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Channel: 【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》
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現代の探検家《小林快次》 =05=

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○◎ Great and Grand Japanese_Explorer   ◎○ 

○ 世界中を飛び回り、恐竜の姿を求める / 小林快次 ○

◇◆ 第二回 恐竜化石の“掘り出し方” =2/2= ◇◆

 巨大な腰の骨を発見する。 しかし、待っていたのは、その期待に反した結果だった。  腰の骨しか残っていない・・・。 

 胴体や頭があるはずの場所をいくら掘っても、軟らかい砂岩で、骨が出てこない。 先端にハンマーのような「こぶ」がついているはずの尻尾はどうかと、腰の後ろの部分を一生懸命掘ってみる。

 しかし、尻尾も無くなっている。 まるで、ちょうどお腹のところだけを残して、すべてを何かに切断されたかのように、腰の部分しか残っていない。

 悔しさのあまり、奥歯を噛みしめる。 このヨロイ竜の頭骨や尻尾は、死後流されてしまい、保存されなかったのだろう。

 「腰の部分だけでもすごい発見だよ! これを掘り出して研究しよう」。 ユンが私の肩を叩きながら、優しく声をかける。 さっきよりもハンマーを叩く速度は落ちたが、目の前の巨大な腰の骨を掘り出すことに集中した。

 さっきまで、この巨大さに歓喜していたが、今はそれが憎しみに変わっている。

 「こんな大きな腰の骨・・・。大きいだけだ」

次々と見つかる不可解な骨

 周りの岩を外側から骨に向かって掘り込み、腰の全体像を把握する。 どんなに周りを掘り込んで小さくしても、直径2メートルほどの大きな固まりよりも小さくできない。 これでは掘り出したとしても、運び出すことすらできない。

 そこで私たちは、その腰の固まりを何とか分割できないかと模索する。 狭い骨と骨のすき間を探し、それを皮切りに、大きな固まりを小さな固まりにして取り出す作業だ。 世界各地で恐竜発掘を行っている私たちでも、かなり困難な作業だった。

 腰の骨がちょうど「かご」のようになっていて、その中をほじくっていく。 本来なら何も無いはずの腰の中。 それなのに、次々と部位不明の骨が見つかる。

 「邪魔だな・・・」とつぶやきながら掘っていると、表面がごつごつしている骨にぶち当たる。 こんな骨、腰の中にあるはずがない。

 おかしいなと思いながら、そのごつごつしている骨の表面を出してみると、大きな卵を縦に二分した片割れのような形をしている。 最初はわからなかったが、もう半分が出てきて、それが何か、ようやくわかった。

 「ヨロイ竜の尻尾だ!!!。 尻尾の先端についている、ハンマーのようなこぶだ!」

 こんなこともあるもんだと感心しながら、こぶの先端からたどっていくと、つながった尻尾の骨が続く。 なぜなのかはわからないが、尻尾は根元で180度折れ曲がり、腰の骨の中へと伸びていた。 そして、尻尾の先にあるこぶまでが残っているという偶然だった!

 この尻尾を回避しつつ、大きな固まりを分割していかなければいけない。 運良く、尻尾の真ん中あたりで亀裂が入っている。 この亀裂を利用すれば、ダメージを最小限にして尻尾を取り出し、固まりを分割できるかもしれない。

 これまで1人でやっていた尻尾の発掘作業を、ユンと2人で手分けした。 ユンは瘤(こぶ)の部分を、私は尻尾の脊椎の部分を担当した。 どんどん掘り込んでいくと、尻尾の保存状態の良さがわかってくる。 尻尾は複数の椎骨(ついこつ)でできているが、重い骨の固まりであるこぶを支えるように、ずらっとつながっている。

 掘り進んでいくと、表面がごつごつした骨が出てきた。 「こぶにたどり着いたかな?」と顔を上げ、ユンの顔をみる。しかし、彼が作業している骨は、私の目の前にあるごつごつしている骨から、数十センチ離れている。

 こぶがもう1つあるのかと疑問に思いながら、ごつごつした骨の周りをもう少し掘り込んでいく。

 どうもユンが作業しているこぶとは違う。 表面のごく一部だが、露出した骨の形はまるで皿のような形をしている。その“皿”の下側はざらざらだが、内側はざらざらしていない。 不可解な形である。

 「ユン、何だと思うこれ?」

 するとユンも、「こっちからも、三角錐の表面がざらざらした骨が出てきた。 こぶじゃない。 ヨシの骨とつながっているのかな?」

 しばらく2人に沈黙が走る。 顔をかしげ、角度を変えながら、この骨が何か考える。 顔をほぼ逆さになるくらい回したときに、パズルが解ける瞬間が来た! ひらめいた私は大きく目を見開き、ユンの顔を見た。

 まるで鏡を見るかのように、ユンも私と同じ顔をしている。

 「頭だ!!!」  ・・・・・2人は叫んだ。 

 

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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽  憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・

森のなかえ

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