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Channel: 【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》
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「バックマン」と呼ばれる西田賢司 =086=

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〇◎ “命のことを知らずして、命の大切さは理解できない” ◎〇

= 探検的調査を実践する “探検昆虫学者” 西田賢司 =

【この企画はWebナショジオ_“「コスタリカ 昆虫中心生活」” に追記・補講し、転載した】

☠ 中米コスタリカで新種の昆虫を見つけまくる男! 「バックマン」 ☠

曰く 『昆虫は、僕たちに自然の変化を教えてくれる一番身近な存在です』

◇◆ =086= 野菜農園で出会った「デカイ」ツノゼミ ◆◇

 ぼくが住むモンテベルデのバイオロジカルステーションから500メートルぐらい下ったところに野菜農園がある。ぼくは月に2~3回、そこへ新鮮なプチトマトや葉もの野菜を買いに行く。 野菜を買うついでに、昆虫探しもすることにしている。野菜農園の周りには、バイオロジカルステーションでは見かけない植物が生えていて、違った昆虫たちの顔を見ることができるからだ。

  そんな植物のひとつに、農園の周りの一角を覆うように生えている蔓(つる)性のウリ科のものがある。このウリ科の植物を観察すると、いろんなカメムシの仲間が葉や茎から汁を吸っていたり、花にハリナシミツバチが来ていたり、チョウやハチ、ジョウカイボンなどが葉の上にとまっていたり、葉に潜るハエの幼虫がいたりと、たくさんの昆虫たちを目にする。この植物、虫たちに大人気!

ツノゼミ-9

  今回紹介するツノゼミに出会ったのもこのウリ科。前回紹介した『鞍馬天狗』ツノゼミを探していたとき、昨年の年末のことだった。最初は、『鞍馬天狗』ツノゼミかと思ったが、なんか違う・・・ 色や大きさは似ているが、頭の上の大きく膨らんだツノの両端が尖るように伸びている。ツノが2本あるようにみえる。

  もう1匹見つけた。今度は、かたちは同じだが色が緑がかっていて、さらにデカイ! 頭から翅の先まで15ミリはありそうだ。ちなみにツノゼミのほとんどは、10ミリにも満たないので、これは「通常」のツノゼミの2倍はある感じ。

  両方とも採集して、ぼくが共著した書籍『熱帯アメリカのツノゼミ』で調べてみると、『鞍馬天狗』ツノゼミと同じ属のハイフィノエ・ヴルペクラという種のオスとメス(デカイほう)であることが判明した。 そして先日、アメリカのスミソニアン博物館のツノゼミの専門家、マケイミー博士(Dr. Stuart McKamey)とメールでやり取りしていたら、オスとメスで色が違うハイフィノエ属の種は、これまでにきちんと報告されていないと教えてくれた。

  年が明けて1月、野菜農園へ出かけたついでにまた昆虫探しをしていたら、あのウリ科の植物に実がなっていた。

  おお~タカコだ!

  タカコとは、コスタリカで食用にされている野生のウリの1種で、その実がタカコ(Tacaco)と呼ばれている。オジャ・デ・カルネ(Olla de carne)という塩味の牛肉のシチューの中によく入っている野菜のひとつで、大きさは5~6センチで平べったい。スーパーの野菜売り場でも見かけることがあって、約15個入った一袋500グラムが、1425コロンする。日本円にすると約300円だ。

  タカコを使って料理がしたくなったので、野菜農園の人に聞いてみた。 「このタカコは売ってますか?」 「いや~、それは売りものじゃないんだ」

 「いくつかもらっていくことはできますか?」 「いや~、それもムリだね~。というのは、自然に生やしていて、野生動物たちの食料として、自然のまま残しているんだ」

 ツノゼミ-10

  なるほど、納得だ。タカコは、ほかで手に入れることにして、昆虫探しを続ける。このタカコにハイフィノエ・ヴルペクラのオスとメスが住んでいるということは、どこかに幼虫もいるはずだ。

