DNAを分析すると 生物の進化の歴史を辿れる 人間でも同じこと
人間の細胞にある「ミトコンドリアDNA」というモノを扱って
ミイラや古い人骨などからそのルーツを解明、「人間とは何か」を問う
国立科学博物館人類研究部研究グループ長 / 篠田 謙一
【この企画はWebナショジオ_【研究室】「研究室」に行ってみた を基調に編纂】
(文=川端裕人/写真=藤谷清美、& イラスト・史料編纂=涯 如水)
◇◆ 篠田謙一(第一回) / インカ帝国の拡大はミイラのしわざ!? =1/2= ◆◇
各者一様に、膝を抱え、肘を曲げている。
手首や肘のあたりを縄で縛られ、おそらくは足も同様だと思われる。
全員、皮膚はきれいに残っており、髪の毛は剃られている。歯は実に保存状態がよさそうだ。
ムンクの有名な絵画「叫び」を思わせる表情にはぎょっとさせられるが、死後硬直で咬筋が固まってしまったせいで、実際にこのような表情で苦悶しながら息絶えたわけではない。
ある者の、落ちくぼんだ眼窩の奥には、眼球がそのまま乾燥して残っている。眼球は乾燥する過程ですぐに潰れてしまうので、これはとても珍しい。
バードキャッチャーという「個人名」で呼ばれる者は、鳥を捕らえる網を持っており、生前そのような職業だったのだろうと推測される。同時に、耳飾りができるよう耳を大きくしていることから、インカ帝国のオレホン(貴族)だったのではないかとも言われている。
以上、15世紀末から16世紀初頭、つまり500年ほど前に、インカ帝国末期の版図(はんと)だった北部アンデス高地、コンドル湖周辺に住んでいたチャチャポヤ人の墓地に埋葬されていたミイラだ。発見されたのは1996年とつい最近である。
このたび、国立科学博物館の「インカ帝国展」で、「来日」することになったため、ぼくはこれらのミイラたちを知った、というわけである。
ちなみに、チャチャポヤとは、インカの言葉で「雲の人」を意味するそうで、彼らの住んでいた場所は、常に雲に覆われるような、いわゆる雲霧林だった。アンデスといっても東側、つまりアマゾン川側の湿潤な地域なのだ。そんなところでミイラを作る文化があったというのが、まず最初の驚きだった。
さて、ミイラ、といえば、エジプトである。
そう連想する人は多いだろうし、ぼくもその一人だった。
しかし、世界には三大ミイラ地帯というのがあって、エジプトはその一つに過ぎないという。
ほかの二つがどこかというと、まず中国西域のシルクロード地域。そして、新大陸ペルーからチリにかけてのアタカマ砂漠。さらにいえば、15世紀頃、南米最後にして最大の帝国インカが拡大する過程でミイラ文化が伝搬した広大な地域も含まれる。
エジプトのミイラの起源は5000年前であるのに対して、アタカマ砂漠では8000年から9000年前にもさかのぼるそうだ。とすると、実は新大陸・南米のミイラというのは、実に由緒正しい素性の持ち主といえそうだ。
冒頭に記した500年前のアンデス高地のミイラは、ミイラ文化発祥の地であるアタカマ砂漠の乾燥地帯ではなく、雲霧林と呼ばれる霧や雨の多い高地で、保存に不向きであるにもかかわらず、あえてミイラを作っている。「三大」の名を冠されるだけあって、どうやら「ミイラはエジプト」と考えてしまうステレオタイプな知識からは想像できないくらい、複雑で含蓄深い背景がありそうだ。
1998年から南米のミイラや人骨をもちいて人類学の研究を行っている国立科学博物館人類研究部の篠田謙一・人類史研究グループ長に、お話を伺った。
国立科学博物館自体は東京の上野にあるわけだが、研究部門が置かれているのは茨城県つくば市だ。昨年、東京の新宿から移転したばかりで、真新しく大きな建物だった。その中には巨大な収蔵庫もあり、篠田さんの研究対象である、各地で出土した人骨などが所狭しと収納されていた。同時に、分子生物学的な研究のため最新の機器をそろえたラボもあり、土臭さと「理科室」ぽさを同時に感じる、不思議な空間だった。
・・・・・明日に続く・・・・
◇ 遺伝子から見る日本人のルーツ…Y染色体・ミトコンドリアDNAハプログループとは? ◇
・・・https://youtu.be/WuezDMlGAKM・・・
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//////参考資料///////
■□ 参考資料: 篠田謙一さんが語る、ミトコンドリアDNAでたどる人類の起源(1/5) □■
ミトコンドリアDNAでたどる人類の起源
DNAの分析技術が進歩し、現代人はもとより古人骨に残された遺伝子(ミトコンドリアDNA)から日本人のルーツ、そして人類拡散の経路が明らかになった。篠田謙一さん(国立科学博物館)にその物語を聞く。
分子生物学が巻き起こした人類のルーツ革命
これから私たちは、長く、壮大で、不思議な旅にでかけます。人はどこで生まれ、どのようにして世界へ広がっていったのか。あなたの祖先はどのような人たちで、日本人のルーツは一体どこにあるのか。そんなことをこの旅で探っていきたいと思います。あなたがこれまで教科書で勉強してきたことは、もしかしたら少しお荷物となってしまうかもしれません。とりあえずそうしたものは横に置いて、今回はどうぞ身ひとつでおつき合いください。
ナビゲーターは分子人類学がご専門の篠田謙一さん。「分子生物学」はDNAを解析する学問ですが、「分子人類学」はそうしたDNA分析をもとに人類のルーツなどを研究している学問です
どうしてこの研究にDNA分析が欠かせないのか? そのことをまず篠田さんから説明していただきましょう。
DNA分析の話で一番おもしろいのはオサムシという虫です。この虫は非常にいろんな種類がいるんですが、ある研究者が日本中にいるオサムシを集めてDNA分析をしました。そうしたらオサムシたちの姿かたちが種のレベルではDNAの近縁性と関係なく、バラバラだったことがわかったんです。
ものすごく似ているかたちで先祖も一緒だったと思えるようなやつが、実はぜんぜん違うDNAを持っていたりする。だから分類学の研究者も、今ではみんなDNA分析を使うようになったんですね。
これと同じことが人類についても当てはまります。これまでのように人のルーツを化石からだけ探ろうとすれば、私たちはどうしても見た目や姿かたちにとらわれなければなりませんでした。
DNA分析のすごいところは、代々受けつがれる遺伝子情報そのものを見ることによって、人のルーツを探れる点にあります。実際、分子生物学が90年代に巻き起こした革命は、私たちにつながる現生人類誕生の考え方を一夜にして一変させるものでした。それについては後ほど、またあらためて触れましょう。
明日に続く・・・・・
遺伝子に隠された日本人の起源 ~篠田謙一~ ◆・・・https://youtu.be/bdLJquxFdvQ・・・
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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
森のなかえ
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