〇◎ “命のことを知らずして、命の大切さは理解できない” ◎〇
= 探検的調査を実践する “探検昆虫学者” 西田賢司 =
【この企画はWebナショジオ_“「コスタリカ 昆虫中心生活」” に追記・補講し、転載した】
☠ 中米コスタリカで新種の昆虫を見つけまくる男! 「バックマン」 ☠
曰く 『昆虫は、僕たちに自然の変化を教えてくれる一番身近な存在です』
◇◆ =091= 少年少女よ、森へ行こう、感覚を研ぎ澄まそう! ◆◇
この夏は日本に一時帰国していた。さまざまなイベントや出会いがあったが、なかでも特に印象的だったのが群馬県桐生市で行われた昆虫探検イベント(一般社団法人Jewel Beatles主催)。今回はその様子を、ぼくからのメッセージを少し織り交ぜて紹介しよう。
イベントは8月20日、隣接する2施設「群馬県立ぐんま昆虫の森」と「NPO法人新里昆虫研究会の新里自然体験村」で、朝から晩まで1日を通して行われた。参加者は小学1~5年生の子どもばかり15人。親御さんの参加はお断りした。理由は、主に3つ。(1)親のいない場と時間を提供し、子どもたちにのびのびと感覚をフル回転してもらうこと、(2)スタッフはあまり口や手をださないようにして、子どもたちの集中力と考えるチカラを引き出すこと、(3)スタッフら大人が、逆に子どもたちから学ぶことがあることだ。
今回のイベントには、日本の昆虫にはそれほど詳しくないぼくには心強い、強力な助っ人の先生がた3人が協力してくださった。カミキリムシが専門の加藤敦史さんとアザミウマが専門の野中俊文さん、カメムシが専門の宇田川晃弘さんだ。3人とも昆虫全般に詳しい。
さて、午前の部は野外で昆虫採集! 15人の子どもたちはほとんどが関東圏からの参加だが、はるばる大阪から来てくれた小4の男の子もいて、ビックリ! ウレシくなる。 小雨が降ったり止んだりする中、まずはセミ捕り網を作製する。この連載の第30回「必殺、セミ捕り網!」で紹介したオクラのネットを使ったセミ専用の網だ。自分で使う用具は自分で作ってみるという大切な体験。
準備が整うと、3人ずつの班に分かれて、それぞれ森の中や野原へ向かった。ぼくは森の中へ・・・。最初に出会ったのが、木の幹でクモに捕らえられたウスバカゲロウ(下の写真)。クモの大きさの割に獲物が大きく、オモシロさと不思議さがあったので、写真を撮ってみた。 写真を撮り終わるや否や「あれは何ですか?これは何ですか?」と子どもたちの質問の声が降ってきた。雨が降っていてもみんなへっちゃらだ。ぼくは彼らの質問に答え、セミ捕り網の使い方を伝授し、トンボを追いかけたり水生昆虫をすくう子どもたちを見守ったりした。
森へ行った子どもたちは、アブラゼミやオニヤンマ、樹液に集まるコクワガタやカナブンにヒカゲチョウのなかま、野原ではトンボにバッタにカマキリ、シロチョウにミツバチやスズメバチのなかまを採集。水辺の子どもたちは泥んこになりながら、ゲンゴロウの仲間やアメンボ、ザリガニ、カエルにおたまじゃくしなど、数えきれないほど多種多様な生きものを採集していた。 あっという間に、午前の探検の時間は過ぎた。
お昼を食べると、午後は隣にある「ぐんま昆虫の森」で室内でのイベントの予定だ。実験室での昆虫観察や標本作り・・・そして、昆虫料理にも挑戦する。 実験室内には、7つのコーナーを設けた。実体顕微鏡で昆虫を観察するコーナーや撮影コーナー、標本作りコーナー・・・そして7番目、昆虫料理コーナーだ。
果たして子どもたちは昆虫を食べるのか? この当初の心配は、午前のイベントですっかり取り除かれた。というのは、参加者のうち2人の男の子がこれまでも昆虫をよく食べていることがわかったからだ。大阪から来てくれたみきやくんは、森の中でセミの抜け殻をおやつ代わりに食べられることをぼくに教えてくれた。前脚はトゲトゲで硬いので、前脚を取ってスナック菓子のようにムシャムシャ。サクラエビのようだと言う。おかげで昆虫料理コーナーがやりやすくなった♪
さあ、おやつの時間だ! それぞれが食べたい昆虫を持ってきて、ぼくが料理する。安全面と美味しさを考慮して、基本、油で揚げることにした。 ザリガニにガムシ、セミ、コオロギ、そしてお弁当の時間にみんなの血をいただきにやってきたアブ・・・いろんな食材が揚がっていく。食べない子どもたちも興味しんしんで鍋の周りで様子をうかがったり、写真を撮ったり、楽しそうだ。
小さなザリガニの素揚げを食べたいというリクエストが多かったなか、昆虫食経験者のなおたろうくんは、コオロギにセミ、そしてガムシとアブに初挑戦! 周りのみんなもぼくも、彼の虫食通には圧倒させられ、たくさんの刺激をもらった。おやつの時間は、気分転換以上の濃い味の内容になったのである。
また、1年生のあきちゃんは午前中に見つけたセスジスズメガの大きなイモムシがとても気に入ったようで、ずっとペットのように持ち歩き、時折口にくわえたり、鼻と口の間に挟んだりというパフォーマンスも見せてくれた。みんなはオモシロびっくりだったのだが、それをきっかけに、これまでイモムシが苦手で触ることができなかった子たちも、触れられるようになり、余裕で手のひらにのせて写真を撮るまでになった。