  『鞍馬天狗』ツノゼミの幼虫を見つけた経験から、このツノゼミの幼虫もおそらく新芽のような淡い緑色をしていて、葉の付け根や枝分かれしているところにいるだろう・・・ 探すこと、1分も経たないうちに発見! 多種多様で想定外のことがよくある自然や昆虫の世界では、先入観をなくすことも大切なのだが、以前の経験や過去のデータもなかなか役に立つものだ。

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 今週のピソちゃん ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 ぴそx

 Ӂ 赤ツノゼミ青ツノゼミ黄ツノゼミ Ӂ 

 ツノゼミ-11

   5月中旬。今回紹介したいな~と思っているツノゼミのことを考えながら、いつもの場所へ行ってみた。 そこは、ぼくの住むモンテベルデバイオロジカルステーションから出ている「森へのトンネル」のような林道の入り口付近。これまで何度か、目的のツノゼミを見たことがある場所だ。

  到着するや否や、それはス~ッと視野に入ってきた。ちょうど正面、目の前に望んでいたツノゼミがいたのである! 早速カメラを取りに戻り、追加写真を撮影した。 そこで今回紹介するのはこのポッペア(Poppea)属のツノゼミの仲間に決まり。青色と赤色と黄色のものと、おまけにもう1種違う色のものをご覧に入れよう。

  ポッペア属のツノゼミのツノは、ボコボコしていて長めの毛で覆われているものが多い。ツノは、背中から後方へと伸びるにしたがって3つに分かれ、漁で使うヤスの刺突部またはフォークのようなかたちをしているのが特徴だ。

 ツノゼミ-12

  この18年でぼくはコスタリカでポッペア属のツノゼミに5種ほど出会っているが、中でも特に印象的な色をしているのがこの青い種だ。

  翅以外が、透明感のあるなんとも言えない蛍光ブルーで、黒い模様がアクセントになっている。上から見ると、後方に膨らんで伸びるツノの先端が3つに分かれているのがわかる。ちなみにツノゼミの色は死んでしまうと失われるものがほとんどなので、この「青」は「生きているからこそ!」なのである。

  自然の中では、実際こんな感じで(矢印のところに)いる。これはアオイ科のハイビスカスの仲間に近いマルバビスカス(Malvaviscus)という植物で、茎から葉と葉の合間あいまに托葉(たくよう)と呼ばれる尖った芽のような小さな葉がたくさん出ている。

  托葉の近くで頭を下にしてじっとしている姿を見ていると、だんだんこのツノゼミが托葉に見えてきた。もしかすると青いポッペアは、マルバビスカスの托葉に擬態しているのかもしれない。

 ツノゼミ-13

  さて、今度は赤いツノゼミ。コスタリカでよく目にしてきた種、ポッペア・カプリコルニス(Poppea capricornis)だ(上)。 このツノゼミは、トウダイグサ科のエノキグサ属(Acalypha)の植物でよく見かける。葉の裏でじっとしていることが多いが、目立つ。赤白黒の模様は、擬態しているというよりも、警戒色的なアピールをしている可能性が高い。

  しかし、この赤いポッペアのものであろう幼虫(飼育していないのでハッキリそうだとは言えない)は、住まいとなっているこのエノキグサの枝先の新芽の真横に陣取って擬態している。

  この様子を確認して以来、ポッペアの幼虫を探す際は、枝の先の方にある新芽をよりいっそう念入りに調べることにしている。 引き続き、『ネコバス』のような黄色い種と、ツノの一部が透明な緑の種をお楽しみください。

 ツノゼミ-14

・・・・・つづく

_ 昆虫・動物たちの驚くべき擬態(カモフラージュ画像) その一 _

・・・・・・ https://youtu.be/vmpiD-D-Tfk ・・・・・・



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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽  憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・

森のなかえ

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