〇◎ “命のことを知らずして、命の大切さは理解できない” ◎〇
= 探検的調査を実践する “探検昆虫学者” 西田賢司 =
【この企画はWebナショジオ_“「コスタリカ 昆虫中心生活」” に追記・補講し、転載した】
☠ 中米コスタリカで新種の昆虫を見つけまくる男! 「バックマン」 ☠
曰く 『昆虫は、僕たちに自然の変化を教えてくれる一番身近な存在です』
◇◆ =074= カミキリムシ、直径5㎝もの枝を切る理由は? ◆◇
モンテベルデに雨季が到来! 緑がいっぺんに濃くなり、目にする昆虫たちの数もど~んと増えた。 午前中、太陽の強い光が注ぎ始めると、キラキラした小さないろんなハムシが葉の上に顔を出し、透明のスカシマダラチョウが花に蜜を吸いにやってくる。 夜になるとたくさんの甲虫や蛾が、照明のもとにやってくる。
そんな中、最近よく見かけるのがカミキリムシの仲間。愛好家に比較的人気のある昆虫だ。 先週のこと、昼間に家の周りの林道を30メートルほど往復しただけで、4~5種のカミキリムシを目にし、そのうちの3種を採集できた。 ということで、今回は採集できた種も含めカミキリムシをピックアップ。
数年前から、学者仲間でカミキリムシの専門家のGino Nearns博士とIan Swift博士の調査を手伝うようになった。カミキリムシを見つけたら採集し、エタノールにつけて保存しておいて、彼らがコスタリカに来たときに渡したり、ほかにも、カミキリムシが切り落とした枝を拾い集めたりもしている。 枝を集める理由はのちほど説明するとして、まずは先週見つけたカミキリムシを紹介しよう。
先週見つけたカミキリムシ全部がハチに擬態しているように見えた。 ハチに擬態しているカミキリムシはそう珍しくないのだが、今回写真を撮っていてビックリさせられたのが、このカミキリの大胆な真似っぷりだ。 トガリヒメバチという寄生蜂の仲間にそっくり!
まず、翅を広げたところをよく見てほしい(上)。黒く縁取られた短い前翅があるが、なんとこれが透明なのである! カミキリムシで前翅がここまで透明というのは、そうないと思う。さらに後翅も見てほしい。 先の方に黒い部分(縁紋)がある! 透明な翅に黒い縁紋というヒメバチの特徴をしっかりと「完備」しているのである!
ひとつ明らかに違うのは、ヒメバチの縁紋は前翅にあるのに対し、このカミキリムシの縁紋は後翅にあるということだ。でも飛んでいれば似ていること間違いなしだろう。
昨年の9月以来、森の中や庭を歩いていて、カミキリムシに咬み切られた枝を見つけては拾い集め、それを飼育している。
「枝を飼育している」とは変と思われるかもしれない。 正確に言うと、枝に産みつけられたカミキリムシの卵を、枝ごと飼育しているのである。あるグループのカミキリムシのメスは強力なアゴで枝を咬み切り、切った枝に卵を産む習性があるということをNearns博士に教わったからだ。
今年の1月~3月にかけて、咬み切られた木の枝が家の周りで30本ほど見つかった(次の写真の矢印)。
枝の長さは30~70センチで、枝の直径は約1センチ。 切り口は案外滑らかで、周辺から中央にかけて少~し盛り上がっている(次の写真)。 でも枝を咬み切っている最中のメスには、まだ一度も出会っていない。
現在、枝をメッシュネットのかごに入れて飼育している(次の写真)。 枝から細かく白い木くずのような糞が排泄されているので、おそらく幼虫が枝の中を食べ進んでいるのだろう。 いったいどんなカミキリムシが出てくるのか? 新種の可能性もあるので楽しみだ!
