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Channel: 【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》
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「バックマン」と呼ばれる西田賢司 =088=

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〇◎ “命のことを知らずして、命の大切さは理解できない” ◎〇

= 探検的調査を実践する “探検昆虫学者” 西田賢司 =

【この企画はWebナショジオ_“「コスタリカ 昆虫中心生活」” に追記・補講し、転載した】

☠ 中米コスタリカで新種の昆虫を見つけまくる男! 「バックマン」 ☠

曰く 『昆虫は、僕たちに自然の変化を教えてくれる一番身近な存在です』

◇◆ =088= 未来の昆虫学者サマーキャンプ in USA ◆◇

 この6月のこと。アメリカのスミソニアン自然史博物館の デイヴィッド・アダムスキー博士(Dr. David Adamski)から誘いを受け、「若い昆虫学者たちのサマーキャンプ」に参加してきた。ぼくは日本で、昆虫のイベントを時折させてもらっていることもあり、その様子を見学してみたいという思いもあった。

  デイヴィッドは、ガを専門とする昆虫学者で、なかでもキバガというグループのネマルハキバガ科を研究している。ぼくが小さいガを専門にするに至った「火付け役」で恩師でもある。かれこれ20年以上の付き合いで、今となっては、ぼくの叔父のような存在だ。

 昆虫博-2

  サマーキャンプの前日にコスタリカからワシントンDCへ移動、その日はスミソニアン博物館群の近くにあるデイヴィッドの自宅に泊めてもらった。翌日は朝早くから東に向け出発、2時間ほどのドライブの後、デラウェア州のジョージタウンという町の近くにあるレデン州立森林公園に到着した。日差しは強いが、涼しい風が吹いていて日陰に入ると少し肌寒い。森はコスタリカに比べると静かで、小鳥たちのさえずりが遠くから聞こえてくる。

  参加者が集まってきた。「若い昆虫学者の集まり(the young entomologist group)」というので、てっきり高校生から大学院生が集まっての調査かと思いきや、6歳から14歳の子どもたちとその家族の集まりだった。楽しくなりそうだ。このキャンプは、ワシントン昆虫学会が中心になって、昆虫のことや自然科学を年間を通じて啓発する家族参加型の活動の一環だ。

 昆虫博-3

  進行役はデイヴィッド。ほかにも昆虫やほかの生物の専門家などを招いている。子どもたちと森の中で昆虫を探したり、観察したりしながら、専門家が自然や昆虫について解説し、観察や研究の仕方を指導する。今回はスミソニアン自然史博物館からガの世界の不動の大御所、これまでに6つものガの新しい科を発表している、ドン・デイヴィス博士(Dr. Donald R. Davis)とその家族も参加していた。

  現地に着いてから、ぼくもゲスト専門家として指導を依頼されたが、唐突だったので今回は勘弁してもらって、主に活動の様子を記録する写真撮影役を引き受けた。 気温が上がってくると、昆虫たちが飛び始めた。チョウやムシヒキアブのほか、たくさんのトンボがあちこちで飛んでいる光景が特に印象的。子どもたちは一心に虫捕り網を振り回している。こうして専門家たちと一緒に森を歩くだけで、未来の昆虫学者はいろんな刺激をもらっているのだろう。

  ぼくは、コスタリカの森とはまた違った環境と、そこに住む昆虫たちを楽しみながら子どもたちの活動を見守った。1日目が終わり休んでいると、着ている衣服の下をうごめくものが・・・ダニ2匹を見つけた。 キャンプ2日目は、カブトガニを見学しに、みんなでデラウェア州の東、インディアンリバー湾(内陸側にある浅い湾)へ向かった。以前佐賀県で日本のカブトガニを見学したことがあるが、アメリカのカブトガニは初めてだ。胸が躍る。

 昆虫博-4

  毎年5月から6月にかけ、満月や新月の大潮の日には、繁殖のために数えきれないほどのカブトガニたちがニュージャージー州からデラウェア州の砂浜へと集まる。写真ではよく見る光景だ。 今回訪れた日は大潮ではなかったが、潮が引いた湿地内の小川のようなところを上ったり下ったりしているカブトガニを数匹見ることができた。特に川のようなところを泳ぐ様子はぼくには意外に思えたので、動画で撮影しておいた。

 動画 : アメリカカブトガニ Atlantic horseshoe crab Limulus polyphemus https://youtu.be/4oUnKuX1uq0 

 さて、アメリカカブトガニは大西洋の北西部に広く分布していて、個体数も日本のカブトガニの数と比べると遥かに多い。自然が改変されずに砂浜が豊かに残っているからだろう。 カブトガニというと名前の通りカニを連想しがちだが、実は系統的にカニよりも、クモやダニ、またはサソリに近い仲間だ。サソリと同じく、夜にUVライトを照射すると、体が緑色に浮かび上がる。

