≡ 世界の人口は2050年までに90億人に達し、十分な食料を確保できるのか ≡
= フードスタンプ受給者が、1億人を超すと言われている米国 =
- 低所得者向けの料理本 : 「1日4ドルで作れる」 -
ここに一つの未来図がある
【この企画はWebナショジオ_2014年4月~2014年12月期、35回記載に追記・補講した】
(文=Rebecca Rupp/訳=小野智子 イラスト:涯 如水)
◇◆ 「1日4ドルで作れる」低所得者向け料理本、米国で大ヒット ◆◇
米国では、低所得者向けの食料配給券(フードスタンプ)を受給する人が4800万を超えている。正式には「補助的栄養支援プログラム(SNAP)」と呼ばれる政府の公的扶助で、受給者が受け取る食品購入費は月額平均133ドル(約1万3300円)だ。
計算すると、1世帯が1日に使えるのはわずか4ドルほど(約400円)。この金額でお腹を満たすには、まず何よりも調理の仕方を知らねばならない。テレビの料理番組のような華やかなパフォーマンスではなく、乾燥豆や根菜類、安い骨付き肉を利用する素朴な調理法だ。おばあちゃんの時代には当たり前の知恵だったのに、現代の私たちが学ぶことのなかった知識である。
そこに現われたのが、29歳の若き救世主、リアン・ブラウンだ。カナダの社会活動家だった彼女は、その後ニューヨークで食料政策を専攻。食料調達プログラム(food access)のボランティアとして活動するうち、支援を受ける人々が調理や正しい食生活についてどんな知識を必要とし、望んでいるかを知った。
そうして1冊の料理本『Good and Cheap: Eat Well on $4/Day(安くておいしい、1日4ドルで作れる料理)』が生まれた。当初は無料ダウンロード可能なPDFファイルで提供されたこのレシピ集は、たちまち大きな話題を呼び、20万ダウンロードを記録。ブラウンのウェブサイトが数回にわたりダウンしたほどだった。
そこで彼女は、あることを思いつく。人々が喜んでレシピ集を買ってくれるのなら、その売上を元手に書籍化すれば、コンピューターを持っていない人たちもレシピを手に入れられると。
こうして始まったのが資金調達サイトKickstarterを活用した『Good and Cheap』のキャンペーンだ。目標額を1万ドル(約100万円)に設定し、5月中旬にスタート。7月中旬 に終了するまで2カ月間で5636人の出資者から14万5000ドル(約1450万円)を集めた。これで書籍版6000部の無料配布が可能となったばかりか、さらに2万5000部を非営利組織向けに破格の4ドル(約400円)で提供する資金ができた。これまでに450のNPO団体から依頼を受けている。
7月末にブラウンと会ったとき、彼女はまだちょっと興奮していた。「キャンペーンは最初の36時間で目標額を達成しました。“記録破りの成功”が毎日塗り替えられていったのです」
『Good and Cheap』が異彩を放つのは、単なる「フードスタンプ受給者のためのレシピ」ではない点だ。「1970年代に教会が作った料理本を繰り返しコピーしたような代物では、食欲がそそられるわけはありません」と彼女は言う。
オリジナルのPDF版と同様、年末に出版予定の書籍版も、美しくデザインされ、おしゃれな装丁に仕上がるに違いない。シュリンプ&グリッツ(粗挽きのコーンミールで作ったお粥) や野菜たっぷりのジャンバラヤ、こんがりスパイシーなカリフラワー、コーヒーケーキなど、ヘルシーなだけではなく、ほっぺたが落ちそうなレシピ満載だ。自分にも作れそう、と誰もが思える親しみやすい雰囲気に溢れている。
Kickstarterでの圧倒的な支持に加えて、『Good and Cheap』はニュースサイト、グルメ情報サイトなどでも話題を集めた。お金をかけずにきちんとした食事がしたいと思っている、すべての人に役立つ本として注目されたわけだ。
しかし、ブラウンは「料理本を買えない人たちのための、おしゃれな料理本をつくる」という本来の目的を見失ってはいない。「私宛てにたくさんのお便りが届きました。微笑ましいメールも痛ましいメールもあるけれど、どれも、こういう食事の仕方をもっと若い頃から知っていたならよかったのに、というものです」と彼女は話してくれた。
この料理本の前書きで、ブラウンは率直に優しく読者に語りかけている。
「体を育んでくれるおいしい食事ができない、そんな障害がいっぱいあります。お金だけの問題ではありません。限られた食費で食事を作るのは容易なことではないし、仕事で疲れ果てれば食べることすら苦行になる時だってあります。そんな時にこそ、この本で紹介したレシピや調理法が役立って、食事作りの負担が減り、面倒な作業が少しでも楽になるよう、私は願っています」
このキャンペーンの最中に結婚したばかりのブラウンは、目下、書籍版の年内発行を目指して奮闘中だ。そして次は、この料理本が届けられたグループや食料配給所で起こったこと、本を手にした人々が学んだものについて書きたいという。
彼女ならやり遂げるに違いない。この本がどんなところに行き、誰がそのレシピを使ったのか、是非知りたいと思う。いま購入したその本が届くのを心待ちにしているところだ。 (文=Maryn McKenna/訳=小野智子)
・・・・・・“アメリカの飢餓の実態が浮き彫りに”、明日に続く
_ 【節約】安く手に入るもので美味しいごはん【簡単レシピ】 _
・・・・・・ https://youtu.be/NHjFEqazWK0 ・・・・・・
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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
森のなかえ
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