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Channel: 【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》
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「バックマン」と呼ばれる西田賢司 =075=

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〇◎ “命のことを知らずして、命の大切さは理解できない” ◎〇

= 探検的調査を実践する “探検昆虫学者” 西田賢司 =

【この企画はWebナショジオ_“「コスタリカ 昆虫中心生活」” に追記・補講し、転載した】

☠ 中米コスタリカで新種の昆虫を見つけまくる男! 「バックマン」 ☠

曰く 『昆虫は、僕たちに自然の変化を教えてくれる一番身近な存在です』

◇◆ =075= モンテベルデの植物の多様さに腰を抜かす ◆◇

 モンテベルデの熱帯雲霧林は観光地であるとともに、学生や研究者たちが集まる場所でもある。モンテベルデの自然や生きものたちに惹かれ、やって来て、長期にわたり調査をしている人たちも多い。そのうちのひとりが、ぼくというわけだ。

  そんな人たちを対象に実施された「モンテベルデの植物の分類学」の短期コースの授業を先週受けた。今回は、授業中に撮影した写真を交え、学んだことやモンテベルデの植物の多様性について思っていることを綴ってみよう。

  授業はモンテベルデの町周辺の森4カ所で、約15科の植物を学ぶ野外中心のトレーニング形式。講師はコスタリカの植物のガイド本の著者でもあるウィロー・ズコウスキー。モンテベルデ在住の学者仲間のひとりだ。

  最初の授業は、小高い丘の上にあるモンテベルデ研究所の森。モンテベルデのコミュニティーが1985年に立ち上げた機関だ。そばをよく通るが、実際にそこまで行ったことがなかった。丘の研究所への道を50メートルほど上ると、ステキな建物が! 授業用の教室だそうで、ひと目で気に入ってしまった!

モンテ-2

  さて、参加者は大学生から年配の方々まで幅広い。いろんな植物についての質問が飛び交う中、ぼくが昆虫の専門ということを知ってか、みんなから昆虫の質問がこちらに寄せられる。楽しい!「このナス科の花にたくさん訪れている小さい虫はハエですか、ハチですか?」「これは虫コブですか?どんな昆虫がつくったんですか?」・・・などなど。植物の授業なのに、なぜ虫の質問? 理由は簡単。

  植物をじっくり見ていくと、昆虫たちの存在に気づかずにはいられないのだ。植物に昆虫は付きもの!

  だから、昆虫を飼育し、研究するぼくは植物のこともよく知らないといけない。実際ぼくの部屋には昆虫の専門書より、植物の専門書のほうがたくさんある(笑)。

  下の表を見てほしい。なんとコスタリカは、植物の多様性密度が世界で最も高い。種数はブラジルやコロンビアが圧倒的に多いのだが、面積当たりの種数で見ると、コスタリカがズバ抜けている。オモシロイことに、日本も密度はブラジルより高い!

モンテ-3

  コスタリカのような熱帯の生物多様性は熱帯雨林のジャングルに集中していて、それが熱帯雨林の特徴のひとつでもあると、一般的に考えられている。ぼくも同じ考えだった。

 ところが、モンテベルデの標高1500メートルの雲霧林に2年前に移り住んでから、モンテベルデの植物についてある疑問を持ち始めた。不思議なことに植物の多様性が、思っていたよりも高いような気がするのだ。

  家の周りには似たようで違う植物が所狭しと生えていて、まだ名前の付いていない新種の植物がそこら辺に生えているのである。熱帯雨林にも調査に行くが、やはりモンテベルデのほうがいろいろな植物を目にする気がする。

  まさか、モンテベルデの植物の多様性が、低地の熱帯雨林(たとえばコスタリカのサラピキ地方)の多様性よりも高いはずがない・・・と、疑いつつもウィロー先生に聞いてみることにした。

  ウィロー先生からは驚きの答えが返ってきた。「シダ植物と種子植物を合わせた数について言うと、サラピキ地方の低地の熱帯雨林からは、約2000種が記録されていて、モンテベルデからは約3000種。モンテベルデのほうが、多様性が高いのですよ」

モンテ-4

 「わちゃ~! え? やっぱり!!」 薄々感じつつも、これにはビックリ仰天!

 ランの多様性はモンテベルデの地域がコスタリカの中で一番高いということを第88回でお伝えしたが、まさか植物全体でも高かったとは、度肝を抜かれた。

  コスタリカの生物多様性が高い理由は、熱帯雨林だけでなく、雲霧林にもあることを再認識させられた。

 目から鱗のぼくは、「ん~、これはますますモンテベルデの植物について学ぶ必要が出てきたな~。こりゃ、モンテベルデの昆虫の多様性も濃いはずや・・・」と思わずにはいられなかった。

 モンテベルデ! ますます面白くなってきた!