  頭胸部(甲羅の前側)の背面の両側に複眼がある。脚(付属肢)は全部で12本(6対)あって、一番前の脚は小さく、食事を口へと運ぶ小さなハサミが付いている。食べるのは主に海の底に住むゴカイ類や軟体動物だ。 前から2番目の脚の先はオスの場合フック状になっていて(次の写真)、交尾の際にメスを抱えるのに使うと、デイヴィッドが教えてくれた。残りの4対8本の脚は歩行用だ。

 昆虫博-5

  アメリカカブトガニの成体が見られたので、今度は砂浜を歩いて卵を探すことにした。こちらも以前から見てみたいと思っていたのだ。しばらく探していると、あった! 波に打上げられ、卵がたくさんかたまっているところが何カ所か見つかった。 直径は1.5ミリぐらいだろうか。見つけた卵のほとんどはすでに殻だけになっていたが、中にはまだ孵化していないライムグリーン色のものもあった。

  ぼくが卵を探して、写真を撮っている間、子どもたちは海の中に入って、カブトガニと戯れていた。カブトガニの卵も、昆虫学者の「たまご」も、自然の恩恵をいっぱい吸収して、大きく、たくましく育ってほしいものだ。そこには、大海原の世界が広がっている。

 マリオン・バンデンス(Marion Bundens)さんにカブトガニの一部の写真と情報をいただきました。ワシントン昆虫学会とデイヴィッド・アダムスキー博士に大変お世話になりました。ありがとうございます。 =ワシントン昆虫学会(Entomological Society of Washington) ・レデン州立森林公園(Redden State Forest) ・ジェームスファームエコロジカル保護区(James Farm Ecological Preserve) =

 昆虫博-6

 Ӂ 目立たないけどトゲだらけ、サルオガセツユムシ Ӂ

  世の中、まだまだいろんな虫がいる。今回紹介するのは、コスタリカの熱帯雲霧林でときどき見かけるマルキア・ヒストリックス(Markia hystrix)というツユムシの一種。 中南米に分布している比較的大きなツユムシで、特徴はサルオガセという地衣類に似ているところ。サルオガセ(Usnea属)は、霧や雲がかかる湿度の高い森の木の幹や枝などにぶら下がるように生えていたり、モコモコとくっついていたりすることが多い。

 サルオガセ-1

  サルオガセにそっくりのこのツユムシを、ここではサルオガセツユムシと呼ぶことにする。(サルオガセギスと呼ばれることもあるようだが、キリギリス亜科ではないのでサルオガセツユムシが適当と判断しています)

  このツユムシは、灯火採集などのライトにやって来ることが多い。採集するときに気をつけないといけないのは、地衣類のサルオガセは柔らくフニャフニャしているのに対し、サルオガセツユムシのトゲトゲは硬く、鋭いこと。うかつに掴むと痛いので、そ~っと両手で包むように捕獲。

  実は、ぼくはこのツユムシが実際に生活の現場にいるところをまだ見たことがない。おそらく樹上生で、着生植物やコケや地衣類がたくさん生えた木々の高いところで生活しているのだろう。 そこで今回は、夜に採集したものを翌日の昼間に撮影してみた。サルオガセが生えている木の幹にとまらせたところ、サルオガセにいい感じにまぎれている。

 サルオガセ-2

  撮影していると、ゆっくりとサルオガセの方へ歩いて行き、頭を突っ込んで何かをし始めた。 えっ? もしかしてサルオガセを食べている?

  これはぼくにとって予想外だった。以前友人から聞いた情報だろうか、ぼくの記憶にこの虫は「昼間はサルオガセの近くや地衣類などの上で隠れていて、夜になるとその周辺にある植物のふつうの葉や花なんかを食べている」とインプットされていたからだ。専門家によると、「地衣類やコケを食べるキリギリスやツユムシの仲間は非常に珍しい」という。

 サルオガセに似ているのだから、サルオガセを主食としていてもおかしくはない。でもほかの植物の葉なども食べるのか? その辺りを今度出会ったときに探ってみたいと思う。 このサルオガセツユムシのように、比較的大きくて、強烈なインパクトを放つ昆虫でも、まだまだわかっていない「驚き」が隠れている。そして、知れば知るほど謎もどんどん深まっていくのだろう。

  以下、サルオガセツユムシの接写写真です。ボディーデザインをどうぞお楽しみください。

 サルオガセ-3

・・・・・つづく


_ “生きた化石 カブトガニ” 〜知られざる太古の力〜 _

・・・・・・ https://youtu.be/3kTJoMmaXoU ・・・・・・


=上記本文中、変色文字(下線付き)のクリックにてウイキペディア解説表示=

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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽  憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・

森のなかえ

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