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Channel: 【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》
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「バックマン」と呼ばれる西田賢司 =081=

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〇◎ “命のことを知らずして、命の大切さは理解できない” ◎〇

= 探検的調査を実践する “探検昆虫学者” 西田賢司 =

【この企画はWebナショジオ_“「コスタリカ 昆虫中心生活」” に追記・補講し、転載した】

☠ 中米コスタリカで新種の昆虫を見つけまくる男! 「バックマン」 ☠

曰く 『昆虫は、僕たちに自然の変化を教えてくれる一番身近な存在です』 

◇◆ =081= ハナグマ「ピソちゃん」がお尻に樹液をつけるのはなぜ? ◆◇

   この連載で「今週のピソちゃん」を紹介するようになってちょうど2年(昨年から長い間お付き合いありがとうございます!)。 今回はピソちゃんの謎の行動を紹介しよう。 ピソちゃんというのは、ぼくがハナジロハナグマに付けた愛称で、コスタリカでこの動物をピソテと呼ぶことから来ている。 昨年の後半にしばらく見かけない時期があって心配したのだが、1カ月ほど前から家の周りに頻繁にやってくるようになった。

  オスがウロウロしているところや、 オス同士が追いかけ合いをしているところなどは、毎日のように目にするし、キュルキュルキュルル~という鳴き声も家の周りからよく聞こえてくる。 50頭以上のメスと子どもの大きな群れにもよく出会うようになった。 記載写真を見てほしい。 こんなにたくさんでやってきて、立てた尻尾をゆらゆらさせながら食事をするのである。 雑食性のピソちゃんたちの主食は昆虫。 落ち葉の中など、地面周辺にすんでいる昆虫や他の節足動物を、鋭い嗅覚を頼りに探しだして食べる。

ハナグマ-1

    メスと子どもたちの群れは、単独で行動するオスよりも警戒心が強く、近くに寄って撮影するのは容易ではない。気づかれるとスグに森の茂みの中に消えていく。 ピソちゃんたちがこれほど出没するようになったのは、活動が活発な時期であること以外にも理由がありそうだ。じつは今コスタリカは観光シーズンで、周辺の観光ホテルや自然保護区には、観光客がわんさかと訪れている。もしかするとピソちゃんたちは、周辺の森から観光客が来ない静かなこのバイオロジカルステーションの森へとやって来ているのかもしれない。

  こんなふうに日々よく出会うご近所さんのピソちゃんだが、まだまだ知られていないことも多い。 今年1月に入ってから、ほ乳類が専門の元同僚のラケル(Raquel Bone)と一緒にピソちゃんのある行動について調査を始めた。

 それは、前回で紹介した「木の幹で爪を研ぐ 」行動。その後、何回か目撃していて、また最近よく見かけるようになったからだ。

ハナグマ-2

  ピソちゃんが引っかく木は決まっている。モンタノア(Montanoa)というキク科のもので家の前に2本斜めに生えている。 ぼくはてっきりその幹で前脚の爪を研いでいるものと思っていたが、観察していくうちにそうではないことに気付いた。 ピソちゃんが引っかいた部分は黒っぽくなって、ヤニのような樹液がしみ出ている。 ひとしきり引っかくと、ピソちゃんはくるっと後ろ向きに丸まって、お尻の方、しっぽの付け根辺りに毛繕いをするかのように、その黒っぽい樹液を塗っているようだ。

 樹液は少しネットリしていて強いキクの香りがする。心地よい香りで、アロマオイルにしてもいいぐらいだ。 さすがニオイに敏感なピソちゃん、良いセンスをしている。 ところで何のためにこんな行動をとるのだろう? 文献や本などを調べてみたものの、この行動のことはあまり知られていないようだ。 考えられることは3つある。

    1 メスに受け入れてもらうための身だしなみ。今のところ、この行動を目撃できたのはオスだけで、この時期は求愛の季節でもある。  2 虫除け。乾季はダニやツツガムシが多い。 3 ダニやツツガムシに咬まれたところ(または傷口など)の治療薬として使用。   「3」に関しては、1993年にひとつだけ報告がある。 パナマの低地で別の植物(カンラン科の一種)のヤニを使ったというもので、おそらく治療用効果があるからだろうと考察している。