いろんな感覚を使って学ぶってことは、ウレシイことだ。そうして午後の部も無事終了。だがイベントは終わりではない。こんどは、夜のナイト探検だ。 ナイト探検は、午後6時集合で、夕方から夜の森を散策する。子どもたちは元気! だんだん暗くなってきたので、わくわくドキドキ感が増す。
みんなはヘッドランプや懐中電灯の明かりを頼りに、樹液に集まっていそうな昆虫たちを探したり、昼間草むらや地中に隠れていた昆虫たちを採集したりしていく。カブトムシやクワガタ、ヤマトゴキブリやシタバガのなかま、カマドウマにコオロギ、キリギリスのなかま、「寝ている」セミたちなどなど、どんどん見つけていく。昆虫以外には、大きなデンデンムシ(カタツムリ)にザトウムシ、毒蛇のマムシにも、出会うことができた。
完全に日が沈んで真っ暗になると、時間を気にする子どもたちが出てきた。小屋の前には、イベント終了時間になっていないにもかかわらず、何人もの子どもたちが戻っていた。暗闇の中、親もおらず、いつもと違う場所、いつもと違う雰囲気なので、それは仕方がないことだ。これもいい体験で、いろんな感覚が研ぎ澄まされていくことだろう。
体験を通してでないと学べないことがたくさんあるし、まだまだ知られていないこと、わかっていないことが、人間が用意しなかった自然の中には限りなくある。 ぼくには、「体験を通した学びが、こころの豊かさにつながり、自然保護や人間の社会の安定性に繋がる」という思いがある。
このようなイベントやワークショップで子どもたちに提供できるのは、大人や社会が敷いたレールから離れた時間や場所にほかならない。生きている、変化に富んだ、多様な自然から、できるだけ多様な情報を自分のいろんな感覚で取り込んでいってほしい。 さあ、感覚を研ぎ澄まして、感覚をめいっぱい使う冒険体験の旅に出よう!
西川勝先生には、オクラネットをたくさん提供していただきました。群馬県立ぐんま昆虫の森の齋藤浩一園長やNPO法人の新里昆虫研究会代表の小池文司さん、スタッフのみなさんには、たいへんお世話になりました。ありがとうございます!
Ӂ 「金平糖」ツノゼミの甘い露 Ӂ
今回は、雨季が終わりに近づく9月、10月にモンテベルデで一番多く目にするツノゼミを紹介しよう。 日本からコスタリカのモンテベルデに戻ってきた。「腹が減っていても、減っていなくても戦はできぬ」なので、まずは食材の買出し! 町へ向かうと、砂利の道路が比較的乾いている。例年なら雨の多い時期だが、今年はなんとなく雨が少ない気がする。
5分ほどで、いつもの小さな食料品店に到着。周りに庭のような場所があるのだが、そこに植えられた数種のナス科の木に目をやると、アンティアンセ・エクスパンサという金平糖のようなかたちをしたツノゼミの群れが枝のあちこちにいた。これは予想通り。ここモンテベルデでは雨季の終盤に多く見られる種だ。 このツノゼミの特徴は、横から見るとツノが葉っぱのように高く盛り上がっていることと、眼の横から斜め前へツノが伸びていること。色は緑だが、よく見ると縁取りや斑点がある。
ナス科の木の枝に群れているのは、若い成虫(成虫になってからあまり日数がたっていない)か幼虫が多い。幼虫は、見た目が成虫と大きくちがっていて黒っぽくトゲトゲしている。なかでも小さな幼虫は、少し黄色の模様が混じっているが、大きくなるにつれ茶色っぽくなっていく。どちらにせよ、日陰にいる群れは黒っぽい塊にしか見えない。
そんな群れの中に、アリが交じっていることもよくある。第127回で紹介したツノゼミ、ヘテロノトゥス・トゥリノドススのようにアリとの「共生関係」がこのアンティアンセ・エクスパンサでも見られるのだ。これまでに、大小さまざまなアリたちがたくさん訪れているのを見てきた。アリたちはツノゼミの群れにやって来て、幼虫のお尻の先から排泄される甘露(糖液)を「収穫」していく。 黒い塊が「単なるアリの群れ」に見えてしまうほど、アリたちがウジャウジャ群がっていることもある。幼虫たちは群がるアリたちの中に上手く溶け込んでいるのかも知れない。
さて、アリたちは幼虫たちの間を比較的ゆっくりと動き、管のようになった幼虫たちのお尻の先を触角で刺激して甘露を出してもらったり、アゴと口ひげを使って甘露を飲んだりしている。また幼虫たちは、甘露を排泄する際に「ここに甘露があるよ!早く収穫しに来て!」とアリたちに言わんばかりに、お尻の先を高く持ち上げるのだ。 そして、アリがお尻の甘露を収穫し終わると、幼虫はお尻の先を定位置まで下げるのである。以下、12年以上撮りためてきたツノゼミのアンティアンセ・エクスパンサの生態写真の一部を引き続きお楽しみください。
・・・・・つづく
_ 驚くほどずる賢い7種の動物 _
・・・・・・ https://youtu.be/9KDYi1QkILE ・・・・・・
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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
森のなかえ
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