〇◎ “命のことを知らずして、命の大切さは理解できない” ◎〇
= 探検的調査を実践する “探検昆虫学者” 西田賢司 =
【この企画はWebナショジオ_“「コスタリカ 昆虫中心生活」” に追記・補講し、転載した】
☠ 中米コスタリカで新種の昆虫を見つけまくる男! 「バックマン」 ☠
曰く 『昆虫は、僕たちに自然の変化を教えてくれる一番身近な存在です』
◇◆ =066= 意外なところで見つけたゾウムシ ◆◇
11月と言えば、日本は冬へ向かうタイミングだが、ここモンテベルデは乾季に移行する時期で、昼間の気温が上がり、活動する昆虫たちの数が少しずつ増え始めた。
今回はゾウムシシリーズの4回目。ちょっと変わったところで見つけたゾウムシたちを紹介しよう。
ブロメリアは生き物のオアシス
みなさんはブロメリアという植物をご存知だろうか。 パイナップルと同じアナナス科で、最下位写真のように木々に着生しているものが多い。エアープラントもこの仲間だ。密集した葉の中心部は雨水を長い間ためることで有名で、そこはいろいろな生き物のすみかにもなっている。
あれはたしか2003年。オランダ人の研究者といっしょにヒラタアブの調査をするため、「死の丘」というコスタリカの3000メートル級の高山にあるコナラのジャングルへ行ったときのことだ。
ちょうど嵐の後で、大小たくさんの木々の枝がドサドサと地面に落ちていた。 落ちた枝には、たくさんの着生植物がついていて、なかでもブロメリアが目立っていた。水生のヒラタアブの幼虫なども、その水たまりに生息している。
このブロメリアの葉を観察していると、葉の先端から水中へと消える不思議なジグザグの線を見つけた。昆虫の幼虫が潜った跡のようにも見える。ほかにも同様の線をいくつか見つけたので、いったい何が潜っているのだろうと、葉を抜き取って調べてみることにした。
ジグザグ線を追跡し、葉の付け根の、水がたまっていた辺りまでいくと・・・いた! ゾウムシのサナギだ。
さっそく飼育して、成虫を得ることに成功。写真を撮って、ドイツの友人のヒメゾウムシの専門家にメールで送ると、「葉に潜るヒメゾウムシの生態はこれが世界初だ!」という返事が来た。
しかも、ブロメリアの水たまりの水面下でサナギになっているではないか!これはおもしろいと調査や飼育を続けていくうちに、ブロメリアの葉に潜るゾウムシが、ほかにも複数いることがわかってきた。論文にするため、今も研究を続けている。
虫こぶをつくるゾウムシ
ゾウムシ(幼虫)のなかには虫こぶを形成するものもいて、ぼくはコスタリカでこれまでに15種ほど見つけている。そのほとんどが新種だ。ちなみに、ほかの昆虫がつくった虫こぶの中に後から入りこむゾウムシも多いのでより慎重な観察を要する。
虫こぶをつくる昆虫は、ぼくの大きな研究課題のひとつ。森を歩いていて、奇妙に膨らんだ葉や茎を見つけたら、中を調べてみたり、飼育したりしている。
ここではぼくが見つけた、虫こぶをつくるゾウムシを4種紹介しよう。
この交尾中の黒光りしたゾウムシ(上記写真)」は、まだ属名も付いていないヒメゾウムシの一種。下の写真の楕円形で囲った葉柄に、細長い(15×5 mm程度)の膨らみをつくる。中に幼虫かサナギが1匹いる。
次の写真はキク科の植物。茎が紡錘形に膨らんで、少し枯れかかっていたので、何かいるかもと思い飼育してみた。
すると案の定、中からオサゾウムシのRhodobaenus属の一種が出てきた。この属の種は、さまざまなキク科の植物で成長することがわかってきている。
ヤドリギにもいた。茎が少し膨らんでいたので開けてみると、「エイリアンの頭」のようなゾウムシの幼虫が中に1匹入っていた。触れると、アゴを大きく開け、いかついようす。これはMyrmexという属のゾウムシで、成虫はアリに似ている(?)ものが多い。
最後は、クスノキ科の木の枝に丸い虫こぶをつくる新種のCamptocheirus属のゾウムシ。後ろ翅の先端に黄色い斑点があるのが珍しい。右は幼虫で、腹側に茶色い筋が入っている。
首都サンホセ近郊にあるコスタリカ大学のキャンパスで見つけてからすでに15年以上が経つ。以前、虫こぶがたくさんできていた木々には、今年は虫こぶをひとつも確認することができなかった。木々が大きくなり、すむのに適さなくなった可能性が高い。キャンパス内に生えてくる新たな若木は、常に伐採されてしまうので、このゾウムシは、生きていける場所を失いつつあるのかもしれない。
