〇◎ “命のことを知らずして、命の大切さは理解できない” ◎〇
= 探検的調査を実践する “探検昆虫学者” 西田賢司 =
【この企画はWebナショジオ_“「コスタリカ 昆虫中心生活」” に追記・補講し、転載した】
☠ 中米コスタリカで新種の昆虫を見つけまくる男! 「バックマン」 ☠
曰く 『昆虫は、僕たちに自然の変化を教えてくれる一番身近な存在です』
◇◆ =095= ポップアートなツノゼミ ◆◇
今回は、ツノゼミの中でも、ポップアートのように「明るく、はじけた」アディペ・ゼブリナ(と最後にもう1種)をご覧いただこう。 アディペ属は、中南米に分布していて、クスノキ科の植物でよく見かける。ツノは幅が狭めのヘルメット型で、表面はザラッとしている。多くの種は、今回紹介するアディペ・ゼブリナのように、黒地にオレンジや赤などのコントラストが強い模様を身にまとっている。警戒色とも言えるその派手さが、アディペ属の特徴のようだ。
このツノゼミの食草であるクスノキの仲間には、ぼくの好きなシナモンや月桂樹(ローレル)と言った香辛料となる木があるほか、防虫効果のある樟脳(しょうのう)を含む木もある。そうした木々の汁を吸っているということは、天敵が嫌がる強烈な成分を体内に蓄えている可能性が高い。だから、アディペ属のツノゼミは、幼虫を含め、派手な装いを身に着けることで、敵に警告を発しているのかもしれない。
さて、このツノゼミのメスはクスノキの若い茎の中に卵をまとめて埋め込み、その上にジッとして寄生バチなどの天敵から守る。卵からかえった小さな幼虫たちは、母親に見守られ、群れながら茎から汁を吸って育っていく。たまに幼虫たちが排泄する「オシッコ」(甘露)に、アリがやって来ているのを見かける。
あるとき、メスが守っておらず、まだ孵化していない卵を見つけた。「寄生バチに寄生されているのかな~?」と思い、実体顕微鏡で卵の様子を確認してみることにした。すると、ツノゼミの卵として予想だにしなかった模様があるではないか!
卵の一部(幼虫が孵化してくる部分)が口を開けたようになっていて、網目になっている。これまでに幾種かのツノゼミの卵を観察してきたが、たいていは白い薄皮があるだけで、模様になっているものを見た記憶はない。その後、卵を飼育してみたところ、寄生バチは出てこず、小さなツノゼミの赤ちゃんたちが出てきた。寄生バチが出てくることを期待していたので残念だったが、この卵のデザインは、スゴく刺激をくれた。
これからツノゼミの卵を見るときの視線が違ってくること間違いなし! また、今回の原稿を用意するに当たって、これまで撮った大量のツノゼミ写真を見直したところ、コスタリカの他の地域にはアディペ・ゼブリナにそっくりで似たような種がいる可能性が高いという感触をもった。詳しく調べてみる楽しみが増えた♪
Ӂ イモムシのうんちにそっくりなツノゼミ Ӂ
チョウやガの幼虫であるイモムシやケムシたちは、草木の葉などをたくさん食べ、そしてたくさん排泄する。そんなフンが、葉の上に落ちていたり、茎にくっついていたりすることがある。 形はほぼ球形か気持ち楕円形で、大きさは2~5ミリ程度。色は茶色から黒っぽいこげ茶色をしていて、表面はシワが入ったように少しデコボコしている。
そんなフンにそっくりなツノゼミが、中南米の熱帯雨林から雲霧林に生息している。ムシノフンツノゼミ(Bolbonota属)の仲間だ。 ここでクイズです。下の2枚の写真、どっちがツノゼミだかわかりますか? 答えは最後のページに拡大写真とともに発表しますが、今回はこのムシノフンツノゼミの卵や幼虫を含め、興味深い生態を紹介します。
ムシノフンツノゼミの仲間はどれも「シンプル」な装いながら、たくさんの種がいるため、種を同定するのが極めて困難。まだまだ新種だらけのグループと言っていい。でも詳しく見ていくと、かたちも大きさも色も種ごとで微妙に違っていて、調べがいがある。
ツノは翅の上後方に伸びるヘルメット型で、デコボコして、シワが入ったようなイモムシのフンのような質感がある。脚は平たく幅広で、止まっているときに全体を丸く見せるのに役立つ。番外編13で紹介したマンマルコガネに繋がる「ロボット系」の形態だ。
ガの幼虫を飼育して、ほぼ毎日フンと向き合っているぼくは、フンに擬態しているこのツノゼミのことも愛おしく感じる。 葉の上にぽつん!と黒くて丸い物体があると、イモムシのフンなのか、ムシノフンツノゼミなのかわからないことも多い。そんなときは顔をフンに近づけて、ジーッと吟味してみる。それでもわからなければ、指でそーっとつまんでみる。つまむ直前にピョーン!と瞬間移動するように飛んで逃げれば、それはムシノフンツノゼミだ。興奮する(笑)。
ムシノフンツノゼミは、卵も独特だ。1匹から数匹のメスたちが、産んだ卵を近くで見守っているところに出会う。 メスは、塊で産んだ卵を、白っぽいマシュマロかムースのような少し粘着性のある泡状の物質で「デコレーション」する(この様子の動画を下に掲載)。この泡状の覆いは、全体の大きさが3~7ミリ程度と小さいが、見た目はカマキリの卵嚢のような雰囲気がある。
なんのために泡状の物質で卵を覆うのだろう? これまでに紹介してきたツノゼミの場合、メスは茎や葉脈の中に卵を埋め込み、卵を抱くように守っていた。今回のムシノフンツノゼミは植物の組織の中に卵を埋め込まない。むき出しになった卵を乾燥や風雨、アリやアシナガバチなどの捕食性の天敵から守るために、覆いをするのだろう。
でも覆いは、すべての天敵を抑える役割を果たすわけではない。卵に寄生する小さなハチは、覆いの隙間か薄くなった部分から産卵管をムシノフンツノゼミの卵へと突き刺し、寄生する。あるヒラタアブ(ハナアブ科)の一種の幼虫は、覆いを破って中の卵を食べつくし、オモシロイことに覆いの中でサナギになるのである(下の写真)。
ぼくはこれまでにムシノフンツノゼミの幼虫を、10以上の植物の仲間(科)で確認してきた。幼虫たちは白い粉を噴いた装いで群れていて、黒い筋模様が入っているものが多い。ぼくの観察によると、どうやら住んでいる植物の仲間によって幼虫の模様やかたちに特徴があり、それぞれ種が異なるようだ。
さて、ツノゼミの卵の天敵になりうるアリたちも、幼虫や成虫が排泄する甘い「オシッコ」(甘露)を求めてやってくる。あたかもツノゼミたちの世話をしたり、守ったりするかのように周りをウロウロしている。白い幼虫たちは、最後の脱皮を終えると黒っぽいフンに変身!翅が生えていて、飛べるようになる。
イモムシもたくさん、フンもたくさん、さて、はて、どれだけのムシノフンツノゼミたちがいるのだろう~?(ちなみに、日本では甲虫のコブハムシやトゲハムシの仲間にフンに似ているものがいる。)
・・・・・つづく
_ San Jose Costa Rica _
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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
森のなかえ
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