カミキリムシの同定はGino Nearns博士とIan Swift博士にお願いしました。 Nearns博士が管理されているカミキリムシ関連サイトは cerambycids.com です。 ぼくが撮影したカミキリムシの写真も掲載されています。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 今週のピソちゃん ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
Ӂ テナガカミキリは豪華飛行船(食事付き)だった Ӂ
前回紹介した翅の透明なカミキリムシに続いて、今回は世界のカミキリムシの中で一番長い前脚を持っているテナガカミキリを紹介しよう(第54回でも少し紹介しました)! このテナガカミキリは、メキシコ南部から南米のアルゼンチン北部まで生息していて、テナガコガネの仲間と並び、世界一長い前脚を持っている甲虫のひとつだ。
オスの体長は50ミリほどなのに対し、前脚の長さはなんと80ミリ。どう見ても不釣合いだ。 文献によると前脚が150ミリになるものもいるそうだ。 メスの前脚はオスのものと比べると短めだが、それでも長い。 体を持つと、頭と前胸を上下に振ってギイギイと摩擦音を発生させる。 カミキリムシの多くがよくするしぐさなのだが、ほかのものに比べると低音で違和感がある。 ぜんまい仕掛けのぜんまいの音に似ていて、生きているのに「おもちゃ」のように思えるからかもしれない(笑)。
ところでどうしてこんなに前脚が長いのだろうか。
1992年に発表された論文によると、テナガカミキリのメスは朽ち始めたばかりの特定の木(イチジク科とキョウチクトウ科)に産卵する。 このとき、オスの長~い前脚が役に立つそうだ。オスは、前脚を使ってメスが産卵する場所を確保したり、産卵中のメスを守ろうとしたり・・・、長い前脚を広げてオス同士の取っ組み合いが始まる。ちなみに、長い前脚を持つオスのほうが有利だとのこと(参考文献:Zeh, D., Zeh, J. & Tavakilian, G. 1992. Sexual selection and sexual dimorphism in the harlequin beetle Acrocinus longimanus)。
さて、テナガカミキリを観察していると、この昆虫の体の上を歩く小さなサソリのような生きものがいた。 カニムシの仲間だ! 前脚がカニのように長いのが特徴のクモ綱の節足動物で、大きさは3ミリ程度。
カニムシは、テナガカミキリを移動手段、いわば乗りものとして使っているという。テナガカミキリの幼虫は朽木を食べるので、成虫は子孫を残すために朽木から朽木へと移動する。カニムシも朽木の中や周りにすんでいる。だから朽木から朽木へ移動するテナガカミキリに乗ることで長距離の移動が可能になる。
テナガカミキリの背中をよく見ると、小さなビー玉入れのようなくぼみ(凹点)がたくさんあることに気づいた。 しかもそのくぼみにはなんと、ビーズのようなオレンジ色のダニ(トゲダニ)が1匹ずつピシッと収まっているではないか! トゲダニをアクセサリーとして装うために用意された穴としか思えない。昆虫探偵の血が騒ぐ。
テナガカミキリの翅を広げてみると、写真のように胴の上にカニムシがいた。胴部が受け皿のようになっていて、後翅との間にカニムシが乗ることができる隙間があるようだ。
さらに調べると、どうやらカニムシはテナガカミキリに乗って移動している間、このトゲダニを食料としているらしい。その上、テナガカミキリの体からは、このトゲダニの脱皮殻も見つかった。 トゲダニはテナガカミキリを住まいとしている感じだ。すなわち、テナガカミキリは、カニムシの食事となるトゲダニを体の上で飼っているとも言える。
カニムシにとってテナガカミキリは、食事付きの快適な移動を提供してくれる豪華宇宙飛行船のような存在なのかもしれない。 テナガ宇宙飛行船に乗るカニムシ・・・乗って、飛んで、森の中を旅しているところを想像してみると、ワンダーな世界が広がっていく!
・・・・・つづく
_ 中米コスタリカ 熱帯の森 擬態昆虫大集合 驚きの変身術を見た _
・・・・・・ https://youtu.be/hWwcvIskGFI ・・・・・・
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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
森のなかえ
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