写真のゾウムシは、死んでいるように見えるけれど、生きている。このように擬死するゾウムシは少なくないが、次に紹介するゾウムシは、ちょっと違った方法で死んだふりをしている。
白いキノコが生えたような装い。 アナアキゾウムシの専門家に見てもらっても、キノコ(菌類)に侵されて死んでいるはずと言う。たしかに、冬虫夏草と呼ばれる状態のようにも見える。
ところがこの写真を撮影したとき、ゾウムシは元気よく動いていた。ちゃんと生きていたのである。
ココナッツを削ったような白い物質は、体表のくぼみから分泌されて伸びたワックスではないかと、ぼくは考えている。専門家は、「動いていたとしても、菌類に侵されて死ぬ直前だったはず」と主張、議論は平行線をたどっている。菌類の場合、ゾウムシが動かなくなってから生えるはずなんだが・・・まあ、なんとかもう一度このゾウムシを見つけて飼育し、詳しく観察してみたいものだ。
ワックスをはがしてみた
下の写真のようにカラフルなワックスで覆われたゾウムシもいる。カツオゾウムシの仲間だ。 赤茶色と黄色の粉のようなこのワックスは、触ると比較的簡単に取れてしまう。そこで、ここモンテベルデでも同じ属のカツオゾウムシを見つけたので、赤と黄色の粉ワックスをはがしてみることにした。
ワックスの下から露わになったのは、黒い「地肌」。はがしたワックスのニオイを嗅いでみると、このゾウムシが食べるキク科の葉の香りがする。 そしてまた、このゾウムシに新鮮な葉をしっかりと食べてもらうことにした。 2~3日経って撮ったのが下の写真。ワックスが再生して、ほぼ元の姿に戻っていた。体表からワックスが噴き出してくる感じなのだ。不思議!
多種多様過ぎて、まだまだ新種だらけ。 生態にいたってはなおさらわかっていないゾウムシの世界のほんの一部の一部を4回にわたりお届けできました。 モンテベルデの山の上から太平洋側のニコジャ湾を望むと、西日を浴びた海面の光に浮かび上がった木々のシルエットが、ゾウムシに見えた。
海の向こうにも果てしないゾウムシの世界が広がっているのだろうな~。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 今週の西田賢治 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
=参考資料・文献=
コスタリカの歴史概要・3/3
再独立と国民戦争
1839年にこの地もコスタリカ共和国として再独立を果たした。その後1842年にホンジュラス出身の元中米連邦大統領、フランシスコ・モラサンが大統領となり中米連邦再興のためにニカラグア侵攻を企てたが、同年にモラサンは暗殺された。
1856年、隣国ニカラグアで アメリカ合衆国南部人の傭兵(ようへい)隊長、ウィリアム・ウォーカーが大統領となった。中米四国はウォーカー排除を決意し、このウォーカーの率いるニカラグア軍との国民戦争において、コスタリカ軍は、反ウォーカー派だったイギリス、アメリカのヴァンダービルト財閥などの支援を得て中米連合軍の中で主要な役割を果たした。同年4月にはリバスの戦いでウォーカー軍を打ち破った。なお、この戦争で壮絶な戦死を遂げたムラートの鼓兵、フアン・サンタマリーアは現在も国民的英雄となっている。
国民戦争後、1870年に自由主義者のトマス・グアルディア将軍がクーデターで政権を握った。グアルディアの主導により、一院制議会と強い大統領権が認められた1871年憲法が制定された。以降1948年までのコスタリカは基本的にこの路線に沿って発展することになり、ラテンアメリカ全体でも特異なコスタリカの民主的な社会が成立する素地となった。
1882年にグアルディアが死去してからは、自由主義派の流れを継いでベルナルド・ソトの支配が続いたが、1889年にカトリック教会と結んだ保守派のホセ・ロドリゲスに選挙とデモによってソトが敗れ、自由主義政権が終焉(しゅうえん)した。
・・・・・つづく
_ グズマニア(ブロメリア)の株分けの仕方 _
・・・・・・https://youtu.be/yzstYC2ul9A ・・・・・・
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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
森のなかえ
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