ハナグマ-3

  そういうわけで、ぼくたちはモンタノアの木の前に旧型の定点センサーカメラを設置することにした。 動くものがやってきたら自動的に撮影するカメラだ。10秒の動画しか撮れないが、行動パターンや塗る様子などを把握することが目的なので、まずはこれで十分だろう。 どんな映像が記録されてくるだろうか。 家のドアを開ける楽しみが、また一つ増えた。 これから、モンタノアのヤニの成分や木の性質を調べたり、ピソちゃんの体の状態と季節の関係などを観察していったりして、真相に迫っていけたらと思う。

  ハナジロハナグマ以外のほ乳類や有袋類の脊椎動物たちもこの時期、なんとなくだが、 動きが活発になっているような気がする。 1週間ほど前、家から20メートルほど離れた林道、少しジメジメしている箇所で、ピューマの足跡を見つけた。 ラケルに確認を依頼すると、「ピューマのものというハッキリとした特徴が見られるね!ウレシイ知らせありがとう!」との返事。 特徴は、 掌球(足底球)の上下にくぼみがあることと、指球(趾球)の先が尖っていること。周りにはネコ科の小さな足跡もあったので、もしかすると子連れのピューマだったのかもしれない。

  家の周りにピューマがいることは把握していたが、この足跡を見てから、未だその姿を一度も目にしていない大型の肉食動物が近くに存在していることの現実を少し体感することができた。 一人で林道を歩くときのドキドキ感が一気に増した 。

ハナグマ-4

 Ӂ 枝の中の謎のカミキリムシは新種だった Ӂ

カミキリ-1

  この連載の第97回で、カミキリムシが咬み切った枝を拾い集めて飼育していることを書いた。 正確に言うと、枝の中に産み込まれたカミキリムシの卵を、枝ごと飼育してきた。 その数30本ほど。 今回は、その「枝の中の謎のカミキリムシ」続編。 枝切りと産卵の一部始終をお届けします。

    拾った枝を飼育し始めてから1年ほどたった2015年の7月下旬から10月にかけて、枝から成虫のカミキリムシが出てきた。 その数なんと、50匹以上! 現れた虫は、カミキリムシの専門家ジノー・ネアーンズ(Gino Nearns)博士と一緒にあらかじめ予想していたとおり、ペリエルガテス属のカミキリムシだった。 しかも新種! 飼育が成功したことで、この属の生態も明らかになった。 たとえば、この属が枝を切って産卵するということさえ定かでなかったのである。

 2015年の12月ごろから、カミキリムシに切断された枝を再び見かけるようになった。 乾季の半ばのモンテベルデは落ち葉が多くなり、多くの木々は新芽を芽吹かせるために栄養を枝先へと送る時期。 ジノー博士によると、そんな枝を切り取ることで、幼虫たちが育つための栄養を枝内に閉じ込めているのだろうとのことだ。 切り取られた枝を見るたびに、木々をカット調整(トリミング)する森の庭師のような印象を、このカミキリムシに対して強く抱くようになってきた。

カミキリ-2

  論文の発表に向けてもっと調べていこう。 カミキリムシの調査と飼育は、2ラウンド目、2年目に突入した。 今回の目標は、枝を切り落とすまでのメスの行動、卵と幼虫と蛹の形態、成虫が出てくるまでの生態などを詳しく観察し記録していくことだ。 この新種が枝を切ることがわかった以上、1ラウンド目、1年目に確認できなかったメスが枝を切って産卵する行動をまず見届けなければ!

