Quantcast
Channel: 【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2020

めくるめく知のフロンティア・学究達 =045= / 渡辺佑基(15/mn)

$
0
0

地球に生息するアザラシから、チョウザメ、ウナギ、ワニ、ペンギン

つまり 北極圏―中国深部―マレーシア―フロリダ―南極まで

インディ・ジョーンズばりに世界の極地を飛び回り、兵器“データロガー”で野生動物を狙う

驚くべきデータを次々に発表する / 大型捕食動物の生理生態学者・渡辺佑基

【この企画はWebナショジオ_【研究室】「研究室」に行ってみた を基調に編纂】

(文=川端裕人/写真=藤谷清美 & イラスト・史料編纂=涯 如水)

◇◆ 南極なう!/ 特別編 渡辺佑基「ペンギンカメラでついに大発見!=2/2= ◆◇

南極なう!/ 特別編 渡辺佑基「ペンギンカメラでついに大発見!」 =後節=

 そこで今回の研究では、直接的な証拠になる短時間のビデオ映像と、間接的なシグナルになる長時間の頭の動きの両方をアデリーペンギンから記録した。まず、映像記録からペンギンのエサ取りを観察する。次に、映像で確認したエサ取りのタイミングを、同時に記録した頭の動きと照らし合わせ、頭の動きがエサ取りの正しいシグナルであることを確認する。そして最後に、長時間にわたる頭の動きのデータ全体からエサ取りのシグナルを検出する。一目瞭然だけど短時間しかもたないビデオカメラと、長時間もつけれど間接的でしかない行動記録計を、互いの短所を補うかたちで機能させた。

 調査は2010年12月から2011年2月にかけ、南極の昭和基地の近くにある袋浦と呼ばれるアデリーペンギンの営巣地で実施した。小型ビデオカメラと行動記録計を束ねてペンギンの背中にとりつけ、さらに同じ行動記録計を単体でペンギンの頭にもとりつけた。背中あるいは頭の羽毛をピンセットで持ち上げ、防水テープを粘着面を上にして差し込み、機器を据え付けてテープで巻きつける。この簡便な方法で水中でも外れないくらいしっかりと固定されるし、回収時にはテープをはがしてしまえば後には何も残らない。

 ビデオカメラとともにとりつけた行動記録計は、潜水深度とともに加速度、つまり揺れたり傾いたりといった動きの具合を記録する。ペンギンの頭で測った加速度から体で測った加速度を差し引けば、体に対する相対的な頭の動きがわかるので、エサ取りのシグナルとして使えるだろうというのがアイデアだった。14羽のペンギンからデータを集めることができた。

まずビデオ映像を確認すると、オキアミや魚を捕獲するシーンが多数映っていた。魚はほとんどがボウズハゲギスという種類であり、この魚はいつも海氷のすぐ下を泳いでいる変わった生態の持ち主である。驚いたのはペンギンのエサ取りの素早さと効率の良さである。約85分の記録の間に、あるペンギンはオキアミを244匹もぱくぱくと食べ続けたし、またあるペンギンはボウズハゲギスを33匹も捕えていた。さらにオキアミの群れに遭遇したときは目にもとまらぬ速さで1秒あたり2匹も捕えていた。

 次に、ビデオ映像で確認したエサ取りのタイミングを頭の動きのデータと照合したところ、両者はよく一致し、ビデオがなくても頭の動きだけからエサ取りの行動を検出できることがわかった。ペンギンがエサを捕まえるときは必ず頭を強く振るので、そのシグナルが行動記録計に記録されるのである。間接的なエサ取りのシグナルの正しさを映像を使って証明できたのは世界で初めてであり、画期的な成果といっていい。

 そして最後に、数日間にわたるデータ全体からエサ取りの行動を検出することにより、ペンギンがオキアミやボウズハゲギスをいつ、どこで、どのくらい捕えていたかを把握することができた。たとえばペンギンがオキアミを捕える深度は数mから80mまで幅広いことがわかったし、ボウズハゲギスはいつも海氷のすぐ下で捕えることがわかった。

