地球に生息するアザラシから、チョウザメ、ウナギ、ワニ、ペンギン
つまり 北極圏―中国深部―マレーシア―フロリダ―南極まで
インディ・ジョーンズばりに世界の極地を飛び回り、兵器“データロガー”で野生動物を狙う
驚くべきデータを次々に発表する / 大型捕食動物の生理生態学者・渡辺佑基
【この企画はWebナショジオ_“日本のエキスプローラ”/バイオロギングで海洋動物の真の姿に迫る”を基調に編纂】
(文/写真=渡辺佑基= & イラスト・史料編纂=涯 如水)
◇◆ マグロとホホジロザメに共通する進化の秘密を発見! =2/3= ◆◇
今までに大きく分けて、2つの仮説(二者択一ではなく、両立も可能な仮説)が提示されてきた。1つ目の仮説は、いわば「幅広い温度帯仮説」。高い体温を維持する魚はまわりの水温の影響を受けにくいので、幅広い温度帯に適応でき、地理的に広い範囲に生息できるというものである。この仮説はおおむね支持されており、実際、マグロ類もホホジロザメも極域を除く世界中の海に生息している。
いま1つの仮説は、いわば「高速遊泳仮説」。高い体温をもつ魚は、速い遊泳スピードで泳ぎ続けられるというものである。高い体温といっても、魚の体内で最も温かいのは、有酸素運動を支える赤筋(いわゆる血合)の部分である。一般に、筋肉は温かければ温かいほど素早く収縮し、また高い出力を生み出せる。そのため高い体温をもつ魚が、そうでない魚に比べて尾びれをバシバシと力強く振り、速い速度を維持できるという仮説はまこと理に適っている。
ところが、高速遊泳仮説は今までに一度も検証されてこなかった。マグロは他の魚よりも速いというイメージを多くの人は(海洋生物学者も含めて)持っているけれど、それを裏付ける科学的なデータは、じつは一度も示されていない。このことに気付いた私は、これはチャンスだと思った。マグロ類やホホジロザメが他の魚に比べて速いことを証明すれば、古くからの謎である「高い体温を保つ魚がなぜ進化したか」という問題を、一気に掘り下げることができる。
折しも私は今まで、マンボウからチョウザメ、高い体温をもつネズミザメに至るまで、様々な魚に記録計を取り付け、遊泳スピードを測定してきた。それだけでなく、世界中の研究者が同じように魚に記録計を取り付け、結果を文献に報告していることもよく知っている。そこで一念発起、今までに測定された魚の遊泳スピードのデータを、文献の山と自分自身のハードディスクの中から集められるだけ集めてみることにした。そして体温の高い魚が本当に速く泳ぐかどうかを統計的に検討した。
結果は予想以上であった。まず、魚の巡航時の遊泳スピードは、大きな魚ほど速い傾向にあった。巨大なジンベエザメは小さなフナに比べると、尾びれを1回左右に振るだけでずっと長距離を進むので、これはさほど驚くべき結果ではない。
大事なのはその次だ。同じ大きさの魚で比較すると(つまり回帰直線の切片を比べると)、体温の高い魚はそうでない魚に比べて、じつに2.7倍も速い速度で巡航することがわかった。高速遊泳仮説の正しさを証明する初めての結果である。驚いたことに、体温の高い魚の巡航速度は、恒温動物である海鳥(ペンギン、ウミガラスなど)や海生哺乳類(クジラ、アザラシなど)のそれに近かった(図1)。
体温の高い魚は速く泳ぐ――ここまではよし。でももう一歩、考えを進めてみよう。速い遊泳スピードはどのような形で、生存上のメリットとしてはたらくのだろう。そしてどうしたらそれを科学的なデータとして証明できるだろう。難しい問題である。ああでもない、こうでもないと首を捻ったが、よいアイデアはてんで浮かばず、私はこの段階でずいぶんと長く立ち止まってしまった。
ところが、ある日ふと、魚の遊泳スピードはもしかしたら、回遊のパターンに関わるのではないかと思った。
・・・・・・明日に続く・・・・
◇世界初、海中の餌取りを撮影 南極のアデリーペンギン◇
・・・https://youtu.be/V68LzKDF1ko・・・
■□参考資料:バイオロギングで探る海洋動物の行動・生態 (1/6) □■
国立極地研究所・総合研究大学院大学複合科学研究科 / 高橋 晃周
バイオロギングとは何か? 動物の行動や生態を研究するためには,その動物をよく観察しなければならない。当たり前のことであるが,野生動物を観察した経験が少しでもある人 ならば,それがいかに難しいことか想像できると思う。例えば,公園の街路樹で暮らすシジュウカラ。 木の枝にとまったところを数十秒見ることはできても,木から木へ次々と移動していく個体を追いかけて観察し続けるのは簡単ではない。まして,海を広く動き回る海洋動物を観察するのは難しい。
そのた めか,動物の行動についての研究は,屋内でじっく り観察できる陸上動物で先行して進んできた。高校 生物の教科書(数研出版)を開いてみると,動物の行動についての章には,イトヨの求愛行動,ミツバチの8の字ダンス,ハイイロガンのひなの刷り込み行 動などの,室内もしくは半野外環境下での古典的な 研究が取り上げられているが,野外における最近の研究についての記述はほとんどない。
野外で自由に動き回る動物をどうやって連続的に観察するか?その必要にせまられて開発された新しい計測手法がバイオロギングである。バイオロギングとは,バイオ(生物)とロギング(記録をとる)という言葉を組み合わせて,日本の研究者が提案した学術用語である。動物に小型の記録計を取りつけ,動 物の行動・生理・生態などに関する情報を取得する技術のことをいう。人が観察して記録を取るのが難しいならば,動物自身に記録を取ってもらおうという着想である。この手法は,1970 年代に南極のアザ ラシやペンギンの研究からスタートした。
水中での観察が難しいアザラシやペンギンが,どれくらいの深さまで,どれだけの時間潜水しているのだろうと疑問に思った研究者が,深度計を自作したのが始ま りである。現在ではいろいろな記録計が,世界のさまざまな海域で魚類,ウミガメ類,海鳥類,海生哺 乳類などの研究に使われている。本稿では,バイ オロギングで明らかになってきた海洋動物(特にア ザラシ,海鳥)の行動・生態について紹介したい。
・・・・・・明日に続く
◆ ペンギンカメラの衝撃1(提供:国立極地研究所) ◆
・・・https://youtu.be/1yC9HMyrsiA・・・
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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
森のなかえ
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