  そこでぼくは、枝が落ちていた庭の木々を見回りに出かけることにした。探し始めて1カ月が過ぎた2016年1月6日、コナラの仲間の木に、完全に切り落とされる手前の状態で、ダラ~んとぶら下がっている枝を見つけた。 カミキリムシが切ったのにちがいない。メスはまだいるのか? いた!!  垂れ下がった枝にカミキリムシのメスがいるのを見つけたぼくは、さっそく脚立代わりになるイスを持ってきて、カメラを片手に観察を始めた。 14時18分のことだ。 空は晴れているが、風がきつく霧雨が舞っている。

 枝につかまったメスは、触角を前に突き出して、枝を軽く挟むように触れながら前に進む。 同時にアゴで枝の表面を咬んで傷つけていく。 これを垂れ下がった枝の隅々まで何往復もしながら進めていく。 時間がゆっくりと過ぎていく。 14時51分、カミキリムシは1カ所に留まり、そこをずっと咬み始めた。 カミカミ、カミカミ。 産卵用の穴を開けているのかもしれない。 

カミキリ-3

   この作業を20分ほど続けると、メスはくるりと180度反転し、お尻を穴の中へ入れるような行動を見せた(15:08)。 お尻の先が伸びている。 産卵管を出して卵を挿入しているようだ。 じっとしてピクリとも動かない状態が25分ほど続き、15時36分、カミキリムシは再びその場から動き始めた。 枝の傷付け作業に戻ったようだ。 枝の隅々を何往復もして触角で確認しつつ、アゴで表面を傷付けていく。 ゆ~っくりと時間が過ぎていく。 ふと後ろを見ると、小雨に太陽光が斜めから差し込んで、虹をつくっていた。

 日が暮れて、雨風もきつくなってきたが、メスの作業は終わらない。 17時40分、また産卵が始まった。 昆虫の眼には見えにくい赤いヘッドランプの光で観察を続ける。 30分以上かけて産卵を終えたかと思うと、今度は細い枝へと移動し、しがみついてじっとし始めた。 辺りは暗く、最初は休んで寝ているのかと思ったが、そうではなかった。

    産卵した大枝(太い枝)から分岐している葉のついた細い枝を、かじって、切り取っているのだった。 45分ほどかかって1カ所を切り落とした。 この調子だといつまで続くのか? 想像以上に地道な作業だ。 明日の朝も続けているだろうと予想し、その日の観察を切り上げた。 時計は19時をまわっていた。

 カミキリ-4

  翌朝、メスはまだ垂れ下がった枝にいて、細枝を切る作業を続けていた。 それにしても気の遠くなりそうな作業だ。細枝切り作業は午後まで続き、13時28分、作業を終えたのか、垂れ下がった大枝から木の違うところへと離れていった。  最初に大枝を切って垂れ下がらせる作業は観察できなかったが、それを除いても、まる1日がかりの作業だ。カミキリムシが念入りに作業した枝は、細い枝や葉っぱがすっかり切り落とされ、さっぱりした状態で静かにぶら下がっていた。

  その10日後、15日の夕方には、オスがメスに求愛しているところを見つけた(一番上の写真)。 メスは切り取って産卵するのに良さそうな太さの枝にしがみついている。 これは要チェック、産卵用の大枝を切り取る作業を見ることができるかもしれない。 翌日、同じ枝を何度か確認しに行ってみると、枝切り作業をするメスに出会えた。 体を枝の周りに沿って移動させ、アゴを引くように手前に動かし、かじり、削り取っていく。 この作業も、見つけてから2時間半続いた。 仮に気温が高くなる10時ごろから切り取り作業を始めていたとすると、約4時間かかっていることになる。

  この後の産卵作業と細枝や葉の切り取り作業は、そのまた翌17日の夕暮れ前まで続いた。 全工程がある程度把握できた。 時間とエネルギーをたっぷり費やして子孫をつなぐ、メスの几帳面な行動に、胸がいっぱいになった。 枝に産み込まれた卵から出てくる幼虫たちは、枝の中でどんな生き方を見せてくれるのか。これからの観察が楽しみだ。

カミキリ-5

  ・・・・・つづく

 

_ Tortuguero Costa Rica _

 ・・・・・・ https://youtu.be/f36yVQ2Zmok ・・・・・・


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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽  憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・

森のなかえ

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