイントだ。
ずばり言ってしまうと、ヒラシュモクザメは体を横に傾けて泳ぐことによって、その大きな背びれを「第三の胸びれ」として使っているんじゃないかというのが私の仮説である。といってもまだ説明が不十分の気がするから、順を追って説明しよう。
サメの胸びれの役割は、飛行機の翼のように揚力を発生させることである。
軟骨魚類(サメ、エイの仲間)と硬骨魚類(コイ、ウナギ、サンマなどのいわゆる普通の魚)とは、分類学的にヒトとハトほども離れた、ほとんど別の生物であると前回述べた。両者は基本的な体の作りが異なっており、一例を挙げれば、サメはコイやウナギと違って浮き袋をもっていない。その代わりにサメは肝臓が大きく、肝臓に蓄積された油脂によってある程度の浮力を得ている。
けれども油脂から得られる浮力は限られたものなので、サメはじっとしていると海の底に沈んでしまう。そこで多くのサメは胸びれをぴんと左右に張って泳ぎ、胸びれから揚力を発生させることによって、体の沈下を防いでいる。
いま、まっすぐな姿勢(つまり横倒しになっていない姿勢)で泳いでいるヒラシュモクザメを真正面から見ていると想像しよう。背中には1本の大きな背びれが立ち、胸部からは左右それぞれにぴんと胸びれが伸び、その2本の胸びれから揚力が発生している。
この状態で、ヒラシュモクザメの体を右に(あるいは左に)60度傾ける。するとどうだろう、背びれは機能上、胸びれと区別がつかなくなり、背びれからも揚力が発生するようになる。なるほどこの状態では、胸びれも本来の位置からずれてしまうので、胸びれに発生する揚力は減ってしまうかもしれない。けれども「3本の胸びれ」から得られるトータルの揚力は、まっすぐな姿勢のときの2本の胸びれ由来の揚力を上回るのではないかと私は予想している。
・・・・・・明日に続く・・・・
■□参考資料:バイオロギングで探る海洋動物の行動・生態 (4/6) □■
国立極地研究所・総合研究大学院大学複合科学研究科 / 高橋 晃周
なぜ長く潜水できるのか? アザラシやペンギンが深くまで潜る理由は,有光 層以深にも充分なえさがいるかららしい。では,そ れほどまでの深さに到達するための長い潜水が,な ぜ可能になったのだろうか?潜水動物は,酸素と結 合するタンパク質(ヘモグロビン,ミオグロビン)が 多く,多くの酸素を体内に保有することが昔から知 られている。しかし水中で酸素を節約し,長く潜水 するためのさまざまな生理的,行動的な調節が明ら かになったのは,最近のことである。
まず生理的な調節として,アザラシやペンギンは 潜水すると心拍数を急激に低下させ,体全体にめぐ る血液の流れを抑え,酸素消費量を減らす。潜水直 後の心拍数の低下の度合いは,潜水が長く続くとき ほど大きく,動物は潜水時間を予測して心拍数を調 節しているらしい。そして脳や筋肉など,必要な部 位に選択的に酸素を供給するしくみになっている。
また,ペンギンやウミガラスなどでは,腹部の皮下 など,体の周辺部分の体温が数度下がる。 また,行動的な調節として,アザラシやペンギン は距離当たりで最もエネルギー効率のよい速度(秒 速 1.5 ~ 2.5 m)で泳いでいることが,遊泳速度の計 測から明らかになった。
車に例えれば,最も燃費の よい速度で動いているということである。速度が速 すぎると,ひれや翼をより頻繁に動かさねばならず, 余計な酸素を使うことになる。一方,速度が遅すぎ ると,えさのいる深度までの移動が長時間になり, 体の維持のために余計な酸素が必要になる。
また, 動物たちは水中で発生する浮力を使い,なるべくひ れや翼を動かさないで泳いでいることがわかった。 例えば,アザラシは一般に体密度が水より高く水中 では体が沈む(負の浮力をもつ)ので,えさのいる深 度までひれを動かさずに受動的に沈んでいくことで, 酸素消費量を抑えていることがわかった(図 3)。
高校生物の教科書には,「生物が,生息環境に対 して,形態的,生理的あるいは行動的に有利な形質 を備えていることを適応という」との記述がある(数 研出版)。アザラシやペンギンは,水中環境に適応 した動物の例としてあげられることが多いが,その 具体的な生理的,行動的適応の研究は,バイオロギング技術の進展によってようやく始まったといって よいだろう。
・・・・・・明日に続く
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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
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