地球に生息するアザラシから、チョウザメ、ウナギ、ワニ、ペンギン
つまり 北極圏―中国深部―マレーシア―フロリダ―南極まで
インディ・ジョーンズばりに世界の極地を飛び回り、兵器“データロガー”で野生動物を狙う
驚くべきデータを次々に発表する / 大型捕食動物の生理生態学者・渡辺佑基
【この企画はWebナショジオ_“日本のエキスプローラ”/バイオロギングで海洋動物の真の姿に迫る”を基調に編纂】
(文/写真=渡辺佑基= & イラスト・史料編纂=涯 如水)
◇◆ マグロとホホジロザメに共通する進化の秘密を発見! =1/3= ◆◇
研究者をしていて一番うれしいのは、自分の書いた論文が科学雑誌に掲載されたときだ。それは体を張って集めたデータ、頭の痛かった統計解析、苦吟を重ねた英文が、ついに実を結んだ瞬間である。少し大げさに言えば、私の頭の中だけにあったものが人類共通の知見に昇華した瞬間である。
私の最新の論文が本日、『米国科学アカデミー紀要(PNAS)』に掲載された。『PNAS』といえば私の研究分野では(というよりほとんどの研究分野において)、『Nature』、『Science』に次ぐ地位を占める堂々たる東の大関だ。このクラスの科学雑誌に論文が掲載されると、世界中のおびただしい研究者や科学ジャーナリストに読まれ、したがってその科学的な成果が広く認知される。しかしその分、論文掲載をめぐる競争の熾烈さといったら、ほとんどの原稿はろくすっぽ審査されることなく門前払いされるほどだ。一部のトップ研究者はさておき、私程度の研究者にとってはこれらの有名科学雑誌は「いつかは」と仰ぎ見るような存在であり、だから今回の『PNAS』論文掲載は、はっきり言ってめちゃめちゃうれしい。
そこで今回は、前回の前フリはどこかへうっちゃって、論文の内容を紹介させてもらおう。私は普段は冷静沈着、沈思黙考の紳士だが(違うかな?)、こと論文の話になると、つい熱くなってしまう。とりわけ今回の論文は思い入れの強い、超の付く労作なので、熱くなり過ぎてしまったらごめんなさい。
魚は変温動物であり、たとえば水温20℃の池にすむコイの体温はやはり20℃であると学校では習う。これは一般的には正しいが、厳密に言えば正しくない。まわりの水温よりもはるかに高い体温を維持している、不思議な魚のグループがいるからだ。
そんな魚のグループの1つがクロマグロ、キハダ、カツオなどのマグロ類。そしてもう1つのグループがホホジロザメ、ネズミザメ、アオザメなどのサメの一部だ。これらの魚は、まわりの水温よりも5~15℃ほど高い体温を維持している。冷たい海でマグロを釣り上げ、ビチビチ跳ね回る魚体を押さえつけて包丁を入れると、内部がほんのり温かいことを漁師は昔から知っていた。
マグロ(硬骨魚類)とサメ(軟骨魚類)は分類学的には綱のレベルで違うから、たとえばヒトとハトほども離れた、ほとんど別の生物と言える。一般に、分類学的に別の生物が共通の体の作りを進化させることを「進化の収斂」と呼ぶ。マグロ類とホホジロザメの高い体温は、進化の収斂の際立った一例であり、進化という現象の不思議さ、奥深さを象徴している。そのため半世紀以上も前から、数多くの研究者がこれらの魚における高い体温の謎を、様々な角度から調査してきた。
高い体温を維持するための生理学的なメカニズムは、今ではよくわかっている。マグロ類にせよホホジロザメにせよ、決して止まることなく海の中を泳ぎ続け、その筋肉の運動によって発生した熱を特殊な血管の配置によって体内に蓄えている。
いっぽうで、いまだに謎なのは、そもそもどうしてこのような不思議な進化が起こったのかである。高い体温を保つには多くのエネルギーが必要であり、それゆえマグロ類やホホジロザメは、普通の魚よりも多くのエサを食べ続けなければ生きていけない。
それにもかかわらず、マグロ類やホホジロザメが高い体温を保つように進化したということは、高い体温が何らかの形で、これらの魚の生存率の向上に貢献していることを意味する。ある形質が進化するためには、そこに生存上、子孫繁栄上のメリットがなければならないというのがダーウィンの進化論だ。ではマグロ類やホホジロザメにとっての、高い体温のメリットって一体何だろう。