◇ 最後に「大アタリ」が!(動画提供:国立極地研究所) ◇

・・・https://youtu.be/PaLA6QqzfdE・・・

◇ やっぱり最後に魚がアッ!(動画提供:国立極地研究所) ◇

・・・https://youtu.be/hOMlQNxHn1A・・・

動画再生不能の時は上記URL(⇑)をクリックしてください

 1回の潜水中に捕獲したオキアミの数を集計すると、ほとんどの潜水は獲物が10匹以下の「小アタリ」なのだが、ごくまれに40~50匹ものオキアミがとれる「大アタリ」が混じることがわかった。オキアミは海中で群れを成すので、ペンギンがうまくその群れに遭遇できたときにだけ「大アタリ」が出るのである。統計的には「べき乗分布」と呼ばれる分布モデルでオキアミ獲得数をうまく表すことができた。この分布の特徴は、ばらつきが大きすぎて平均値や代表値では全体像を表せない点にある。ペンギンがエサをたくさん集められたかどうかは、平均的な潜水ではなく、まれに起こる「大アタリ」の回数によって決まることを意味している。ペンギンにとってオキアミは当たり外れの大きい、予測の難しいエサだといえる。

 それに対してボウズハゲギスは、1回の潜水中に捕えた数のばらつきが少なく、安定したエサ資源であることがわかった。ただしこの魚に居場所を提供する海氷は、年によって張り出し具合が大きく変化する。そうした環境の変化はボウズハゲギスの分布をとおしてアデリーペンギンの生存率にも影響を与えるかもしれない。今後、ペンギンの調査を長期間にわたって継続することでペンギンと環境との関わりをよりよく理解したいと思う。

このようにビデオカメラと行動記録計の両方をペンギンにとりつけ、(1)ビデオで観察し、(2)ビデオと行動記録を照合し、(3)行動記録の全体からシグナルを検出する、という3段階を踏むことによって、ペンギンがいつ、なにを、どのくらい食べていたのかを初めて明らかにすることができた。

 この手法はペンギンに限らずいろいろな動物に応用が可能である。野生動物がどのような環境のもと、どんなエサをどれくらい食べていたかを調べることで、動物の生態をよりよく理解できるだけでなく、動物と環境との関わりをも明らかにすることができるだろう。私個人としては2013年のうちにホホジロザメやネズミザメなどの獰猛なサメの調査を予定している。サメがぐいぐい泳いで獲物を追いかけては捕える様子をサメ自身の視点から撮影する――そんなエキサイティングな映像を近いうちにきっとお見せできると思う。

次回“サメを調べにオーストラリアへ!”に続く・・・・・

◆ 情熱大陸_3/3_【渡辺佑基▽生物学界のインディ・ジョーンズが持つ世界】 ◆

・・・https://youtu.be/WAyaUfoXktw?list=PLw3QxSAmxbO08nPTUdZcf5cx_mRmcw6l2・・・

・・・・・・・・・・☆・・・・・・・・・・・

=上記本文中、変色文字(下線付き)のクリックにてウイキペディア解説表示=

・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・

前節へ移行 : https://blog.goo.ne.jp/bothukemon/e/8aa9a954504a70747dbe016b96f9fc85

後節へ移行 : http://blog.goo.ne.jp/xxxx/046/xx

----------下記の姉妹ブログ 一度 ご訪問下さい--------------

【壺公夢想;如水総覧】 :http://thubokou.wordpress.com

【浪漫孤鴻;時事自講】 :http://plaza.rakuten.co.jp/bogoda5445/

【疑心暗鬼;如水創作】 :http://bogoda.jugem.jp/

下線色違いの文字をクリックにて詳細説明が表示されます=ウィキペディア=に移行

================================================

  

・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽  憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・

森のなかえ

================================================


Viewing all articles
Browse latest Browse all 2020

Trending Articles