モンテ-5

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 今週のピソちゃん ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 授業を受けていたモンテベルデ在住のデヴさん(手前の青いリュックのかた)は、クスノキ科の木々に詳しい。デヴさんが「この木は、何歳ですか?」という質問に答えているところ。「この木はオコテア(Ocotea)で、ちょっとここは暗いかな~、1歳・・・5歳ぐらいかな」

そんな中、後ろの方にオスのピソちゃんがゴソゴソしながら登場。みんなは、植物の授業に集中。ぼくはピソちゃんの動画を撮るのに必死(笑)。ヒゲ鳥の鳴き声が「ビッ!」と響き渡る、こどものじゃんぐるのバホ・デル・ティグレにて。

 動画:植物の野外授業にやってきたピソちゃん(ハナジロハナグマ) ; https://youtu.be/Tn2h1LLVnDQ

Ӂ  「嫌われ者」の蛾に対する思い」  Ӂ

蛾-1

  ぼくが専門としている昆虫は、チョウとガ。特に虫こぶを形成するガの仲間を研究しているのだが・・・みなさんご存知でしたか? チョウとガは同じ鱗翅目の仲間だ。コスタリカの公用語のスペイン語ではどちらもマリポサ(mariposa)と呼ばれ、特にガは「夜のチョウ(mariposa nocturna)」などとも呼ばれる。

 さて、日本やアメリカ、コスタリカでもこの時期はガが多い! それに合わせ、毎年7月下旬にナショナル・モス・ウィーク*(=蛾を愛でる週)として世界各国でイベントなどが開催されている。 今年は18日から26日だ。そこで今回は連載100回を記念すべく、ぼくの好きなガを紹介していこう。

  ガと言えば、明かりにやってくる虫の代表ではないだろうか? 夜中、白いシーツを張って灯火採集をしていると一目瞭然、ガの数が圧倒的! 実は小さなハエの仲間も多いのだが、目に見えないほど小さいので目立たない。「我らが夜の虫!」というぐらいアピールをしているのがガなのだ。 現在ぼくが研究のために自宅で飼育している昆虫たちは、全部で40種ほど。 その半分以上をガが占める(うち7種は虫こぶを形成するガの仲間)。

蛾-2

  ガを飼育すると言っても、生態を研究するぼくが飼っているのはイモムシやキャタピラーと呼ばれる幼虫たち。部屋の中に吊り下げてある飼育袋からは、ムシャムシャと葉を噛む音、ポロポロと糞が落ちる音が響いてくる。 この連載で紹介した「ゴリラのようなガのサナギ」のカレハガは、この時期、右の写真のように我が家に勝手に入ってきて、マユをつくったりする。 そしてぼくは新種かもしれないこのガを観察し、生態を調べる。つまり家自体が飼育袋の役割を果たしている(笑)。

  つい最近まで飼育していたプロスィサナ(Prothysana)というカイコガの仲間の幼虫《写真参照》。 一部の毛が、鱗(ウロコ)のように平らになっていて、飾りをつけているように見える。 正面から見ると、こんな感じだ。 移動するときの動きが、少しカクカクしているので、愛嬌倍増!(下に動画があるので、どうぞご覧ください)。 この幼虫について調べてみると、どうやらこれも新種。 しばらくすると下のようなマユをつくってサナギになる。 マユは15ミリほどの卵形で、表面に鱗(ウロコ)状の毛がちりばめられていた。

蛾-3

  しかし、その後マユから出てきたのは、ガではなく、寄生バチのヒメバチの一種だった。 すでにガの幼虫はヒメバチに寄生されていたのである。 マユをつくった直後、幼虫はヒメバチの幼虫に食い尽くされてしまい、マユの中でサナギになったのは、ヒメバチだったのだ。 野外で採集した幼虫たちがほかの生物に寄生されているのは、ごく当たり前のこと。 寄生バチのデータを得ることは、生態系を理解するために大切なことだ。

 動画:プロスィサナの一種(カイコガ上科:Apatelodidae科)の幼虫の動き ; https://youtu.be/S5jveWXTvHk 

 昆虫の中でもガは、一般的に嫌われ者の役割を負わされている。 ぼくの「ガ目線」で、これまでそう感じてきた。 特に体長1センチ以下の小さなガは、分類学者の間でも、相手にする人は少ない。 残念ながら、のけ者にされがちだ。まだ名前(学名)の付いていない小さなガは、日本にもまだまだたくさんいるのが現状である。 でも、みんながあまりやらないことに興味を示すぼくは、そんな小さなガに惹かれる。 小さければ小さいほど面白い!

 今振り返ると、小学校時代は、転校生がやってくるたびに、スグに転校生と仲良くなっていた。 のけ者ということではないが、はぐれて一人でいる転校生を見ると、仲良くなりたいという気持ちが自然と湧き出ていたのだろう。 人々にあまり相手にされないガを研究する気持ちと、どこかつながりがあるのだと思う。

蛾-4

  「のけ者」にされている小さなガの仲間に、ホソマイコガがある。 この写真は、今飼育している、ホソマイコガの一種で、体長は4.5ミリ。これ以上大きくはならない。 これも新種だ。 論文発表に向け、生態を詳しく調べているところ。  マユの色は時間が経つにつれ、茶色くなる。 サナギはマユから半分ほど飛び出して、そこから成虫(ガ)が羽化する。マユの外、左下にあるのは、幼虫の脱皮殻。

 コスタリカに生息するホソマイコガの仲間は、高山地帯の標高3000メートル付近でよく確認されていたので、もっぱら高山特有の昆虫だと思い込んでいた。 ところが先日、標高1500メートルのここモンテベルデ、しかも家の周りでホソマイコガに出会った。 意外と低いところにいることには、まだビックリさせられている。でも近所で見つかったことで研究がしやすくなった。 嬉しい!

蛾-5

 ・・・・・つづく

 

_ 地球そして生命の誕生と進化 【増補版】 _

・・・・・・ https://youtu.be/INFpLsBhqfo ・・・・・・

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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽  憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・

森のなかえ

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