○◎ Great and Grand Japanese_Explorer ◎○
○ 世界中を飛び回り、恐竜の姿を求める / 小林快次 ○
◇◆ 第二回 恐竜化石の“掘り出し方” =1/2= ◇◆
何とか暗くなる前にキャンプにたどり着いた。足は文字通り、棒のようになっていた。汗が塩の結晶と化し、頬にこびりついていた。 顔を洗ってもジャリジャリと音がする。 メインテントからいい匂いがする。晩ご飯ができているようだ。 顔を洗い終えた私は、その匂いの方向へと歩き出した。
メインテントの前では、この調査に参加している研究者がはだしになって座り込み、日が沈みかけて冷たくなった砂の中へ素足を潜り込ませ、冷たいビールを飲んでいた。
「ファルコンズ・アイ、今日はどうだった? だいぶ歩いていたけど、何か見つけた?」
米国サザンメソジスト大学のルイス・ジェイコブスが頭のバンダナを外し、笑いながら語りかける。 私がよほど疲れて見えたのか、それとも、何も発見していないという落胆ぶりが表情に現れていたのだろう。
この調査は、「ユン」というニックネームで呼ばれる、韓国地質資源研究院のイ・ユンナムが中心となり、世界中の恐竜研究者をかき集めて結成された国際調査隊によるものだった。 大きく、韓国チーム、米国チーム、カナダチームの3つで構成され、私は米国チームとして参加していた。 何を隠そう、ルイスは私の大学院の師匠で、ユンは先輩だった。
私が博士号を取得したとき、博士論文の審査委員が5人いた。 主査がルイスで、他の4人もこの調査に参加していた。 その中には、カナダ、アルバータ大学のフィリップ・カリーや、モンゴル科学アカデミーのリンチェン・バルズボルド、米国ペロー博物館のトニー・フィオリロが含まれる。
また、この調査に参加していた中国地質科学院のル・ジュンチャンも、サザンメソジスト大学で博士号を取っている。
つまり、私、ジュンチャン、調査の中心を担うユンの3人は、サイエンティフィックな兄弟なのだ。 ルイスは、アジアの恐竜研究の次世代を担ってもらいたいという思いで、私たち3人に博士号を与えていた。みんなの夢が叶ったのが、この調査だった。
「まあ、いくつか化石は見つけたよ。気になるのは、肋骨・・・。ま、肋骨1本かもしれないけれど。でも、もしできるならもう1人2人、助っ人が欲しいかな。 砂岩なんだけど、砂粒が細かくて、流れが遅いところでできたものだ。もしかしたら、もっと骨が埋まっているかも」
すると、ジュンチャンが手を上げた。 「俺が行くよ」
巨大な腰の骨を発見するも・・・
次の日、私たちは肋骨の場所へと戻った。 昨日と同じ、雲1つない暑い日。景色がいいのが、せめてもの救いだった。
昨日掘った肋骨を掘り起こす。 ジュンチャンが声を上げた。 「これは良い化石だ!」 相変わらず、キレイな骨だと思う。
時間が経つのを忘れて、骨の周りを掘っていった。 1本の肋骨が2本になり、3本になっていく。 それもかなり大きい。 これで終わるかと思ったら、さらに平たい大きな骨が出てきた。 2人で顔を見合わせる。 「なんだこれ?」
さらに掘り続けると、その平たい骨は1メートルほどの長細い骨だとわかった。 腰の骨の1つである腸骨だ。 しかも、肋骨と腸骨がつながっている。 私たちは、これはバラバラの骨ではなく、骨がつながった状態の全身骨格であることを確信した。 私は1人でガッツポーズをした。
「やっと見つけた! 全身骨格だ」
腰の幅だけで2メートル近くあり、形から、この恐竜がアンキロサウルスのようなヨロイ竜であることがわかった。 モンゴル南部のゴビ砂漠にある、ここヘルミンツァフで以前発見された「タルキア」という恐竜である可能性が出てきた。 ただ、それを確認するには、さらに特徴のある骨が必要だ。何でもよいが、できれば頭骨が欲しい。私の欲は増してきた。
腰の骨の周りを掘るだけで1日かかってしまった。 全身骨格であることを確信した私たちは、キャンプに戻ってみんなに報告した。 みんなは半信半疑ではあったが、さらに数人、人を送り込むことに同意した。
その日から、この骨格を掘り続けた。 発掘地を広げるために、削岩機と発電機を投入する。 風が強く、これまで掘ってきた砂が舞う。 目や鼻、穴という穴に砂が舞い込んでくる。ゴーグルを付け、顔をバンダナで巻き、砂が入らないようにする。
モンゴル人がひもを引き、発電機をかける。爆音が響き、削岩機を持っている私に親指を立てて、ゴー・サインを出す。 斜面にいとも簡単に刺さる削岩機。これで一気に崖を崩し、作業を進める。目の前の削岩機が削る新しい岩に集中し、この骨格が全身であることを期待する。
しかし、待っていたのは、その期待に反した結果だった。
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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
森のなかえ
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