地球に生息するアザラシから、チョウザメ、ウナギ、ワニ、ペンギン
つまり 北極圏―中国深部―マレーシア―フロリダ―南極まで
インディ・ジョーンズばりに世界の極地を飛び回り、兵器“データロガー”で野生動物を狙う
驚くべきデータを次々に発表する / 大型捕食動物の生理生態学者・渡辺佑基
【この企画はWebナショジオ_【研究室】「研究室」に行ってみた を基調に編纂】
(文=川端裕人/写真=藤谷清美 & イラスト・史料編纂=涯 如水)
◇◆ 南極なう!/ 特別編 渡辺佑基「ペンギンカメラでついに大発見!=1/2= ◆◇
南極なう!/ 特別編 渡辺佑基「マグロは時速100キロで泳がない」 =後節=
実際のところ、マグロの平均時速7キロといえば、水中では決して遅くはない。水は空気に比べて800倍も密度が高いので、水中では空中の800倍も多くの抵抗がのしかかる。しかも抵抗は速度の2乗に比例して上昇するので、速度が少し上がるだけで、抵抗はぐんと急上昇する。もしも海の動物が本当に時速100キロを達成しようとすれば、巨大な水の抵抗に逆らうために、とんでもなく高出力の「エンジン」(筋肉や心臓を中心としたエネルギー発生機構)が必要になる。もちろんマシンではない生身の動物はそんなものを持ち合わせていない。
だから陸上で生活する私たちの感覚で「なんだマグロも大したことないね」などとうそぶけば、それはマグロに対して失礼にあたる。水中と陸上とでは、そもそも世界が違うのである。
ではどうして、そんな単純なことがいままでわからなかったのだろう。
海の動物たちは陸上の動物(たとえばシカやタヌキ)と違って観察することができないため、行動を調べることがひどく難しい。
たとえば「マグロ時速80キロ」の情報源を辿っていくと、1960年代にボートの上でマグロを釣り上げ、ギュルギュルとリールの糸が巻き出されていく速度からマグロの速度をエイヤと推定していたことがわかる。当時はそれで精いっぱいだったのはよくわかるが、そのようなラフな方法では、海の動物の自然な行動を精度よく測ることはできない。
1980年代に入り、動物の体に直接センサーを取り付けるバイオロギングと呼ばれる研究手法が考案され、1990年代、2000年代を通じて発展し、広く普及した。先に挙げたカジキやマグロやシャチの遊泳スピードの計測値(すべて平均時速8キロ以下)はこの手法によるものだし、かくいう私もバイオロギングを主要な武器とする海洋生物学者のひとりである。最新のデジタル技術を駆使した計測手法の登場により、ようやく海の動物たちの本当の姿が見えてきたといえる。
マグロの速度はほんの一例である。ほかにもいままでの常識にかからない、アッと驚くような動物たちの真実は次々と明らかになっている。46日間で地球を一周するアホウドリ、2000mも潜るアザラシ、10時間も息をとめるウミガメ――。なぜ、そんなことができるのだろう。なぜ、そんなことをする必要があるのだろう。すごく言いたいけれど、あまりしゃべると本のネタバレになってしまうので、今回はこのへんで
◇ アデリーペンギンの生態〜suicaのモデル ◇
・・・https://youtu.be/MDzedppLYLc・・・
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■□ 南極なう!/特別編 渡辺佑基「ペンギンカメラでついに大発見!」 =前節= □■
「南極なう」の最終回でペンギンの調査の成果を発表できたときにはぜひとも紹介したいと書いたけれど、そのときがきました! ペンギンにビデオカメラをとりつけて海中のエサ取りを観察したという論文が1月22日付で「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に掲載された。PNASは多くの研究者にとって憧れの権威ある科学雑誌であり、私なんかに手が届くはずがないと思っていたので(おそらく駄目だろうと思いながら投稿したのである)、正直いってうれしくてしょうがない。そこで今回はうれしさにまかせて「南極なう」の特別編。論文の内容をできるだけわかりやすく紹介したいと思う。
論文のタイトルは「Linking animal-borne video to accelerometers reveals prey capture variability」。日本語に訳すと「動物装着のビデオと加速度計をリンクさせることによりエサ取りのバリエーションがわかる」となり、何だか緊張感に欠けた感じになってしまうが、英語としてはカッコいい渾身のタイトルをつけたつもりである。ともあれこの論文では、南極のアデリーペンギンに小型ビデオカメラと行動記録計の両方をとりつけ、ふたつの情報をうまくリンクさせることにより、ペンギンがいつ、どこで、どんなエサを捕えていたかを明らかにすることができた。
この論文の最大の意義は、野生動物のエサ取りの行動を初めて長時間にわたってモニタリングできた点にある。
野生動物がどんなエサをどれだけ食べたかは、健康状態あるいは生死を決定するとても重要な情報なので、なんとかそれを連続的に記録しようと過去20年以上にわたりいろいろな手法が試されてきた。
たとえば最も直接的な方法として、動物の背中にビデオカメラをとりつけ、動物の視点からエサ取りを観察するやりかたが試されてきた。代表例はナショナル ジオグラフィックの開発した動物用ビデオカメラ「クリッターカム」だろう。この小型かつ防水の特殊なビデオカメラはアザラシ、ペンギン、ウミガメなど、いろいろな海洋動物にとりつけられ、エサ取りのシーンを数多く映像に収めてきた。しかし問題は記録時間が短いことである。ビデオカメラは消費電力、消費メモリーともに大きいため、動物につけられるくらいまで小型化すると、記録時間はたった数時間になってしまう。
あるいは別の方法として、エサ取りのタイミングに合わせて変動する間接的なパラメータを記録するやりかたが試されてきた。たとえば口でエサを捕える動物は、エサ取りの瞬間に頭が激しく動くので、頭の動きを記録すればエサを取ったタイミングを推し測ることができる。あるいは体温の温かいペンギンやアザラシが体温の冷たい魚などのエサを飲みこむとき、胃の中の温度が一時的に下がるので、胃の温度を連続的に記録すればエサを取ったタイミングを推定できる。この場合データは比較的シンプルであり、ビデオと違って長時間記録できるのが最大の強みである。しかし問題は、間接的なシグナルが本当にエサ取りに対応しているのか確認できないことである。頭の動きのシグナルは、ひょっとしたら何かを探して首を振っただけかもしれない。胃の温度が下がるシグナルは、もしかしたら水を飲み込んだだけかもしれない。
・・・・・・明日に続く
◆ 情熱大陸_3/3_【渡辺佑基▽生物学界のインディ・ジョーンズが持つ世界】 ◆
・・・https://youtu.be/WAyaUfoXktw?list=PLw3QxSAmxbO08nPTUdZcf5cx_mRmcw6l2・・・
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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
森のなかえ
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