・・・・・・明日に続く・・・・
◇渡辺佑基▽生物学界のインディ・ジョーンズが持つ世界初の映像が満載◇
・・・https://youtu.be/WAyaUfoXktw?list=PLw3QxSAmxbO08nPTUdZcf5cx_mRmcw6l2・・・
■□参考資料: 動物の知られざる生態に迫るバイオロギング(3/3) □■
動物の知られざる生態に迫るバイオロギング|東京大学 / 取材・文:小竹朝子
青木先生の研究の一つに、マッコウクジラの行動に関するものがあります。マッコウクジラは歯を持つクジラの中で最大で、深度2000メートルまで潜ることで知られていますが、ロガーのデータによって、ときおり海上近くで頭もしくは尾びれだけが水面下に潜った状態で垂直に浮いているという「変な姿勢」でじっとしていることがわかりました。
「じっとしているのでおそらく彼らは寝ているんじゃないかと思われます」と青木先生は語ります。「クジラがどう眠るかといったことは、基本的なことなんですがわかっていなくて、バイオロギングで初めて説明できるようになりました」。
同じ佐藤研究室の大学院生である木下千尋さんはアカウミガメを専門としていて、アカウミガメの代謝速度が地域によって大きく異なることについて研究しています。
「北太平洋のアカウミガメの越冬戦略は地中海のアカウミガメの越冬戦略と全然違うんです」と木下さんは言います。「地中海のカメは水温が下がると不活発になってしまうのですが、北太平洋のカメはすごく活発です。同じカメでなぜ違うのか、その生理的な背景を調べています」。
研究の「副産物」
これまで、バイオロギングは動物の生態や生理を調べるのに主に使われてきましたが、最近はまったく違った方面の、気象予測への応用の可能性が注目を浴びています。
博士研究員である後藤佑介さん(31)は、海鳥、特にオオミズナギドリの研究をしています。後藤さんは海鳥にGPSを取り付け、北海道まで餌を取りに飛行した後に岩手県沖の島にある巣に戻ってくる過程の海鳥の毎分ごとのデータから海上の風の方向と風速を推定しました。
これらのデータは海鳥の移動戦略を理解するのに役立つのみならず、気象予測の質も大きく向上させる可能性がある、と海鳥の研究で今年3月に東京大学総長賞を受賞した後藤さんは話します。
後藤さんを含む佐藤研のメンバーは、過去2年半にわたって、動物に取り付けたロガーから収集したデータがスーパーコンピュータに取り込まれたときに実際に気象予測を改善するかどうかを他機関の研究者との共同研究で調べています。
現在、海上風に関するデータは非常に限られていると佐藤先生は話します。なぜなら、人工衛星は一日2回しか同じ場所のデータを集めることができず、また海岸から100キロ以内の海上も、海岸近くの岩や硬い物体に衛星の電波が乱反射されるためデータが取れないからです。
海洋気象ブイも水深3000メートルもある外洋では海底に固定できないので実用的ではありません。しかし動物に搭載したロガーなら、大きな移動距離をカバーし、気象シミュレーションに必要なビッグデータを提供できるかもしれないのです。
「気象科学に寄与できる可能性のあるこれらの情報は我々の研究の副産物です」と佐藤先生は話します。「でもその副産物にはものすごい価値があります。動物のデータを入れたら天気予報がよくなるなんて、痛快じゃないですか?」 取材・文:小竹朝子
大気海洋研究所 海洋生命科学部門 行動生態計測分野 佐藤研究室
http://www.fishecol.aori.u-tokyo.ac.jp/sato/
・・・・・・明日に続く
◆ Expedition Update - Tagging White Shark Betsy ◆
・・・https://youtu.be/Vo7bpaNPPCs・・・
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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
森のなかえ
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