地球に生息するアザラシから、チョウザメ、ウナギ、ワニ、ペンギン
つまり 北極圏―中国深部―マレーシア―フロリダ―南極まで
インディ・ジョーンズばりに世界の極地を飛び回り、兵器“データロガー”で野生動物を狙う
驚くべきデータを次々に発表する / 大型捕食動物の生理生態学者・渡辺佑基
【この企画はWebナショジオ_“日本のエキスプローラ”/バイオロギングで海洋動物の真の姿に迫る”を基調に編纂】
(文/写真=渡辺佑基= & イラスト・史料編纂=涯 如水)
◇◆ オーストラリアのサメ調査は1勝2敗 =1/3= ◆◇
オーストラリアの北東部、グレート・バリア・リーフと呼ばれるサンゴ礁の海域でサメの生態を調査してきたので、今回はその報告をさせていただこう。
私は海外のいろいろな大学や研究所と共同研究をしているが、今回の共同研究の相手は一風変わっていて、Ocearch(オーサーチ)という変な名前の(失礼。海を表すOceanと調査を示すResearchを組み合わせた立派な造語です)、米国の非営利団体であった。
Ocearchの代表のクリス・フィッシャーさんは、20代で富を築いた凄腕のビジネス・パーソンだ。齢30を過ぎてから一念発起し、これからは海洋生物、特に自分の大好きなサメの研究や保全に人生を捧げるのだと心に決め、この団体を立ち上げたらしい。スポンサーを募って大きな調査船を購入し、船員を雇って世界中の海を訪れ、いろいろな種類のサメに発信機を取り付けて生息域を調べている。いかにもアメリカらしい、夢のある話だと思う。
私はビジネス方面にはひどく疎いので、フィッシャーさんの活動は間近で見ていて面白かった。発信機を取り付けたサメ1頭1頭に親しみやすい名前を付け、フェイスブックなどのSNSを駆使して、リアルタイムで位置情報を公開している。
それだけでなく、スポンサーへの還元や社会貢献を大事にしていて、寄港するたびにスポンサーの関係者を招いて食事会を開いたり、地元の学校を訪れて子供たちに講演をしたりしていた。へえー、こういう研究のスタイルもあるのだなと、少ない研究費にぴいぴいしている私は感心しきりだった。
さて、今回の調査の概要はこうである。Ocearchの調査船を使ってサメを釣り上げ、計測機器とビデオカメラを取り付けて放流する。数日後に機器がタイマーで切り離され、海面に浮上してくるので、電波を頼りに探し出して回収する。そしてデータをダウンロードすれば、サメの未知なる生態を明らかにすることができる。ちなみにこの「切り離し回収」の方法は、私が大学院生の頃に確立させたものである(ちょっと自慢)。
調査の対象をイタチザメとかオグロメジロザメとか特定せずに、ただ単にサメとしか言えないところが魚類の調査らしく、面白いところだ。普通、動物の生態調査では、あらかじめ種類を特定して実施する。ツキノワグマの調査のために山に入ったけれど、やっぱりタヌキを調査して帰ってきたという人は聞いたことがない。
けれども魚類の場合だけは、すべてが釣果次第である。どんな魚が釣れるかは、ある程度予想はできても、決して特定はできないから、やってみてのお楽しみ。今回の調査でも、オオメジロザメが釣れて欲しいとか、イタチザメはそれほどでもないかなとか、いろいろ考えてはいたけれど、結局は釣れてから、その種に機器をつけるかどうか判断するしかなかった。
・・・・・・明日に続く・・・・
◇【HD】World Heritage: The Great Barrier Reef ◇
・・・https://youtu.be/n0xm6kqYmsM・・・
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■□参考資料: 世界をリードする日本のバイオロギング / 佐藤克文(3/3) □■
データロガーが小型化されるにつれ、水棲動物以外にも活用されるようになりました。加速度計を追加した記録計を鳥に取り付ける研究も増えていて、巣から飛び立った後に、どのような行動を取っているかが少しずつ明らかになっています。将来的にどんどん小さくなれば、昆虫にも取り付けられるかもしれません。アイデア次第で、ユニークな研究が期待できます。
私自身も、陸上動物であるチーターを研究する機会に恵まれました。これはあるTV番組の撮影スタッフといっしょに南アフリカで行ったもので、「チーターは本当に時速100キロで走れるのか?」という疑問を解明しようというものでした。GPS記録計を用いて測定したところ、結果は時速60キロくらいで、100キロには遠く及びません。スタッフはがっかりしていましたが、私は逆に野生動物の効率性の良さに注目しました。
過去には確かに記録されているので、本気になればチーターは時速100キロで獲物を追うこともできるのでしょうが、毎回その速度で走っていたら疲れ果ててしまいます。足をくじくなど、怪我をしてしまうかもしれません。動物だって楽をしたいはずで、それが60キロという速さなのでしょう。似たようなことが水棲動物が水中で泳ぐスピードの研究でも分かっています。
クジラからペンギンまで、水面からエサのある深度まで潜って戻ってくる平均速度を調べると、これがみんな秒速2メートルなのです。これが一番エネルギー効率が良いのかもしれません。けっして毎日ギリギリで過ごしているわけではなく、余裕をもって生きているわけです。
余裕と言う意味では、僕たちのような研究が社会的に認知されることが、日本の文化レベルを上げることに貢献しているんじゃないかと密かに思っています。というのも日本における動物の研究は、まず実用第一であることが求められることが多い。畜産業や水産業の生産性を高める研究こそが大切で、一見何の役にも立たない研究に価値を認めてくれる人は少数派でした。
しかしアメリカやヨーロッパには、ユニークな研究をしている先生がたくさんいて、それが、その国の科学レベルあるいは文化の奥深さにもつながっている。日本もそろそろ、その方向に目を向けてもいい頃ではないでしょうか。僕がウミガメで論文を書いた時は「それが何の役に立つのか」とも言われましたが、今では風向きも変わってきました。
・・・・・・明日“動物の知られざる生態に迫るバイオロギング”に続く
◆ Tagging White Shark Katharine ◆
・・・https://youtu.be/evotxXf5ePg・・・
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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
森のなかえ
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